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2011年5月23日 (月)

現代的な「牡丹燈籠」:明治座夜の部

520日 五月花形歌舞伎夜の部(明治座)
仕事がたまっていて、夜の部の感想、3日も引っ張ってしまった(今日は1日、気分が悪くなるくらい仕事したわ)。疲れ切って開いたネット、三谷幸喜と小林聡美が離婚だって。結婚した時にも驚いたけど、離婚も急だから驚いたわ。まあ、そんなことはどうでもいいか。
「怪談牡丹燈籠」
若手が演じるからなのか、とても現代的な芝居に見えた。男女の間に起こる問題だとか、金に対する欲だとか、あの世界を現代に置き換えても全然違和感ない、現代劇を見ているような気さえ時々した。仁左・玉で演じられた時はどう感じたのだろうか。自分の感想を読み返しても、その辺については書かれていなかった。
それにしてもこの花形たちの牡丹燈籠は仁左・玉の牡丹燈籠に負けず劣らずよく演じられ、非常に面白かった。
お露(七之助)のお供をして新三郎(染五郎)を訪ねる乳母・お米が萬次郎さんということで期待していた。萬次郎さんははじめのうちユーレイにしちゃちょっと元気がいいなと思ったが(それはそれで可笑しい)、徐々に幽霊らしくなってきて実に面白い。生き生きとユーレイを演じていると言ったら変だろうか。
七之助さんのお露はほっそりして可憐、雰囲気が青白く幽霊らしさを感じる。あの可憐な美女の素顔がガイコツなんてコワいですねえshock バッチリ見ちゃった伴蔵の驚愕と恐怖が、笑っては悪いけれど理解できるだけに可笑しい。お峰の七之助さんとの息の合った怖がり方にもずいぶん笑わせてもらった。
今回は新三郎と伴蔵を染五郎さんが二役で演じるため、新三郎に吹替えが使われる。吹替えの顔がこんなにはっきり見えたのは初めてだが、獅二郎さんだったのね。伴蔵が幽霊除けのお札をはずして幽霊たちが新三郎の家に入ると、染五郎さんは白塗りの新三郎に変わる。そして新三郎が死んで幕となる。白塗りを取るのは大変なことだそうだから、ここで幕となるのは二役用としてもよくできている。
七之助さんもお露とお峰の二役だから、幽霊たちが伴蔵の家にやってくることになると、お峰はすぐに押入れに隠れてしまう。一度くらい自分で幽霊を見てみればいいのに、なんて言ってはいけない(二役でなくても押入れに隠れるんだっけthink 女はズルいなあcoldsweats01)。
染五郎さんの新三郎はまあこんなものかなという感じで、やはり伴蔵に本領発揮だろう。自然に滲み出るコミカルさ、リアルさが第一幕の伴蔵を身近で魅力的な存在にしている。しかし第二幕の伴蔵にはあまりピンとくるものがなかった。女たちに囲まれて浮かれている姿も、浮気をお峰(七之助)に追及されて痴話げんかになる場面も、昔の自分たちを知るお六のことでお峰と争うところも、何となく子供っぽく見えてしまった。お峰の存在感が増したのに対し、伴蔵のほうは存在感が少し薄くなっているような…。でも、最後、殺しておいて「お峰~っ」と叫ぶ声には伴蔵のやりきれない気持ちが込められているような気がして、ここにはぐっときた。
七之助さんのお峰がとてもよかった。世話物の女房としての生活感がしっかり感じられたし、貧乏暮らしの一幕目では低めだった声がお金に余裕のできた二幕目では少し高くなって、店を切り盛りする貫禄も見せていた。また、そういう貫禄とは別にある種の容赦のなさが時々漂う(お札をはずすことを伴蔵に唆す場面はもちろんなんだけど、時々、「あれっ、この人意外にシビアなのね」と思うことがあった)。その辺が伴蔵を他の女に走らせたのかな。それでいて愛する伴蔵に甘えたい女心がかわいい。それだけに嫉妬心は凄まじかったな。夫婦久しぶりのデートに出かけるウキウキした気分なんか、微笑ましいものである。哀れな最期は恨みを残し、伴蔵を道連れにするのも愛情の裏返しによる容赦のなさだろうか。

もう一つのドラマ、お国と源次郎の2人は吉弥さんも亀鶴さんもそれぞれとてもよかったのに、少しバランスが悪いような気がしないでもない(お国がかなり年上に見えた)。とはいえ、吉弥さんのお国は悪女の深情けというか、セリフにもあったが「好きな人と一緒になるためには何でもする」という一途さに、お国を「悪い女だ」と切り捨てられない切なさのようなものがある。多少年上に見えても女性主導のこの悪事、悪くはないかな。私は吉弥さんのお国がとても好きだし。
好きな人が別にいるのに後妻に入る悲しさは玉手御前もそうだったっけ。不義の2人が主人を殺して逃げるのは「恩讐の彼方に」もそうだったっけ。

亀鶴さんの源次郎は健康でも1人じゃ何もできない頼りないぐうたらな若者が、脚を傷つけられて今度は本当に1人じゃ何もできなくなってしまった境遇の変化をもたらした自らの悪行を悔いながら(「無駄な殺しを2つもした」)、「恐ろしい女と思いつつも一蓮托生」、一緒にいるしかない哀れさが悲しかった。
2
人が死ぬのは悪行の報いとはいえ、一緒に死ねてよかった。
お国の働く店の「2階が見えるところまで言って、しょんぼり又帰ってくるんだ、このかまぼこ小屋にね」という亀鶴さんのセリフに笑いが起こったのはなぜ?
仁左・玉の時にも思ったことだが、お露にしてもお峰にしてもお国にしても、女性主導で物語が進むのが面白い。またお峰・伴蔵、お国・源次郎の2つのドラマの並行は一見別々に進行しているようだが、お露を通じて実はちゃんと繋がっている。恨み、殺し殺されの世界なのに強烈などろどろ感もなく、後味も悪くないのはよくできた話からなんだろう。
「高坏」
ただただ楽しんだ。
亀鶴さんが高足売りで勘太郎さんを騙すのも楽しい。勘太クン、お酒もうちょっと飲ませてあげればいいのに。素になって亀鶴さんにちょっと同情してしまった(ナンセンスだわねえ)。勘太郎さんがいい気分でだら~しなく頬を緩めて踊るタップの見事なこと。ああいう表情をしながらあれだけのタップを踏むのは相当きついだろう。それを見せないで客を楽しませる芸の力に拍手拍手!!
亀蔵さん(「牡丹燈籠」の馬子・久蔵がうまい)のこういう大名、好き。宗之助さんが心から楽しそうで、それもこちらを楽しくさせる。
充実した夜の部だった。
<上演時間>「牡丹燈籠」第一幕80分(16001720)、幕間30分、第二幕70分(17501900)、幕間30分、「高坏」30分(19302000

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コメント

こんにちは!
体調、回復されたようでよかったです。
昼間のお酒は本当に酔いがまわりますからね…
私も数々の失敗がcoldsweats01

21日に明治座に行ってきましたが、
なんだか会場(客席)の雰囲気が歌舞伎座とか演舞場の雰囲気とぜんぜん違った気がしました。
妙なところで笑いが起こったり、かなりな違和感でしたsweat01
かまぼこ小屋のところは私が見た日にもけっこう笑いがあったし
昼の「封印切」で最後、忠さんが「死んでくれ」と言うところでもまさかの笑いが。
そんな雰囲気の中、なんだかイマイチ乗り切れずに帰ってきてしまったのでもったいなかったですdown
でも今月は亀鶴さんが活躍していたので嬉しかったですよ。
(吉弥さんとは確かにちょっとバランスが…でしたが)
未来がないというか、なんともどうしようもない感じのあの二人でしたが、うまく言えないけれどとても好きでした。
吉弥さん、悪い女のはずなのにすごく魅力的でしたよね。

「高坏」は勘太郎さんがあんまり勘三郎さんに似ているので驚きました。
タップはさすがの軽やかさでしたし、三人全員楽しそうに踊っていて嬉しくなっちゃいました♪

aki様のところで拝見しましたが、松竹座、いらっしゃるんですよね?
「蘭平」は本当にすごいですよ。
捕手のみなさんのがんばりに涙が出ました。
結局私も万障お繰り合わせの上(?)、楽日に再見です!
早くもアツくなっておりますが、当日へばらないように自重したいと思います。
長々スミマセン…。

投稿: あねご | 2011年5月24日 (火) 13時25分

あねご様
こんばんは。コメントありがとうございます。
昼間のお酒ってどうしてあんなに回るんでしょうねえ。反省して、以来一滴も口にしていません。ま、大阪で飲んでしまうかもcoldsweats01

明治座は普段歌舞伎をご覧にならないお客様も多かったようですので雰囲気も違ったのでしょうね。「封印切」での笑いは気がつきませんでしたわ(私の時にはなかったのかも)。大事なところで変な笑いが起きると確かにガクっときますね。でも、誰にでも「はじめの一歩」はあるわけですから(^^)
お国と源次郎はこの世では人をあやめた悪い人間なのに、あの世ではきっと結ばれてほしいとこちらも願う必死さがありました。私はきっとお国が吉弥さんだからだと思うのですが、この2人好きです。
「高坏」、楽しかったですねshine あんなふうに踊れたらいいなあ。勘太郎さんにはお父様の芸を継承しつつご自分の味というものもなくさないでほしいと思います。

松竹座、参りますわよdash 早起きして新幹線でたっぷり寝ていきますsmile 「蘭平」が楽しみ楽しみ!!

投稿: SwingingFujisan | 2011年5月24日 (火) 19時13分

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