« ワールドカップ開催地決まる | トップページ | 幻想的かつ勇壮の「達陀」 »

2010年12月 3日 (金)

菊之助玉手の美しさ

122日 十二月大歌舞伎初日(日生劇場)
ここのところず~っとイヤな気分だったから、初日を見て久しぶりに気分が盛り上がって嬉しかった。
「合邦辻」って何度も見たことがあるような気がしていたが、上演記録を辿ると、国立の通しがナマで見た初めてで、今回は3度目に過ぎないのであった。だから、この芝居をよく理解していない部分もあるけど、私なりに感想を。
「摂州合邦辻」
もちろん、菊ちゃんのあの玉手を目当てに行ったのだし、菊ちゃんは凄みさえ感じさせて素晴らしかった。終演後、偶然菊チャンを斜め後から見かけたのだが(すれ違ったのにその瞬間は気づかなかったのだ。ばっかねえ、私って。これ、きびだんご様のおっしゃる「目甲斐性がない」ってやつね。でも、大きなマスクかけてたんだもの)、あの凄まじい真っ赤な情念を迸らせていた菊ちゃんがこんなにあっさり歩いていることに驚いてしまった。考えてみれば普通に歩いていて当たり前なんだけど、こちらには未だ玉手の姿が焼きついていたから。菊ちゃんの美しさにはため息が出る。住吉神社では魔性を秘めたような年上の女(俊徳より少し上なだけなんだけど)としての貫禄、高安館庭では一途な女の情念、庵室では幼さや崇高さも持ち合わせた美しさである。羽曳野(時蔵)との雪の中での女どうしの立ち回りは、情念と忠義のぶつかり合いで見ごたえがあった。そして俊徳丸が本復した時の安らかな表情には、肉体は死んでも自分の血が俊徳丸の血と混じり合って生き続けるのだという満足感、喜びが見えるようであった。
玉手に本当に恋心があったかどうかは常に話題になるところだが、私はこの菊ちゃんの表情を見て、ある意味恋の成就だと思った。浅香姫には絶対できないことだもの。
菊ちゃんが花道から登場したときには、前回公演の感動を思い出してドキドキしてしまった。やっぱり門口での「かかさん」には泣ける。
俊徳丸は大抜擢の梅枝クン(松也クンは自主公演の準備で忙しかったのかな)。期待によく応えて頑張っていた。とくに菊ちゃんとの絡みのところはよかったと思う。梅枝クンについては次回観劇時にもうちょっと詳しく触れたい。
菊五郎さんのあそこまでの老け役は初めて見る。どこが、何がっていうのはよくわからないのだけれど、菊五郎さんの合邦にはこれまでの合邦に感じなかった何かが見えるような気がした(ひどく曖昧だなあ、我ながら)。俊徳丸に与える血を流すために玉手が刃を我が身に立てたとき、必死で鉦を叩いていた姿に父の愛情、悲しみを感じて、これまた泣けた。

東蔵さんのおとくは娘かわいさで、この気持ちはよくわかる。東蔵さん、先月に引き続き娘に先立たれる役なんだね。東蔵さんが庵室の外の明かりをつけるとき、ちょっとハプニングが。外の明かりは支柱の上方の滑車に紐を通して掛けられており、その紐を引いて下ろすのだが、灯を入れて再び上方に戻そうとしたらなかなかうまくいかない。客席はくすくす笑い。すかさず黒衣さんが出てきて手伝ったが、滑車から紐がはずれてしまい修復不能。黒衣さんが紐を投げ上げて引っ掛けようとしたが届かず、客席もずっと笑っているので、1回だけのトライにして明かりはそのまま床に置かれて次の場面へ。
悪役・次郎丸は最初誰だかわからなかった。それが次郎丸の口から一言発された瞬間、わかったよ。亀三郎さんだっsmile あの化粧はふっくらと丸顔に見えて役者の顔がわからなくなる。権十郎・亀三郎という声のいい叔父甥コンビが悪役というのが嬉しい。
全体的には凝縮感がいくらか薄いような気がしたが、こちらの体力のせいかもしれない。
そういえば、国立では出てきた羽曳野の夫・主税之助は今回は登場しなかった。そのためお家騒動に絡む場面(竜田越の場とか、大詰の家督相続が告げられる場面とか)はない。あら、そういえば松竹座でも主税之助はいなかったんだっけ。大詰の終わり方としては主税が出ないほうが強い感動が残っていいと思う。

|
|

« ワールドカップ開催地決まる | トップページ | 幻想的かつ勇壮の「達陀」 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

ご指名により(笑)自他共に認める「目甲斐性 梨之助」参上。私なんか、マスクなしでも、全然気がつかない可能性大です。そういうエピソードには事欠かない(泣)。

通しで見ると、また違った面白さがありますね。同じ通しと言っても(国立と比べても)、出演者や演出の違いで、ずいぶん印象が変わりますし。だからこそ、何度見ても面白いし発見もあるんでしょうね←そんなことを言えるほど、見てはないんですが。合邦は苦手(食わず嫌いの類)と思いつつも、前回の国立を見ておいてよかったです。
序幕、竹本がnote玉手御前、と語った瞬間、まだ姿も見えないのに、胸がドッキン。そこからは、しばし浮世の憂さを忘れ・・・lovelyってなわけで。ああ、嬉しい12月。

投稿: きびだんご | 2010年12月 6日 (月) 09時55分

きびだんご様
目甲斐性では私のほうが勝ちみたいですねbleah(いや、目甲斐性の無さではきびだんご様の勝ちって言うべきかなsmile)私より目甲斐性のない人がいるって、ちょっとほっとしているところです(^^)

合邦の通し、私も国立で見ておいてよかったと思いました。あれはあれで、とても感動しましたし。でも菊之助さんの玉手には、登場前から胸をドキドキさせるものがありますね。きびだんご様が竹本の一言でドッキンとしたお気持ち、よっくわかります!!
仕事やら家のことやらとうまく折り合いをつけて、できたらもう一度くらい追加したいなあ(週に1度は見たいcoldsweats01)。

投稿: SwingingFujisan | 2010年12月 6日 (月) 14時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/37940410

この記事へのトラックバック一覧です: 菊之助玉手の美しさ:

« ワールドカップ開催地決まる | トップページ | 幻想的かつ勇壮の「達陀」 »