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2010年10月10日 (日)

歌舞伎衣裳にまつわる話:「衣裳屋が語る歌舞伎衣裳」

108日 「衣裳屋が語る歌舞伎衣裳」(目黒雅叙園)
松竹衣裳株式会社専務取締役・海老沢孝裕氏の講演「衣裳屋が語る歌舞伎衣裳」は雅叙園でのランチ+講演+「猿之助歌舞伎の魅力」のセットで紹介されていたが、ランチ抜きでも可能かどうかダメモトで問い合わせてみたところ、OKだった(料金はセットの半額。きいてみるものだ)!!
講演会場の飛鳥の間には豪華な衣裳が4点、展示されていた。写真はOKだが、ブログ等での公開は控えて欲しいとのことで、残念ながらここにご紹介はできない。以下、お話のほんの一部をかいつまんで。
松竹衣裳部は歌舞伎のほかに商業演劇、映画、TV等も扱うが、最重点は歌舞伎である。こうした衣裳の会社は日本で1社のみである。
歌舞伎の衣裳は、江戸時代の役者がこの衣裳でやってよかったというのが今残っているのであって、昔の資料と違うことも時々ある。これが本当だという形はない。ある意味、観客が育てていくものであり、これからも変ることがあるかもしれない。とはいえ、「何でもいい」は許されない世界でもある。
衣裳は体育館のような倉庫に保管されているそうで、その衣裳を使ってもらえるのが一番いいが、役者から細かい注文が入ることがある。新たに作るのには莫大なお金がかかるので、できるだけ話し合いでおさめてもらうようにしている。限られた費用と役者の注文とを如何に折り合いをつけるかが、衣裳屋さんの大事な仕事の1つであろう。
さて、この日展示のものは衣裳の中でもトップクラスのもので、①髭の意休の海老茶の衣裳②松王丸の雪持松の衣裳③赤姫の衣裳④揚巻の火焔太鼓(上巳の節句)の打掛4点。
日本製と中国製の2枚がある。面白いのは背中の竜の違い。日本人にとって竜は力強くおどろおどろしたものであるが、中国では竜はおめでたいものであり、どう注文をつけても目に愛敬があって可愛らしくなってしまう。文化の違いは如何ともしがたく、現在では中国での製造は中止している(面白いとは言っていられないか)。
どの衣裳でもそうだが、とにかく手がこんでいる。細い糸にモールを巻きつけたり、長い毛を1刺し1刺ししてから毛を刈り込んだり…気の遠くなるような作業である。制作には1年かかる。また費用はベンツ(恐らく最高級クラスの)1台分するので、おいそれとは作れない。
トップの値段である。演舞場での海老蔵の松王は身体が大きく、衣裳部保管のものでは間に合わず、新しく作った。展示の衣裳では背中のワシは松にまさに止まらんとしている図であるが、役者によっては雀をつかもうとしている柄もある。ワシは直縫いしてあるので、役者の体格によって位置が変ってくる。そのたび作り直すわけにはいかないので、現在ではアップリケのようにしてつけている。
二代目松緑が、松王は黒綸子と決まっているが自分は年寄りだからグレーにしたいと言い出し周囲を仰天させた。現松緑がそれを着ようとしたら似合わない。やはり年齢と衣裳は見合うものである。
羽織紐は絹糸に金の糸を挟みながら作る。これはホタル打ちといい、暗闇の中にホタルが飛んでいる感じが出る。照明が当たると光って映える。また、この紐は通常の羽織の紐より長く、衣裳に負けないようにしている。
袴をつける場合、着物は裾まで長くしないで、裾捌きがしやすいように袴の割れ目ぎりぎりまでの長さで切っている。

なるべく色々な柄のものを作って、役者の好みに対応できるようにしている。刺繍は今はミシンも使うが、ミシンでは光に対してべた~っとなってしまう。ふわっと浮き上がる手縫いとの違いは歴然である。金糸はいぶした輝きのものがよい。
裾には太い綿が入っている。時代が古くなるほど綿は太い。お姫さまは動かないでいいのでたくさん着込んでいるのだが、それでは役者が動けなくなってしまうので、芝居では見えるところだけ重ねている。芯は役者の所作のやり方によって変えている。
振袖に房のつくことがあるが、これは禿の名残である。かつて禿は逃げ出さないように袖の房で杭に縛られていた。だから禿の房はがっちりして絶対に取れないのである。という悲しい歴史が隠されている。
赤縮緬の胴抜きと2枚セットで着る。

★衣裳屋さんは和紙でできた「付け帳」というものをもっている。その月の芝居が決まると演目と役者名、最終的にどんな衣裳になったかを細かく漢字で書いている。決まった書き方はなく、柄は決まっているが色の表現は人によって違う。ちなみに昔の人のものは達筆で読めないそうである。

★新しく衣裳を作る際の注意点の1つは、色である。色は照明によって変るので舞台の照明を考慮しながら選ぶ。また小さな色見本で見たときと衣裳になって出来たものではイメージが違ってくるので、それも考慮する。
★本来、町人は献上帯をしてはいけない。献上帯は呉服屋の納税がわりで、それを納税していない町人がつけていれば横流しということになる。しかし現在ではそういう事情は無視してみんな使っている。
★衣裳の汚れはその都度ベンジンで手入れしている。500Lの瓶を1日に7本くらい使う。汚れは落とすのではなく、散らして目立たなくする。最後にアイロンをかける。
お話を聞いたあと、展示の衣裳をもう一度見ると、最高級の職人技にため息が出る。しかし、講演前に「お手を触れないでください」と注意があったにもかかわらず、オバチャンたちは平気で触ったり、裾をひっくり返して見たりしている。話を聞いた後では触ってその技術を実感してみたくなる気持ちはよくわかるが、どうなのよ、このマナーの悪さ。でも、誰も注意しなかったところをみると、触ってもよかったわけ?
講演時間は13301430

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