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2011年2月17日 (木)

悲しい因果:盟三五大切

214日 「盟三五大切」(松竹座)
この芝居は怖さが先に立ち、後味の悪い思いがしたものだが、回数を重ねるにつけ、悲しみがじわじわとくる。今回も源五兵衛の男の純情に、三五の因果に、八右衛門の忠義に泣かされ、悲しみに胸が抉られ、うまく作られた話だなあと思った。
二軒茶屋の場で、大事な大事な百両を投じて小万を身請けした喜びが一転、実は騙されてコケにされたとわかった時の源五兵衛の気持ち(ちょっと佐野次郎左衛門に通じるものがある?)が悲しくて辛くて、叫びだしたいくらいだった。花道を引っ込む仁左様の目に暗い凄みが宿っている。本当なら縮みあがるほど恐ろしい目のはずなのに、やっぱり悲しいのである。5人斬りの場面は歌舞伎座で見たときは刃の引かれる痛みに震えたが、今回は恐怖の美しさというか、そんなものを感じた。
本当にこの人たちヒドい、と思ったのは愛之助さんの三五の好演もあるかもしれない。愛之助さんの三五は家を勘当されたしょうもないごろつきの若者が悪計を用いるという感じがしっくりきて、リアルに等身大に見えた。二軒茶屋の場面では、優位に立った者の脅しが効いていた。こちらは、百両という大金が回りまわって源五兵衛のところへ戻ることを知っているからまだ我慢できるが、主君が源五兵衛じゃなかったらどうすんのよ、と言うのはナンセンスcoldsweats01 因果応報、南北の面白さがここにある。
愛之助さんは最初船で登場したとき、こちらに斜め後ろ姿を見せており、それが仁左様そっくりで、仁左様じゃないってわかっているのに思わず「あれ?」と間違えたほど。脚が違うな、ということで「ああ、そういえば三五はらぶりんだったんだっけ」。
芝雀さんは見る前のイメージでは小万じゃないと思っていたが、その予想よりはずっと小万であった。きれいで色っぽい(芝雀さんは男性と寄り添うと色っぽさが増すような気が、私にはする)。ただ、まだどことなく違うかもという意識が残るのは私の偏見かしら。小万は源五兵衛をだますことに罪悪感はもっているのだが、本当の気持ちはどうなのだろう。未だ小万を摑みきれていない私coldsweats02 ところで小万の生首に源五兵衛がご飯を差し出すと、小万はかっと目を見開いて舌を出すのだが(ここで源五兵衛も観客もぎょっとなる)、台に敷かれた布がちょっと持ち上がっていたみたいで芝雀さんの口が隠れてしまい、目しか見えなかったのが残念(悪趣味?bleah)。
松也クンはデカい!! と思った。膝をう~んと曲げなくてはならないので大変だろうな。ごろつきの中でこの菊野だけが源五兵衛に同情しているだけに人間違いとはいえ殺されてしまうのはかわいそうだった。
薪車さんの八右衛門、最初はとても違和感があった。なんか違うよなあと思っていたのに、いつの間にかしっかり思い入れて、この好人物で忠義の若者をこんな形で犠牲にしなければならないことの無惨さに身を切られるような辛さを感じ、泣けて泣けて仕方なかった。
そんな恐ろしさや悲しさが渦巻いているのに、コミカルな場面も鏤められていて、客席からもそのたび笑いが起こる。ラスト、腹に出刃包丁を突き立てた三五が立ち上がって身づくろいを整え始めた時も笑いが。仁左様とともに「これぎり」なのでした。
<上演時間>序幕・二幕目85分(17001825)、幕間35分、大詰90分(19002030

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コメント

>S.F.さま
江戸では人気でも、上方ではめったに上演されないですから、たいへん楽しみにしておりました。今から思えば、名古屋の花形・三津五郎、橋之助、菊之助版が大健闘でした。また、お若い頃の勘三郎、福助、橋之助版が凄かったですね。
悪ガキどもの大人なぶりに大人の鉄槌という今どきの笑いの要素が欲しいし、ラブトライアングルとしてもバランスがもう一息でした。三人とも大看板の座組でも、立派すぎたり、難しいですね。新劇でもしはりますから、堤さん、段田さん、秋山さんかな。
役者さんは皆さん素敵でした。

投稿: とみ(風知草) | 2011年2月22日 (火) 09時55分

とみ様
そういえば、このお芝居、上演記録を見る限り上方ではかかっていないのですね。
おっしゃるように、役者さんが立派すぎるということは他の演目でも時々感じることがあります。
とみ様がご覧になった名古屋とコクーン版は役者さんのバランスがよさそう(私はまだ歌舞伎を見ていない時期でしたので、とても残念)。
新劇版も見たことがないのですが、堤・段田・秋山さんの3人なら見たかったなbearing

投稿: SwingingFujisan | 2011年2月22日 (火) 14時11分

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