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2011年3月 3日 (木)

三月大歌舞伎昼の部

32日 三月大歌舞伎昼の部初日(新橋演舞場)
なんだかすご~く久しぶりに歌舞伎を見る感じがする。ル テアトル銀座の歌舞伎が終わってからまだ5日というのにね。
「恩讐の彼方に」
ミーハー的観劇者としては、これが一番楽しみだった。そしてこれが一番面白かった。
青の洞門の話だってことは薄ボンヤリと知っていたが、見ているうちに、ああ昔読んだか見たか、とにかく知っている話だとわかってきた。そして見ているうちにぼろぼろと涙がこぼれてきて、困った。泣こうなんて全然思っていないのに、知らず知らずに涙が出てくるのだもの。宗教的な面は全く押し付けがましくなく、むしろ宗教とは関係なく私の心の琴線に触れる。
松緑さんは「達陀」でも煩悩を乗り越える僧を好演したが、ここでも女に唆されて悪事を犯すもののそれに耐えられず逃げ出し、仏門に入ってなお苦悩と戦いながら洞門を掘り続ける僧をよく演じている。松緑さんは竹を割ったような性格に見えるが、こういう苦悩を抱えた役が案外似合うのではないかと思った(怨みに燃えた崇徳上皇もよかった)。年老いてからの顔は私の席からはよく見えなかったけれど、若い染五郎さんの実之助との違和感も全然なかった。
染五郎さんの実之助は、長く苦しい旅の末やっと目指す仇を見つけはやる若者の感情がいやみにならずに伝わってきて、実之助の立場に立って早く仇討ちをさせてやりたいとさえ思いたくなるほど。了海(松緑さんの役)の意外な姿にとまどいながらも徐々に変化していく気持ちがほどよく熱くて、私が泣けたのはその染五郎さんに対してだったかもしれない。
菊之助さんの悪女は珍しいかな。本性を顕したときにちょっと男が入っているのが気になった(声もあそこまで変えなくてもいいんじゃないかしら。優しい声のほうがかえって怖いかも)けれど、スゲエ女だなと呆れながらやっぱりきれい、そのギャップが興味深い。
團蔵さん、歌六さん、亀三郎さん、亀寿さん、芝のぶさん(亀寿・芝のぶの夫婦殺しが了海――この時は市九郎――に悪事から足を洗う決心をさせたことを思うと、この夫婦が初々しく2人旅を心から楽しんでいる風情が必要だが、2人にはそれがよく現れていて、殺しの場面が演じられなくてもその残酷さ、哀れさが胸に堪えた)等々、出演者も豪華。
これはもう一度見たいなと思った。

「伽羅先代萩」
六世中村歌右衛門十年祭追善狂言。十年祭というのは歌右衛門家が神道だから、ということでやはり神道の私としては神妙な気持ちになる。
しかし「御殿」の飯炊きはやっぱりちょっとつらいかな。藤十郎さん襲名の時に見たきりだと思うのでできるだけ頑張って手順とか見ていたのだけど、気がついたら陥落していた。ふっと目覚めながら、政岡は33度こうやって悠長に(って、つい言いたくなってしまう)ご飯を炊いていたのだろうか、と政岡も子供たちも気の毒になった。
それなりに緊張感は保たれていたものの、正直、飯炊き以外もあまり盛り上がりが感じられず、周囲でも眠っている人が目立つ(この緊張感に疲れを覚えるのかもしれない)。他人のせいにするつもりは毛頭ないけれど、周囲の空気につられて自分もついつい目を閉じる回数が増える。
男之助の歌昇さん、弾正の幸四郎さんがとてもよかった。
歌右衛門ゆかりの役者さん勢揃いなのに、自分でうまく楽しめなかったのは残念(楽しむっていう演目ではないけれど)。
「御所五郎蔵」
菊五郎・吉右衛門という豪華な顔合わせに福助、芝雀、菊之助といえば面白くないはずがない、のだが、私自身この演目をあまり好きでないのかなあ。これもけっこう寝ている人が多かったし。
菊五郎さんの五郎蔵は若々しくて華も色気があって素敵だったし(やっぱり菊五郎さんには老け役よりこういう役をやってほしい)、怒りの凄まじさも花道を踏み抜くんじゃないかというくらいの勢いが伝わってきた。吉右衛門さんはまだセリフがちゃんと入っていなくて時々プロンプターの声が聞こえてきたが、それはあまり気にならなず(最近、プロンプトが芝居を邪魔して興をそがれるということがほとんどない)、大きくて、私はかなり魅力を感じてしまった。
役者さんはみんなよかったのに、なんだかこのお話は納得がいかないのだ。
今月は昼の部も夜の部も1回きりの観劇予定なんだけど、もやもや感が残るからもう一度昼の部を見てもいいかも…かなあ。
<上演時間>「恩讐の彼方に」88分(11001222)、幕間30分、「伽羅先代萩」97分(12521429)、幕間20分、「御所五郎蔵」74分(14491603

追記
①恩讐の彼方に:亀鶴さんが仇討ちの浪人役でちょっとだけ出たけれど、実にもったいなさ過ぎる!! 團蔵さんもあっという間に殺されて終わりshock 
②先代萩:御殿は食後だったので、空腹をガマンしている子供たちにちょっと罪悪感みたいなものを覚えてしまった (^-^;
③先代萩:床下は面白かった。弾正は幸四郎に限る、とこの場面を見ると思う。花道の引っ込みは私の席からは途中で見えなくなるが、影の動きでその大きさ不気味さが感じられる。
④五郎蔵:色々考えるに、五郎蔵という人物に魅力が感じられない。役者さんの問題でなくて、これは芝居の登場人物としての問題だと思う。意外と「ちっちぇえ」人物に感じられてしまった。
⑤山川静夫さんが3階上手側で観劇していらした。

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
連日、お邪魔いたしますm(_ _)m

で、本日見てまいりましたっ。Fujisanさまと同じく、私も『恩讐の彼方に』が一番楽しめました。これだけもう一度みたい、とも思っています。松緑さんを見てやはり「達陀」を思い出しました。Fujisan様とほとんどおんなじ感想なんですわ(^-^)(私は涙は出ませんでしたが)。ただひとつ不満なのは、亀鶴さんの出番が少ない、軽すぎる(そう思えました)こと!

『先代萩』は床下がかっこよかった!弾正が花道を下がっていくときの影にしばし見入ってしまいました。『五郎蔵』はう~ん。。。菊五郎さんはああいうお役、本当にお似合いですね。あと、右近さんには悪いけどあそこは亀鶴さんでいってほしかったなぁ、としつこく思ってしまいました。

さ、明日は『浮舟』だわぁ♪のからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2011年3月 3日 (木) 20時17分

からつぎ様
昨日に引き続きコメントありがとうございます。
幕見があれば私も「恩讐の彼方に」だけ再見したいですわ~。
そうそうそう、亀鶴さんの扱いはちょっとないんじゃないのannoy、と私も思ったのでした。あれだけいい役者さんがもったいないです。

床下は歌昇さんも力強かったし、幸四郎さんがカッコよかったですね。私も3階で花道は七三から見えなくなってしまいますので、影に見入っていました。
からつぎ様のコメントで書き忘れたことを思い出しましたので、エントリーに書き加えさせてくださいね。

夜の部、私は20日過ぎ--筋書きの舞台写真入りを狙った日程ですsmile

投稿: SwingingFujisan | 2011年3月 3日 (木) 20時48分

うふふ。初日組ですねー。お疲れでした。
ほんと「恩讐の彼方に」の亀鶴さんには、えっ!?と思い、いや「御所の五郎蔵」に出られるのよね、なんて勝手に決めちゃって・・・そう、からつぎさんに同感なのです。
「先代萩」は、初めて見た頃よりも更に「子どもに食べさせない」という部分で、ちょっと現実に引き戻されてしまいます。千松が死んじゃうのは思いっきりドラマで平気なのにねぇ。今の現実が重すぎるのかしら。
「御所五郎蔵」はもうちょっと華やかな気がしてたんですが、それは皐月の部屋のくだりがないせいでしょうか。

投稿: きびだんご | 2011年3月 3日 (木) 23時26分

きびだんご様
久しぶりの長時間観劇だったので、やはりちょっと疲れましたわ。昼夜通しにしなくてよかった (^-^;
役の割り振りはそれなりに大変なんだろうなあとは察しますが、それにしても「え~?」…ですよね。私も「御所の五郎蔵」に出ると勝手に決め込んでいました。
毒見役として犠牲になるのは自分がいる現実とはかけ離れているからドラマとして見ることができても、食べるということには切実感をもって反応してしまうのかもしれませんね。ご飯を待っている子供たちが痛ましくて。
「御所五郎蔵」は前にも見ていて何となくは覚えているのですが、皐月の部屋のくだりなんてあったんでしたっけ?coldsweats01 それが入れば、五郎蔵の人間ももっと大きく見えたのかしら。どことなく消化不良のような、物足りないような気がしました。

投稿: SwingingFujisan | 2011年3月 4日 (金) 00時44分

3月の演舞場、観てきました~。
『恩讐の彼方に』の、「ほどよく熱く」という印象、私も全く同じことを、幕間に母と話していました。熱すぎないところが、余韻が残ってとっても良かったですよね。染丈演じる実之助には、親の仇を討たせてあげたい…と思わせる憔悴感や切迫感がありましたし、20年もの歳月、罪滅ぼしのために岩を砕き続けた了海に感じ入ってしまう、そして、殺しても自分は救われない…と呻く気持ちもまた、すんなり同情できました。とても充実したお舞台でしたね~。

朝一番に、とてもカンゲキしてしまったせいか、あと2つの演目が消化不良…的なお気持ち、実は私も同じです(汗)。

先月が早上がり、というか、1部につき1演目だったせいもあるのでしょうか…、歌舞伎時間に戻れていないのかしらん?

投稿: はなみずき | 2011年3月 6日 (日) 18時59分

はなみずき様
3月最初の土日はきっと演舞場にお出かけだろうと思っておりました(^^)

ほどよい熱さというのは演じる側にとって難しいかと思いますが、染五郎さんと松緑さんの感情のやりとりがとても自然でしたね。しみじみといいお芝居でした。花形の充実には目を見張るものがありますね。

歌舞伎は長いものとはわかっていますが、5時間はさすがにきついですねぇ。時間を忘れるほど楽しい5時間ならいいのですが…でもやっぱり5時間は長いcoldsweats02 上演時間についても見直す時期がきているのではないかしらと思います。

投稿: SwingingFujisan | 2011年3月 6日 (日) 20時57分

SwingingFujisan様
 お早うございます。今月、演舞場の昼の部、ややもたれる狂言建てですね。私は後半の観劇です。「御所五郎蔵」は、「湯殿の長兵衛」同様、盛りの立役が皆やりたがりますが、確かに、それほど面白くないですね。
 昨日、夜の部みてきました。最初、配役をみたとき、疑問を感じた吉右衛門の匂宮が、実にウィットがきいた面白さです。正直言って、染五郎とは役者の格が違います(競演にならないのが残念)。菊五郎の時方、「十二夜」の役を連想させてこれも秀逸でした。
 幸四郎の筆幸、総じて悪くはないのですが、黙阿弥狂言の演技の枠を超える(これを新劇っぽい演技と言いきっていいのかわかりませんが)のは、いつも通りです。
 そして予想外によかったのが、「吉原雀」。梅玉、福助ともに、ふっくらとした、歌舞伎役者としての風味満載の良い踊りでした。
 
 先月の、「油地獄」楽日近くに見に行きましたが、ご報告しませんでした。チョット忙しかったので・・。一言いうなら、染五郎、健闘しているのですが、孝夫時代の仁左衛門の、どんどん追いつめられていく、あの切迫感あふれる演技には遠く及ばない気がしました。

投稿: レオン・パパ | 2011年3月 8日 (火) 10時02分

レオン・パパ様
おはようございます(ぎりぎり間に合いますね)。
ご多忙のところ、コメント、ありがとうございます!!

「御所の五郎蔵」は感動した「恩讐の彼方に」の後でもあり、自分だけそうだったのかなと思ったら、けっこう他の皆さんも同じようにお感じになられたようですし、そもそも作品自体があまり面白くないのですね。「湯殿の長兵衛」も非常に後味の悪さが残りますが、役者さん好みなんですかねえ(5月の松竹座でもかかりますね)。

匂宮は私も配役に「?」であまり気が進まなかったのですが、楽しみになってきました。染五郎さんも吉右衛門さんからどんどん吸収してほしいですね。
梅玉・福助は以前「蝶の道行」でも一緒に踊られて、案外よかったことを覚えています。コンビとして合うのかもしれませんね。

染五郎さんの与兵衛はレオン・パパ様のお眼鏡にはかないませんでしたかcoldsweats01 これから上演を重ねるうちにきっとレオン・パパ様が合格点をつけられる日がくるように願っています(^^)

投稿: SwingingFujisan | 2011年3月 8日 (火) 11時55分

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