« 左團次さん休演 | トップページ | 第二回「挑む」プレオーダー »

2010年9月 3日 (金)

九月歌舞伎昼の部1:はりまやっ、な初日

92日 秀山祭九月大歌舞伎初日昼の部(新橋演舞場)
久しぶりに筋書きを買った。78月は舞台写真が入るまでガマンしていたのだ。やっぱり初回観劇に筋書きがあったほうがいいと思った。
「月宴紅葉繍(つきのうたげもみじのいろどり)」
淡い色合いの背景に平安の優雅さが思われる。中央のセリが大きくあいていて、長唄の後鳴り物が入ると在原業平(梅玉)と小野小町(魁春)がせり上がってくる。梅玉さんの烏帽子に飾られた紅葉がとても風流。踊りはよくわからないが、梅玉さんには爪先立ちのすり足みたいな動きがけっこうあって、その優雅さの陰では意外と大変そう、なんて思った。また魁春さんは十二単で動くので、これまた大変そう。でも、優雅な雰囲気が十分味わえた。
ここでは後見に春之助さんと梅之さんが入る。つい先頃の合同公演(もうあれから10日も経つの)で大活躍されたお2人である。これまでなら、梅之さんのブログで、苦心の点やみどころなどが語られるのに、もうそういう情報の発信がないのだと思うと、とても寂しいけれど、梅之さんがいつもおっしゃっていたように、舞や芝居の邪魔にならないよう気配をなるべく消して、という後見のお仕事をきっちりこなしているのが嬉しかった。
「沼津」
呉服屋十兵衛:吉右衛門、お米:芝雀、平作:歌六という配役は去年の巡業と同じであるから、安心して見ていられる。巡業で池添孫八を演じた歌昇さんが今回は荷持ち安兵衛を演じる。
第一場・沼津棒鼻の場がとてもいい。茶店で休む旅人、草鞋の紐が切れちゃった人、走る飛脚、セリフのないそういう人たちを登場させるだけで、街道の雰囲気が感じられる。夫婦連れの旅人が弁当のおかずを遣り取りしたり、妻が食べ物をのどにつまらせたら夫が甲斐甲斐しく背中をさするなどする光景が微笑ましい。でも、この夫婦、桂三さんと歌江さんだったから、ひょっとして親子?なんて思ってしまったcoldsweats01 引っ込むときの歌江さんの笑顔が印象的だった。この茶店のおかみさんが吉之丞さん(最近、歌江・吉之丞を一緒に見る機会が多いのは嬉しい)。吉之丞さんのこんな役は珍しいような気がするけれど、あたたかみが感じられて、と~ってもすてき。こんなおかみさんのいる茶店で一休みしたいものだと強く思う。
歌昇さんが吉右衛門さんと現れると「はりまやっ」の大向こうがさかんにかかる。そして歌六さんにも。そうか、みんな播磨屋なんだな。
歌六さん、老け方がすっごくうまい。荷物の重さを見せる演技も絶妙。吉右衛門・歌六の客席巡りは、3階からは途中までしか見えないし、お2人が客席にかける声などもよく聞こえない。しょうがないから舞台を見ていたら、この間に茶店が消えて、風景も変わった。

平作の家に十兵衛が泊まろうかというところへ、安兵衛がやってきてムリヤリ十兵衛をちゃんとした宿に連れて行こうとする。十兵衛、本当は美しいお米のいるこの貧しい家に泊まりたいけれど仕方ない、発つとするか。平作「御名残惜しゅうございます」。十兵衛「お名残に、ひとつ皆様に申し上げようか」(だったかな)。
で、何が始まるかと思ったら、歌六・歌昇兄弟の播磨屋復活口上だった(私も恐ろしくニブいねcoldsweats02 1秒ほど考えちゃった。ちょうど3人揃ったところだものね)。吉右衛門さんの挨拶に続き歌六さんが「還暦を機に播磨屋へ。初代歌六が興した播磨屋を守っていきたい」。歌昇さんが「30年ぶりに萬屋から播磨屋へ。しっかり守る」。芝雀さんは、親しくしている歌六・歌昇さんが播磨屋へ移られて目出度いと挨拶。吉右衛門さんが最後によろしくと締めて口上は終わり。
吉右衛門さんが嬉しそうだったし、ああ、初日にこの口上が聞けてよかった、と感激した。
ユーモラスに進行していたお芝居は、ここから徐々に悲劇へと向かっていく。
歌昇さんは実直な使用人ぶりが好感度高いし、芝雀さんは貧しさの中に楚々とした愛らしさ、品格がある(最近、私、芝雀さんの芝居がとても好きになっている)。今回孫八役の染五郎さん、出番は少ないが華があるなあ。
去年の巡業では寝てしまったために理解し損ねた部分も今回はよくわかった。それだけに、登場人物それぞれの思いがひしひしと伝わってきた。歌六さんの死を賭した覚悟と吉右衛門さんの悲しみが胸にぐっとくる。瀕死の平作と、すべてを呑み込んだ十兵衛が闇の中で互いに手を取り、顔を探り合う(暗いから、互いの顔を探すようにして見つめ合う、ってこと)場面はこの芝居のクライマックスだ。これまでの展開がここへ集約し、吉右衛門さんの大きさが生きて、悲劇であるにも拘わらず後味のいい優れた芝居だと思う。
さて、この後、もっと泣くことになる。

|
|

« 左團次さん休演 | トップページ | 第二回「挑む」プレオーダー »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。
梅之さんのブログは、9月1日に「毎月々の公演情報はこれからもお伝え申し上げますので、よろしくお願い申し上げます。」とありましたよ。

投稿: とこ | 2010年9月 3日 (金) 09時14分

おはようございます。
お疲れのところ、早々のれぽアップ、ありがとうございますm(_ _)m

>やっぱり初回観劇に筋書きがあったほうがいいと思った。
そうなんですよねぇ。でもやっぱり写真入りが欲しい、2冊は買えない、なので月前半の観劇はいつも筋書きなしの私です。割引券が以前と違って4冊分ついてるってことは、「2冊買ってね」ってことかしらん(笑)。

『沼津』はやっぱり1階よねぇ、そのうえ『荒川の佐吉』があるとなったら、え~い奮発!と久しぶりの1階での観劇となりました。

『月宴紅葉繍』ではついつい後見の梅之さんに目がいってしまいました。朝一番に綺麗な舞踊を見せていただいて眼福眼福、でした。

『沼津』は吉右衛門丈では初めてです。Fujisanさまがおっしゃるように、この座組は安心して見ていられますね。安定感抜群、といったところでしょうか。

第一場のご夫婦ですが、たぶん身重、という設定だったのではないかと思います(そう見えました)。吉之丞さんの茶屋のおかみさんは本当に素敵でした。あんなところがあったら、ほっこりして長居してしまいそうですが(^_^;

長々と失礼いたしましたm(_ _)m

もう1回見たいなぁ、花道のひっこみが見たいなぁ、のからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2010年9月 3日 (金) 10時02分

とこ様
おはようございます。
情報、ありがとうございます!!
この前覗いたときは、しばらくお休みしますのご報告しかなかったのですが(1日だったような気がするけれど、更新なさる直前だったのかもしれません)。
早速、梅之さんのところにいってみました。やっぱり、ほっとしますhappy01 これからも時々覗いてみますわ。

投稿: SwingingFujisan | 2010年9月 3日 (金) 10時13分

からつぎ様
おはようございます。
こちらにもありがとうございます。
歌舞伎座時代は毎月筋書きを2冊買っていたのですが、確か演舞場最初の月は割引券がなくて(観劇が終わってから来たんだったかしら)、写真入りを待ち、以来7月8月もそうしたんでした。今月は又2冊買うことになりそうです(あの割引券4枚は、狙いが見えてますよね~bleah)。2冊というと費用もですが保管場所が大変なんですcatface

最初の踊りは私もついつい梅之さんに目がいってしまいました(^^)

「沼津」の座組はちょっと地味な感じはしますが、堅実でお芝居が心地よく、しみじみした気持ちになります。今後もじっくり見たい播磨屋さんの一座です。
歌江さん、身重だったのですか。そう知れば、納得納得。いやにふっくらしているな、と思ったのです。そうかそうか、ご主人は普段からやさしそうですが、その労わりもなるほど、ですconfident こういう脇の光景が「らしく」見えるから、お芝居がより盛り上がるんですね。

花道の引っ込み、私は最後まで見たいですぅぅ(でも、来月の遠征を考えると…)。

投稿: SwingingFujisan | 2010年9月 3日 (金) 10時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/36511693

この記事へのトラックバック一覧です: 九月歌舞伎昼の部1:はりまやっ、な初日:

« 左團次さん休演 | トップページ | 第二回「挑む」プレオーダー »