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2011年5月10日 (火)

いまひとつ盛り上がりに欠けた敵討ち:演舞場昼の部

58日 五月大歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
感想の前に敵討ち一口メモを。
江戸幕府が認めたのは目上の人の敵討ちだけ。目下の者の場合は通常の手続きを踏んで訴える。敵討ちのことは仇討ちとか意趣討ちとかとも言うが、江戸幕府が正式に認めた名称は「敵討ち」。
だそうである。以上、イヤホンガイドからの受売りでした。
「敵討天下茶屋聚」
正直言って、あまり面白いと思わなかった。とくに序幕・第二幕はかなり…このままこんな調子なら帰ろうかと思ったほどだが、初めて見る芝居だし、いつもより高い席(3A席)を取っちゃったし、と残ることにした。
梅玉さん、錦之助さん、魁春さん、彌十郎さんの善人側がよい。しかし悪人側がいまひとつ。しかしそれは役者さんがどうこうというよりは、芝居の進行そのものが平板で、悪の盛り上がりに欠けたからではないだろうか。物語全体としては3月国立の「絵本合法衢」に似ているのではないかと思ったが、面白さは全然違う。私は南北のどろどろがそんなに好きではないのだが、この芝居を見たら、ああ南北はなんて面白いんだろう、と逆に認識してしまった。
それでも、3幕目で少し面白くなってきて、4幕目、大詰めはそこそこ楽しめたから、途中で帰らなくてよかった。しかし、3幕目でいきなり源次郎(錦之助)の目が見えなくなっていて、4幕目になると見えていたのはどういうわけか。私が眠ってしまってその間の事情を見逃したのかしら。それにいつの間にやら源次郎の許婚・葉末(高麗蔵)が悪者にかどわかされたとか(これはセリフの中でわかったし、そういうやり方は他の芝居でも多々あるのに、何となく納得がいかないんである)…。
3
幕目では伊織(梅玉)の妻染の井(魁春)が夫のために身売りする。忠臣蔵のおかるを思い出したわ。おかるは売られていく前に夫に会えたけれど、染の井は会うことができず(伊織は外出中、早く帰ってくればいいのにとじりじりした)、おまけに無用心な弥助(彌十郎)のせいでせっかくのお金は盗まれてしまう。こういう善人側のドジって定番だわね。

梅玉さんは若々しくて武家の長男らしさがある。それなのに不覚にも脚を斬られて自分で動けない身体になり1人苦悩する場面がいい。苦悩する梅玉さんはとても魅力的だ。
錦之助さんが時々本当に少年のように見えたのにはちょっと驚いた。兄の亡骸を茣蓙にのせて埋葬する場面は悲しかった。
彌十郎さん、幸四郎さんの元右衛門・弥助兄弟は伊織兄弟に仕える下僕だが、2人とも体が主人より立派に見える(元右衛門っていう名前も立派だなあ)。それなのに彌十郎さんの忠義の下僕はとても自然で違和感が全然なかった。
幸四郎さんの元右衛門は巧まずして自然に愛敬が滲み出るといいのに。もっともそれは好みの問題かもしれない。元右衛門は最初から悪人ではなくて、無理矢理飲まされた酒が原因で悪人側につくのだけど、その辺の描き方もちょっと物足りないような気がした。

その幸四郎さんは東間三郎右衛門がいい。悪の大きさを感じる。とても素敵だ。ただやっぱり幸四郎さんは内に集約していくので、悪の華という感じはしないが、この東間はそれでいいと思った。
源次郎がもう死ぬしかないという瀬戸際で出会い、善人側の苦境を救う人形屋幸右衛門。吉右衛門さんがこういう役で出てくると、ほっとする(「荒川の佐吉」政五郎親分を思い出す)。どっしりした大きさ、この人さえいれば安心できる。舞台もぐっとしまる。
大詰めは東間三郎右衛門を源次郎、葉末、染の井が討って本懐を遂げるところだが、その前に「本日はこれぎり」になる。
<上演時間>序幕・二幕目74分(11001214)、幕間35分、三幕目44分(12491333)、幕間20分、四幕目57分(13531450)、幕間15分、大詰め15分(15051520

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コメント

SwingingFujisan様
おはようございます。演舞場昼の部、やはり盛り上がりに欠けましたか。ところで昨日、夜の部見てきました。「籠釣瓶」の通し、前半は勿論初めて、それなりに面白いのですが、後半の練り上げられた芝居の面白さとは相当格差を感じました。
私は幸四郎の武張った感じの次郎左衛門もすきなのですが、吉右衛門のこの役、殆ど完成品です。セリフの巧緻さは言わずもがな、適度の愛嬌も好ましい。そして、八つ橋を一刀で切り捨てる殺しの圧倒的な迫力は、思わず総毛立ちました。
他の役では、歌昇の忠実な治六、情の濃い芝雀の九重が結構でした。そうそう、中村小山三十八番の殺される女中役を今回は芝喜松がやっていたと思いますが、これも、雰囲気十分でした。

投稿: レオン・パパ | 2011年5月15日 (日) 09時36分

レオン・パパ様
こんばんは。になってしまってすみません。
昼の部はレオン・パパ様のおっしゃる通りでした。でも当日、私だけが盛り上がらなかったのかなと心配しましたが、劇場全体の雰囲気にアツいものが感じられなかったように思います。
夜の部は今週観劇予定です。吉右衛門さんも以前に見ていますが、私の中ではどうしても勘三郎さんという意識が消えません。レオん・パパ様が完成品とおっしゃる吉右衛門さんですから、今度の観劇でそれが消えるかもしれませんね。
芝喜松さん、なんとなく感じがわかるような気がします。それも楽しみです。

投稿: SwingingFujisan | 2011年5月15日 (日) 20時33分

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