« 切り替え | トップページ | わくわくした大蔵卿とはらはらした封印切:四月歌舞伎昼の部② »

2011年4月 3日 (日)

笑ってほろり「お江戸みやげ」:四月歌舞伎昼の部①

四月大歌舞伎初日昼の部(新橋演舞場)
ここのところ花粉症がひどく、家では洟ずるずるしながら我慢していたが、観劇するのにそうもいかず薬を飲んだら眠くて眠くて、各演目1回は完全にダウン。昼の部は多分初日だけの観劇になると思うのでもったいない、とても残念。
「お江戸みやげ」
初見。
なんだかごちゃごちゃがやがや慌しい芝居だなあと思っているうちに、だんだんほろりとしてきて、最後はかなりウルウルきた。

孝太郎さん(お紺)は、おきゃんで養母の企みを拒絶して好きな男と駆け落ちしようとする無鉄砲さ、自分を貫く強さがいい。孝太郎さんには耐える役よりこういう役のほうが溌溂としていて合っている。
錦之助さん(お紺の恋人・阪東栄紫)は最初、なよなよしていて女垂らしみたいでお紺ちゃんなんでこんな男に惚れたの?と思ったが、この時の栄紫(女方の役者なのだ)は幕間だったからだとは後でわかった。役を離れた栄紫は「色男、金と力はなかりけり」かもしれないが、女方役者らしい柔らかさの中に男らしさも見え、心やさしい人であった。
結城紬の行商人・お辻(三津五郎)とおゆう(翫雀)のコンビ、その逞しい生き方に笑い、かつほろりとした。昔からおばちゃんたちは逞しくやさしかったのだ。翫雀さんは「いるいる、こういうおばちゃんいるよね」。大らかで、世話好きでお人よしで酒好きで、どっしりしているようでいつもばたばた賑やか。ややオーバーなところもあるけれど翫雀さんらしいおゆうさんで好もしい。三津五郎さんはそれとは対照的に、常に算盤をはじいていてちょっと偏屈で…でも本当はそんな自分を寂しく思っている(んだと思う)。優しい心根の持ち主でもある。この素朴なおばちゃんたちの活躍が微笑ましく、応援するあまり手に力が入る。
ふと芝居を見て栄紫に惚れてしまったのがおゆうじゃなくてお辻というのが何だかちょっと泣かせる。金に細かいお辻が初めて惚れた男とその恋人を助けるために大金を投げ出す思い切りのよさ、清々しさ、甘酸っぱい思いに涙がにじんだ。お紺と上方へ旅立つ栄紫はお礼に長襦袢の片袖を切って渡す。袖を女性に渡すということには何かしらの意味があるのかもしれないが、ここは栄紫が男としても役者としてもお辻の気持ちに精一杯応えたのではないか――「これがあたしのお江戸みやげだよ」。お辻の夢と思い出に泣けてきた。
この物語で唯一悪役扱いなのがお紺の養母・文字辰(扇雀)と、その使い走り的な鳶頭六三郎(亀鶴)。角兵衛獅子もお辻も文字辰を見るなり「あれは悪い人間だ」と一言で切り捨てる。亀鶴さん、今月はこれだけなんだよねえ。でも、どんな役でもらしさをきちんと見せて光るものがある。
最初と最後に登場する角兵衛獅子の兄弟がこれまた素朴で逞しい。兄貴分の巳之助クンが飄々としていて、なかなかちゃっかりな子役とのコンビも微笑ましい。
萬次郎さんがやはり女方役者の役で、出番待ちの間に酒を飲みに出てくる。萬次郎さんのコミカルな面がたっぷり楽しめ、短い出番ながら強烈なインパクトを与えてくれた。
三津五郎さんが錦之助さんの栄紫に「やまとやっ」と声をかけて見送る姿が印象的であった。

|
|

« 切り替え | トップページ | わくわくした大蔵卿とはらはらした封印切:四月歌舞伎昼の部② »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/39470089

この記事へのトラックバック一覧です: 笑ってほろり「お江戸みやげ」:四月歌舞伎昼の部①:

« 切り替え | トップページ | わくわくした大蔵卿とはらはらした封印切:四月歌舞伎昼の部② »