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2010年12月17日 (金)

瑞々しい梅枝俊徳

1214日 十二月大歌舞伎昼の部(日生劇場)
前回ぼんやりしていて、住吉神社の場は浜だったかどうかの記憶がなかったので、今回は意識して見たらやっぱり浜であった。ただ国立と違って舞台が小さい分、浜の広々した感じはない(だから、よけい気づかなかったのかも)。そういえば、冒頭の浅香姫は国立では出がなかったのね。
今回は俊徳丸のことを中心にした感想を。
初日に梅枝クンのことを心の中で絶賛したのだけれど、それを公表するのはもう一度見てから、と思っていた。
序幕、住吉神社境内の場では凛々しく瑞々しい男らしさ、やわらかな強さを含ませ、その一方で玉手と2人きりになるのは気が重いようなちょっと弱い空気が見える。告白されて驚いた様子からすると、この時はまだ玉手の気持ちを感じ取ってはいなかったのだろうが、俊徳にとって玉手は気詰まりな相手なのではなかったか、あるいは直前に出会った浅香姫のことを思ってか…。
病を得てからは、絶望の中で生きていかなければならぬ苦しみがもたらすはかなさ哀れさがこの青年を顔の醜い変化とは別にまた瑞々しく美しく見せる。
大詰で玉手を諭す場面では凛として、玉手が命を懸けて自分を救ってくれたとわかってからは感謝の念と寺院建立の強い意志――そういう置かれた立場や気持ちのそれぞれが声音の変化によっても感じられる。
素晴らしい俊徳だと感心したが、ただひとつ、大詰で菊五郎、東蔵、菊之助と並ぶとやはり少々見劣りがするのは若さゆえやむを得ないか。5月の時様の俊徳は菊ちゃんの玉手に対して年齢的にちょっときついかなあと思わないでもなかったが、こうして比較してみると、あの場の時様はさすがだったなあと感じ入るのである。
「摂州合邦辻」を通しで見たのは2回目であるが、なんとなく印象が薄かった俊徳丸という人物が今回やっと見えてきたような気がする(国立で三津五郎さんがやったのに、なぜか全然覚えていない)。
ところで、玉手に促されて神社に入る前、玉手をちらっと見遣る目をした梅枝クンの顔、ほんの一瞬のことだったけれど、時様にとても似ていた。梅枝クン、いずれは玉手を演じる役者になってほしい。

今日の客席は妙に反応がよく、というか、え?というようなところで笑いが起きてびっくりした。たとえば、羽曳野が玉手に言う「俊徳様の追手にあなたはやりにくい」のセリフ、玉手に傘で胸を衝かれ無念の表情で玉手を見送る羽曳野の「おくさま」という悲痛な叫び。なんでここ笑うのぉ?
菊五郎さんは閻魔堂建立の車を引いて花道から登場したときの人のよさそうな顔がとっても素敵で胸が痛くなった(後の悲劇を思うから)。参詣人たちとの踊りが楽しい。参詣人の中では橘太郎さんがバツグン。橘太郎さんは大詰の講中でも一際「らしさ」が目立った。
右近クンの海老反り、初日より深くなった(^^)

まだまだ、感想はたくさんあるんだけど、長くなるからそれはまた千穐楽を見てからに。

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コメント

SwingingFujisan様
 おはようございます。昨日、日生劇場行ってきました。
 今回の合邦庵室、歌舞伎座閉場後、やや熱気が冷め、低調な歌舞伎興行の中では、屈指の出来栄えではないでしょうか。とにかく、菊之助の玉手が秀逸です。年輩の役者の同役と比べ、この役が要求する、恋情のなまなましさが横溢していました。義太夫に乗った実にながれのよいクドキ、もどりにいたるまでの決してはらをわらない手強さ、おちいりの崇高さ(最後、スット笑ったときの表情の高貴さ)等々、瞠目すべき出来でした。周りの配役はFujisanさんの感想とほぼ重なります。
 ところで、この作品、義太夫が名曲ですね。冒頭の太棹の送りから始まり(この部分だけでも様々な口伝があります。玉手の孤独な追いつめられた気持ちが良くでています。)「いとしんしんたる夜の道、恋の道には暗からねど・・・」と続く、詞章のよさ、義太夫屈指の作品と再認識しました。文楽の「合邦庵室」も素晴らしいですよ。機会があれば、是非ご覧になることをお勧めします。そういえば、千秋楽もご覧になるのですね。今回は太棹の手についても是非、注視(注聴?)ください。
 「達陀」二度目ですが(前回は菊五郎)、松緑がヘッドの全員の群舞、何故か涙腺が緩みそうで困りました。

投稿: レオン・パパ | 2010年12月19日 (日) 10時12分

レオン・パパ様
おはようございます。
今月の日生は合邦も達陀もすぐれてよいですね!!
菊之助さんは「2度目は怖い」と言っていましたし、まったくその通りだと思いましたが、見事に初演を超える素晴らしい玉手です(初演も素晴らしかったですよ!!)。
義太夫は、初日はあまり注聴していなかったのですが、2回目は詞章にも耳を傾けることができました。確かに義太夫というのは人物の気持ちをよく表現しているものだと少しわかってきたような気がします。
文楽は一度は見たいと思っているのですが、なかなかそこまでいかなくて…。
「達陀」、もっともっと見ていたかったです。力強く清々しく、レオン・パパ様の涙腺が緩むのもわかります。

投稿: SwingingFujisan | 2010年12月19日 (日) 11時20分

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