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2010年8月11日 (水)

理解できた絶望:「暗闇の丑松」

810日 八月花形歌舞伎第二部(新橋演舞場)
橋之助の丑松か…といまひとつ気が進まず、またちょっと軽く見ていた第二部だったが、先にご覧になった方たちには比較的好評のようで、やや期待が高まる反面、自分が見たらどうだろうという懸念もあった。
実際に見て――評判どおり、とてもよかったgood
まず扇雀さん。上から見たせいか、エラが全然気にならず(失礼千万。でもいつもあのエラが惜しいと思っていたんだもの)、とってもきれいだった。お米は2122歳だそうだが、雰囲気として十分若さも醸し出していたし、勝ち組に入れと強要するゴーツクな継母(歌女之丞)にいじめられたり、2幕目では女郎として丑松に再会することになってしまったお米の宿命の哀れさに涙が滲んだ。必死の面持ちで継母や用心棒の浪人(市蔵)に刃向かっていく時だけは、相手より強そうに見えてしまって残念と思ったけれど、よく考えれば火事場の馬鹿力的な(表現は悪いけれど)ものだから当然のことかもしれない。
2
幕目に獅童さんが出るのを知らなかった。やっぱり獅童はカッコいいわ。
橘太郎さんの三吉が<らしくて>よい。本当に橘太郎さんはなんていうか、こまごまと気を使って動き回る役がうまい。
裏切り者の四郎兵衛(彌十郎)の妻・お今の福助。あ~、福助さんってこういう役やると、実に下品sad
橋之助さんの丑松。階段を上がってきて姿を見せるその瞬間が、この役者が丑松たり得るかどうかを決めるだろう。その瞬間、橋之助さんは見事に丑松であった。その後は時々、「違う」と思うことはあっても、全体的にはかなりいい丑松だった。
丑松は決して橋之助さんのニンではないと思う。橋之助さんは丑松をやるには「陽」すぎるのだ。実際、女郎に身を落としたお米に怒りを爆発させる場面では、その怒りは「陽」だった。だから私は丑松に思い入れできなかった。丑松の絶望が絶望として伝わらなかったのだ。ここはむしろお米の絶望に同化して泣けた。全体に見ても橋之助丑松は「陽」である、にもかかわらず、この丑松がとてもいいと思えたのは、橋之助さんが丑松の心を理解して演じているからだろう。とくに、四郎兵衛の家で妻お今に媚態を示されて「亭主を助けたい、うぬも助かりたい、……お米もその伝だったんだ。女はみんな同じだ。オレはそこが憎い」と言う橋之助さんの暗い顔。私はここで初めて丑松の絶望がわかって、ハッとした。
湯釜前の場は興味深い。湯屋番頭・甚三郎の橋吾さんが実にてきぱきと気持ちよく働き(ほんと、よく働くの)、それが丑松の闇と対照的である。橋吾さん、実にいい身体してるsmile それからほんの一瞬姿を見せる芝のぶちゃんが意外と豊満なのに驚きsmile
湯屋からなかなか出られない丑松に「早く逃げて!!」と手に力が入ったけれど、最後の引っ込みは七三くらいまでしか見えなかった。残念。辰之助さんほど心を鷲摑みにされたわけではないが、思いのほか感動したこの芝居、もう一度見てもいいなと思っているほどである。

「京鹿子娘道成寺」
丑松に力が入ってしまったせいか、ほとんど寝てしまった。
聞いたか坊主は舞づくしもなく、生娘・白拍子問答もなく、あっさりと席につく。私は乱拍子だけぼんやり見て、ところどころ目を開け(所化の踊りは見逃した)、押し戻しの前でやっと正気に戻った。
鱗四天の「とうづくし」は楽しい。正確じゃないけど、覚えている範囲で。「歌舞伎は世界に通じる日本のでんとう」「歌舞伎は日本の伝統、前のセリフをリピート~」「ワールドカップ、本田圭祐の無回転シュート~」「遊びに行こう房総はんとう」「夏はスタミナべんとう」「トマト~」「ラスト~」などなど。
鱗四天は12人いたが、舞台が狭くて全員が並べない場面があった。全員が舞台に1列に並ぶと実に窮屈そう。最後の蛇の尻尾部分の役者さんは大変。1人がもう1人を抱え揚げて、揚げられたほうは逆立ちをして。定式幕が閉まるまでよく持ちこたえた。
海老ちゃんの荒事はやっぱりステキ。
<上演時間>「丑松」103分(14201603)、幕間15分、「道成寺」64分(16181722

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

いつも楽しみにブログ拝見しています。歌舞伎座閉場からようやく観劇意欲が復活してきましたenachanです!

本日1・2部拝見してまいりました。中日でもないしと全く期待していなかったのですが、麻央さんロビーでご挨拶されていました!白みのつよいグレーっぽいお着物でした。

芝のぶさん大好きなので、お風呂からこちらにいらしたときはキャーキャーって心はバクバク!舞台写真出ないかしらと密かにワクワクしています!

投稿: enachan | 2010年8月11日 (水) 18時49分

enachan様
コメントありがとうございます。
enachan様も観劇意欲が復活されたとのこと、私もまったく同感でございます!! 3部とも日程とチケットの戻りが一致したら再見したいなと思うほどに回復してきました(^^)
麻央さんはデビューまでは大変だったと思いますが、これからは時々出ていらっしゃるのではないかしら(今月はとりあえず毎日、どこかの時間帯にいらっしゃるのではないかと思っております)。でも、毎日お着物を変えていらっしゃるのでは大変ですよね。

芝のぶさんがああいう役で登場なさるとは思いませんでしたsmile ドキっとしてました。舞台写真出たら、人気が集中するでしょうねhappy02

投稿: SwingingFujisan | 2010年8月11日 (水) 22時47分

女はみんな同じだ、のくだり、私は全然感情移入できませんでした。お今が前回の秀太郎さんに比べてなんだかわかんない人って感じたのと、今回の丑松はそんな複雑なことを考える人って感じがしなかったからです。
前回の丑松は幸四郎さんだったのでなんだか殺人以外に分別がつきそうで発端のシーンがええ?って感じだったのが、今回は屋根から逃げるときの青春っぽさがよかった。「陽」って言葉でハッとしました。なるほど!
芝のぶちゃんのサービスショットがもし発売されたら、それだけ買いに行きたいです。w

投稿: urasimaru | 2010年8月12日 (木) 00時44分

urasimaru様
コメントありがとうございます。
女はみんな同じだ、のところは、私も決して同意したり、思いいれたわけではないのですが、ああ丑松はそういう風に思ったのか、と理解できたということなのです。昔、「ゲッタウェイ」とう映画で夫を刑務所から出すために妻が刑務署長の言いなりになったという場面を思い出しました。映画のほうは女が積極的に動いたんですけどね。お今も積極的でしたね。でもいずれにしても、あのお今はひどすぎると思います。
幸四郎さんの丑松は理屈が勝つような印象を受けました。本来単純なはずの丑松ですものね。元に戻りますが、その丑松がああいう考え方を見せたので「ああ」と納得したというわけです。

芝のぶちゃんの写真、要望が多ければ出るかもしれませんね。そういえば、2階サイドにカメラマンが入っていました。その時は気がつきませんでしたが、あれが舞台写真の撮影だったのかもしれません。芝のぶちゃんの写真も撮ってくれたかなあcoldsweats01

投稿: SwingingFujisan | 2010年8月12日 (木) 10時15分

舞台写真速報!

本日より舞台写真発売でした!今日は一日中演舞場で、朝は張り出しがなく、幕間からでした。
皆さんお待ちかねのしのぶさんドキドキ写真ありました~!もうちょっとお顔が~と思いましたが、嬉しいです。

写真入りの筋書きは22日からだそうです!

投稿: enachan | 2010年8月19日 (木) 12時37分

enachan様
演舞場からの速報ありがとうございます!!
芝のぶさんのお宝写真、やっぱりでたんですねnotes すぐに売れちゃいそうですねえ。
私はもう今月は演舞場には行かないのですが、舞台写真だけは見たいなあ。まあ、筋書きでガマンするとしましょうか。22日からですね。100円割引券を持って、どこかの帰りに寄るか…交通費かけてわざわざ行くくらいなら、来月観劇時に買ったほうがいいですねcoldsweats01 でも早く見たいし~。

投稿: SwingingFujisan | 2010年8月19日 (木) 14時35分

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