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2011年4月 4日 (月)

わくわくした大蔵卿とはらはらした封印切:四月歌舞伎昼の部②

四月大歌舞伎初日昼の部(新橋演舞場)
昼食後は、菊五郎さんが「又するの?と言ったら夏雄ちゃんが鬼次郎で付き合いたいと。芸風が違うから一緒にやるのは楽しい」と語った大蔵卿。
「一條大蔵譚」
御所の門が開いて大蔵卿が飛び出してくる場面はいつもわくわくする。
菊五郎さんが夏の巡業より一層大きく見えたのは鬼次郎が團十郎さんだからだろうか。相手に合った大きさというものが感じられたように思った。阿呆の振りも行き過ぎず、といってここではまだ作り阿呆であることを観客に悟られてはいけないわけで(品格と愛敬がほどよい加減)。本心を見せた大蔵卿は凛々しく大きく頼もしい。しかし作り阿呆は世渡り上手なのか現実逃避なのか…。それだけ当時は平家の威光が強かったということか。いずれにしても柔軟な心の持ち主ではあろう。
時蔵さんの常盤、私は大好き。やわらかさとやさしさと武家の女としての芯が感じられる。常盤と大蔵卿との間にはいったいどういう感情が流れているのかなあと思うのだが、菊五郎さんの大蔵卿との間には互いを理解し合った静かな愛情(男女間の愛情というよりは人間的な愛情かな)があるような気がした。
團十郎さんはあけっぴろげな芸風だから腹に一物ある役はどうかと危惧したが、いい意味で予想がはずれた。若々しく力強いのがいい(見た目だけでなく、鬼次郎の若さ。鬼次郎って何歳くらいなんだろう。私はずっと、若いと思ってきたから)。
菊ちゃんは女スパイらしい落ち着きと地味に控えているのがよかった(踊りはsleepybearing)。
茶屋亭主の橘太郎さんが「らしく」って嬉しい。
物語はわかっているのに、全体に展開にわくわく感があったのは、自分の気の持ち様によるものだろうか…。

「封印切」
苦手な演目の1つなのだが、こんなに面白いと思って見たのは初めてかも(悲劇なのに面白いは変かなcoldsweats02)。やはり人気の演目というのはいい演目なのであって、こちらがそれに気づいていないだけなんだと認識する。
八右衛門ってたとえば仁左様なんかだととてもカッコよくて愛敬もあって、うじうじ男の嫌いな私には忠兵衛なんかよりよっぽど魅力的に映るのだが、三津五郎さんの八右衛門は実にイヤミな男であった。上方の役者さんがもっている柔らかさが感じられずきっぱり意地悪だったのも八右衛門の憎らしさを増した。と言って冷たいという風でもなく、子供みたいに徹底的に忠兵衛をからかい、いたぶって楽しんでいるのだろう。そのからかい、いたぶりに忠兵衛が乗せられてついに我を忘れてしまう過程がはらはらして面白かった。
忠兵衛もなんだか今回は受け入れることができたように思った。まさかこんなことになるとは夢にも思わず、うきうきと花道から現れ井筒屋の扉を開ける忠兵衛、ここから悲劇が始まるのだと思うと、ちょっとどきどきしたのも初めて。梅川を先に送り出し、1人ふらふらと花道を引っ込む忠兵衛。これから2人は忠兵衛の父のいる新口村へおちていくのだと思ったら、哀れを覚えたのも初めて。藤十郎さんの表情がうつろでもあり覚悟を決めたようでもあり、こんな時の人間ってそういう表情になるのかもしれないなと思った。
扇雀さんははじめあまり綺麗に見えず、儚い感じも受けなかったが、徐々に綺麗になって、周囲に幸せを繕いながら死に赴く女の儚さ哀れさが滲み出してきたようであった。
井筒屋の人々は、後になって「そういえばあの時の『川』の様子はおかしかった」と噂するのだろうなあ。
<上演時間>「お江戸みやげ」65分(11001205)、幕間30分、「一條大蔵譚」86分(12351401)、幕間20分、「封印切」79分(14211540

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisanさま☆
初日レポ、どうもありがとうございます!こちらを読ませていただいたら、急に歌舞伎が見たいっ!という気持ちがわいてきました!
なんとなく、あれからウツっぽくて、なんかやる気出なかったのですが、
(自粛とかでなく、やっぱり後ろめたい感じですかね…なんか申し訳ない感じで…)
日本経済が停滞しちゃいけないから普段通りの生活を、って言われても、気持ちがついていけなくて。。。
でも、Swingさまのところには毎日寄らせていただいて、ほっこりしてたんですけども。
歌舞伎、見たくなってきました!どうもありがとうございます!

投稿: 七子 | 2011年4月 4日 (月) 19時26分

七子様
こんばんは。コメントありがとうございます。
七子様と同じようにあれから私もウツウツとしておりましたからお気持ち、よくわかります。でも、これじゃいけないと自分で気持ちを引き立てない限り、その状態から抜け出すのは難しいと思います。私も未だに抜け出せないではいますが、必死で色々なものと戦いながら何とか前を向いて歩こうとしています(躓いてばかりですけれど…)。
歌舞伎、ご覧になってください!! 非日常の世界にご自分を置いてみることで少し元気になれるかもしれません。役者さんのエネルギーをもらってこちらも返球しましょう。被災された方々が再び歌舞伎をご覧になる日のためにも!! ちなみに私、今月は昼の部は1回ですが夜は2回見るつもりです(^^)

投稿: SwingingFujisan | 2011年4月 4日 (月) 22時26分

SwingingFujisan様 おはようございます。
昨日、昼の部観てきました。3本とも充実していたと思います。今回の一押しは、かん雀のおゆうです。以前見た、富十郎の同役もよかったですが、この優の人柄がにじみ出るような秀逸な出来栄えだったと思います。あと、団十郎の鬼次郎がなんとも立派な容姿で、演舞場ではなく歌舞伎座で見たいくらいの大歌舞伎です。また、この優の「将門」の光国がみたいと思いました。
 ところで、先週、新国立で歌劇「ばらの騎士」を観てきたのですが、ちょっと一言。この震災、原子力事故騒ぎで、外国人演奏家の来日キャンセルが続く中、主役に予定されたバス歌手が当初予定どおり来日。新国立のHPに記載された、その方のコメントに被災者支援は、被災地(日本、東京)に行ってこそ意味があるので、来日したとあり、感動を覚えました。その歌声、なかなか素晴らしかったです。

投稿: レオン・パパ | 2011年4月24日 (日) 09時35分

レオン・パパ様
こんばんは(朝早くコメントをいただいたのに、すみません、遅くなってしまって)。
「お江戸みやげ」は面白かったですね。富十郎さんのおゆうは見ていないのですが、評判がよかったようで。私は私なりに翫雀さんのおゆうを評価していたのですが、先人と比べてどうかということはわかりませんでした。レオン・パパ様に褒められてとても嬉しいです(気が多いのですが、翫雀さんも好きなんですもの)。
團十郎さんの鬼次郎、よかったですね。夜の部の光秀よりよかったと思いました。

外国人観光客が日本を避ける中、こうして演奏会などで外国の歌手などが来てくれるのは本当に嬉しいですね!! そのような考えをもっているからこそ、対日してコンサートもするのでしょうね。

投稿: SwingingFujisan | 2011年4月24日 (日) 22時14分

こんばんはshine311後、先週末にやっと昼の部、昨日夜の部を観てきました。翫雀さんのおゆう、私も大好きです。「十二夜」の安藤英竹以来、翫雀さんに注目してしまいますが、先週「お江戸」が始まってまもなくお辻との茶屋の会話の中、結構大きい地震がきて、会場がざわつき、空気が変わりかけたとき、「まったく今日もよく揺れるねえ~」とかわして、会場を笑いに包み、見事にお客を芝居の世界に引き戻しました!

夜の部は松緑の活躍が印象に残りました。これまで多少発声に苦手意識があったのですが「男女道成寺」の踊りのセンスに感心し「権三と助十」では、若い江戸っ子ぶりがかわいかったです。でも、Fujisanさまがおっしゃっているように、三津五郎とのバランスはちょっと微妙な感じもしました。菊五郎、三津五郎でも是非観てみたいと思いましたhappy01

先日震災後にドミンゴが来日したときに、アンコールで日本語の「ふるさと」をあの声でゆったりと歌い、会場も一緒になって歌い、たくさんの人が涙して、ドミンゴに大歓声だったそうです。歌詞を思い、想像するだけで、私も涙が出そうですweep

投稿: よこ奴 | 2011年4月24日 (日) 23時28分

よこ奴様
おはようございます。
なかなかお芝居をご覧になる気分にはなれなかったでしょうが、楽しまれたご様子、嬉しいです。
翫雀さんは体形的にも(失礼)おゆうさんにぴったりでしたね。いや、実際体形というのは役にとって大事だと思うのです。でんと構えているあのおゆうさんに「今日もよく揺れるねえ」と言われたら、お客さんも不安を忘れていまいそうですものね。安藤英竹も貴族らしさを失わずにユーモラスでよかったですよね。

松緑さんは、確かに発声に問題がみられる時があると私も思います。でも、いかにも江戸っ子な感じはとても好きです。踊りもいいですよねえ。
菊五郎さんは少しずつ自分の芸を若い役者さんに引き継いでもらおうとしているようですね。

ドミンゴの「ふるさと」、一部ですがテレビで聞きました。丁寧で思いのこもった歌に私も思わず涙が滲みました(そもそも、この歌を自分で口ずさんでも泣きそうになるんですよ。私のふるさとは東京なのに)。

投稿: SwingingFujisan | 2011年4月25日 (月) 10時44分

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