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2010年10月11日 (月)

衣裳に猿之助を想う:「猿之助歌舞伎の魅力」

108日 「猿之助歌舞伎の魅力」(目黒雅叙園)
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講演の後は百段階段で行われている猿之助歌舞伎の衣裳展へ。ここは写真禁止なのだが、もう素晴らしい素晴らしい衣裳の宝庫で、写真撮りたくってしょうがなかった。細い糸を何本も撚り合せたものを1針1針丁寧に布に縫いつけた目とか、豪華な刺繍とか、そういうものが本当に間近に見られるのだ。
十畝の間の展示テーマは「歌舞伎の歴史と猿之助三代」。衣裳は奴伊達平(「骨寄せの岩藤」)、暁星五郎(「四谷怪談忠臣蔵」)、荒獅子男之助(「伊達の十役」)、土手のお六(「於染久松色読販」、団九郎兵衛(「夏祭浪花鑑」)、山崎与五郎(「双蝶々曲輪日記」)。主に澤瀉、喜熨斗格子が使われた衣裳で、まさに猿之助の世界である。
漁樵の間「ヤマトタケル 海と山と神話の邂逅」。熊襲弟タケル、熊襲兄タケル、伊吹山の姥神、伊吹山の山神。伊吹山の神の衣裳は、無数の古布で作られた短冊を11本繋ぎ合わせて作られたもの。なんという発想だ!! 熊襲兄弟のそれぞれ巨大な蟹、蛸のついた打掛に思わず「すごっ」と声が出て、あの感動の舞台が甦ってきた。
草丘の間「多彩 衣裳に息づく動植物」。斧定九郎(「四谷怪談忠臣蔵」)、暁星五郎(「四谷怪談忠臣蔵」)、石川五右衛門(「金門五三桐」)、小鮒の源五郎(金門五三桐」)、犬山道節・犬坂毛野・犬田小文吾(「南総里見八犬伝」)、濡髪長五郎・放駒長吉(「双蝶々曲輪日記」)、信夫(「競伊勢物語」)、源満仲・俵小藤太(「鎌髭」)、班女の前「雙生隅田川」)。五右衛門と毛野は2点、道節は3点あり。あまりの点数に二重に並べられているため、後ろの衣裳がちょっと見づらいのが残念だった。括り猿(猿之助の紋)を散らした半身の色が違う俵小藤太の着付けが印象的。
静水の間「『黒塚』の世界」。衣裳は老女岩手(前シテ、後シテ)、阿闍梨祐慶。ススキが揺れる部屋には糸巻き車が置かれ、岩手の悲しみ、喜び、怒りが漂っているような気になる。
星光の間「歌舞伎の華 女方」。辰夜叉御前(「四天王楓江戸粧」)、傾城如月(「御贔屓繋馬」)、岩藤(「骨寄せの岩藤」)、岩長姫(「日本振袖始」)、更科前(「鬼揃紅葉狩」)。
清方の間「澤瀉屋 舞踊の世界」。悪太郎(「悪太郎」)、佐藤忠信(「吉野山道行」)、なめくじ(「浮世風呂」、稲荷明神(「小鍛冶」)、三助政吉(「浮世風呂」)。
悪太郎には長刀、吉野山には鎧と鼓、小鍛冶には鍛冶の道具、浮世風呂には風呂桶と椅子など、小道具もついているので、舞いの世界が頭に浮かぶ。三助政吉の衣装には襟に「きのし湯」と入っている(「きのし」の「き」は七が三つ。IMEパッドでも出てこない)。と言っても私が知っているのは悪太郎と吉野山だけだけど。

最後、頂上の間「『猿之助四十八撰』猿之助歌舞伎の歩み」。春秋会のプログラム、「新三国志」・「ヤマトタケル」・「獨旅五十三驛」・「伊達十役」の初演時台本、昭和58年京都顔見世「弁天小僧」・昭和5911月「黒塚」・昭和599月南座「鳥居前」忠信の押し隈、そして藤間紫さんとの睦まじい写真や1980年代海外での猿之助さんの写真などが展示されている。まったく垂涎ものである。
台本は手書きのガリ版刷りみたいな漢字で、自筆の訂正は加筆がたくさん施されている。
こうして猿之助の世界に触れて歩くと、自分が猿之助の絶頂期を見ていないことがとにかく悔やまれる。演目も見ていないもののほうが圧倒的に多い。せめて埼玉芸術劇場のシェイクスピアシリーズみたいに、猿之助四十八撰を全部かける小屋ができないかしら。わざわざ小屋を作らなくても、定期的にどこかでやってくれないかな(わがままを言えば、あんまり遠くでなくて)。
百段階段そのものは2度目なので驚きはしなかったが、その途中途中にある部屋の雰囲気と展示テーマとをうまく合わせたのはとてもよかったし、衣裳の見事さに圧倒され、また衣裳を見ただけで知らない芝居の世界までもが想像できる素晴らしい展覧会であった。
ちょっと追記。百段階段へ上るエレベーターボーイ(?)のおじさんがとても楽しい方だった。百段階段は実際には100ないんです(って言うから80段くらいでサバ読んでるのかと思ったら99段なんですって)。でも、このエレベーターには1002つあります。それは百獣の王・獅子と百花の王・牡丹です。って。

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