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2011年6月24日 (金)

迫力、ユーモア、優れたデザイン性:国芳展

623日 「歌川国芳」展(太田記念美術館)
前期後半に駆け込み(前期は26日まで)。月イチの墓参で汗びっしょり、疲労も強かったけれど、今日しかないと頑張って足を伸ばしてよかった。
太田記念美術館は初めて。展示は1階(第一会場、第二会場)と地階(第三会場)に分かれている。普段は靴を脱いで上がるらしいが、今回は混雑のため靴のままでよい。ただし、1階の最初に展示されている肉筆(!!)は畳敷きなので靴を脱ぐ。膝を折って鑑賞するのもまたいい感じがある。
①肉筆画 一部をご紹介。
「欲後美人図」:暑い夏の風情を描いているのに、大汗かいたあとの全身がスッキリするような涼やかさ。ツバメのとまっている釣忍が効いている。
「助六出端」:歌舞伎ファンにとって嬉しい作品。傘をすぼめたこの助六に、花道でわくわくさせてくれるあの期待と興奮がそのまま感じられる。これ、ほしいわ~
「月岡芳年画 歌川国芳像」:国芳の13回忌に出された作品だそうで、優しさに溢れている。猫好きの師匠が淋しくないようにと足元に猫が1匹…。ぐっとくる。
「五姓田芳柳画 歌川国芳肖像」:説明に「かなり美男子に描いている」とあったので思わずクスリと笑ってしまった。国芳は自分の顔は描くことがなかったそうで、確かに本人が入っている作品では後ろ向きになっている。で、弟子たちが描いた死絵で国芳の顔を知ることになるが、この国芳も優しい顔をしている。ちなみに国芳は平顔で「ヒラヒラ」とあだ名されていたそうだ。
②武者絵
むか~しの(たとえば父が子供の頃)冒険小説の挿絵を見ているような昂揚感がある。と言うのもおかしな表現だが(だって、国芳のほうが先なんだもの)。
力強く、英雄たちが生き生きとして目の前で彼らの戦いが展開されているような臨場感に満ちている(そんな表現では納まらないな。なんだろう、画面から人物が飛び出してきそう。爆発している。う~ん、うまく言えない)。「水滸伝」のカッコいい人物に当時の人たちが触発されて総刺青が流行ったというのも頷ける。
国芳のすごいところは、大判の錦絵を3枚続きにしているところ。これによって1枚ではおさまらない迫力と物語性がぐっと増す。縦に3枚続く「吉野山合戦」には思わず「おお」と感嘆の声をあげそうになった。
それからもう一つすごいと思ったのは、硝煙の描き方。合戦というと刀に弓矢という意識でしか見ていなかった私は、そうかあの時代もう鉄砲はあったんだなとあらためて認識したし、硝煙に包まれる武将の姿に感動してしまった。
もう一つ、大勢の兵士など人物の表情がみんなそれぞれ違うのよね。

③妖怪画
私は1階の会場に階段があるのは見えていたが、その上にも展示があるとは気づかず、地階へ降りてしまった。その後、「え? 展示作品ってたったこれだけ? 妖怪画があるはずだけど…」と訝りながらふとその階段を上ってみたのだった。そうしたら、ありましたよ~。
圧倒された。
「酒田公時、碓氷貞光、源次綱と妖怪」(同じ妖怪モノでもやっぱりこういうのに反応するのだ、私は)はなんとも可笑しい。妖怪たちが現れているのに、囲碁に夢中の頼光四天王(ここには平井保昌がいない)は自分たちの楽しみをジャマされまいと妖怪を押さえつけていて、気味の悪い妖怪たちが気の毒になってしまう。滝夜叉と大宅太郎光圀の対決「相馬の古内裏」、知盛の亡霊と義経一行の戦いを描いた大物浦の数点、崇徳院の生霊は歌舞伎ファンには見逃せない。
中でも「見立東海道五拾三次 岡部 猫石の由来」はあの菊五郎さんや右近(市川)さんが猫を一緒に踊ったあの場面ですよ。国芳の絵の中でもネコちゃんたつがユーモラスに踊っている(こちらのネコちゃんはちょっと表情が怖い)。
そのほか「宮本武蔵と巨鯨」、「鬼若丸大鯉退治」などなど。
④役者絵・忠臣蔵
写楽の鋭い、緊張感に満ちたデフォルメされた役者絵を見た後に国芳の役者絵を見るのもなかなか面白い。「正札附現金男 団七九郎兵衛」は団七が身体に井戸水をかけて返り血を洗う場面。逞しい団七の腕、からだに当惑したような表情が生々しい。
討入場面、その後の両国橋を渡る場面、四代目中村歌右衛門の大星由良之助、どれもこれも「仮名手本」を思い出し、じ~んとなる。絶対見たいと思っていた西洋画(「バタビアの領主館」)をそのまま模した「忠臣蔵十一段目夜討之図」討入の絵は後期の展示みたいだから、後期も必ず行こう!!
「両国夕涼之図」は六代目岩井半四郎、四代目坂東三津五郎、七代目市川團十郎、初代澤村訥升、三代目尾上菊五郎、二代目中村芝翫が揃った贅沢な図。花火見物だろうか、夏の風情が心地よい。
圧巻は「国芳芝居草稿」というデッサン集みたいなもの。5メーター近い長さの紙に無数の人物が描かれている。あんまり細かくて眼が痛くなりそうだけど、中にはどの人物と見分けられるのもあって楽しい。

展示作品はガラスで保護されていて、光が反射したり自分が映りこんだりしてちょっと見づらいけれど、迫力とユーモアと優れたデザイン性を堪能した。展示数もほどよい。

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コメント

見に行くことができたのですね〜!
親分の発想力、想像力、創造力には圧倒されますよね。
それとともにクスリとしてしまうユーモアや皮肉も可愛くて。。。

「相馬の古内裏」や「宮本武蔵と巨鯨」などの3枚ものは初めて見た時にはすごい衝撃でした。3枚というスケール感を存分に生かした構図は天才的!
私は特に戯画や狂画が好きで、「里すずめねぐらの仮宿」をはじめとする動物の見立絵や、猫ちゃんシリーズ、国芳の書く動物達は生き生きしていて見ているとニコニコしちゃいますhappy01
後期展示も楽しみだし、8月は芳艶展、そして冬には更に大きな国芳展がくるしで、今年はお芝居以外にも楽しみがいっぱいですheart04

投稿: 林檎 | 2011年6月26日 (日) 10時24分

林檎様
おはようございます。コメントありがとうございます。
好評の国芳展、行きたいという気持ちをさらに押してくださったのは林檎様のコメントでした。ありがとうございます!!
楽しかったですぅぅ。なんという発想力なんでしょうね。ぞくぞくわくわくしてしまいました。
後期には戯画が展示されますね。すぐには行かれないと思いますが、待ち遠しいです。
日本の芸術のレベルの高さを心底味わいました。
太田美術館もとてもいい美術館ですね!!

投稿: SwingingFujisan | 2011年6月26日 (日) 11時43分

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