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2011年6月11日 (土)

役者ブロマイドを楽しむ:写楽展

610日 「写楽」展(国立博物館平成館)
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日までの会期になんとか滑り込む。ところが上野へ向かう途中、財布を家に置いてきたことに気づいた。どこかに1000円札の1枚でも潜んでいないかとバッグを引っ掻き回したけれど、悲しいことにビタ一文出てこない。文字通りの文無し。しかし一銭も持ってなくてもパスモのおかげで乗物には乗れるのよねえsmile ま、幸い今日の行動は1人ではなかったため(1人だったら財布取りに帰る)借金をして凌ぐことができたcoldsweats01 チケットは混雑を懸念して上野公園入口で買ったが、意外にも会場に行列はできておらず、すんなり入れた。内部も第1会場は込んでいて、けっこうエネルギーを使ったが、あとはまあまあかな。
さて、写楽展、まさにサブタイトルどおり「役者は揃った。」何しろ、写楽作品146図のうち、展示されないのは4図のみ(メモってこなかったので、何だったか忘れてしまった)だもの。
展示の作品は素晴らしいには素晴らしいのだが、当時(寛政6年=1794年)の役者のブロマイドを見るような楽しさが先立った。今に名前の伝わる役者も名前の途絶えてしまった役者も、こういう人たちが活躍していたのか、と想像するだけで昂揚する。
しかし…。写楽は179475年の間の10カ月しか作品を残さなかったのであるが、その10カ月も4期に分けられる。
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:デビューの大首絵28作。
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8月、都座・河原崎座・桐座の秋狂言に取材した作品。大首絵はなく、すべて全身像。大判では1枚に2人の役者(「篠塚浦右衛門の都座口上図」のみ1人)が、細判では1人の役者が描かれている。
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11月、閏11月、都座・河原崎座・桐座に取材した役者絵、役者追善絵、相撲絵。細判役者絵には背景が描かれるようになった。間判大首絵は背景が黄つぶしに。
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:寛政7年正月、都座・桐座の新春狂言に取材した作品。連続した背景の細判のみ。
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期は私たちが写楽というと思い浮かべるあの強烈な印象の役者の顔をアップにした作品群である。当時の衝撃が想像できる。2期に全身像にも勢いが感じられる。しかし3期、4期になると、なんとなく作品がつまならくなってくる。写楽が10カ月で消えたのはその新鮮な作風が失われたからではないかと言われているそうだが、それにしてもどうしてこんなに違うんだろう(1期・2期と3期・4期を見比べると、ほんとに大きく違う)。
これについては「美の巨人」でやっていた謎解きが面白かった。すなわち写楽の正体は能役者の斎藤十郎兵衛であり(ここまでは有力説として既に知られている)、能役者は1年出演すると1年休演する取り決めになっており、十郎兵衛はその休演期間中に制作したのではないか。それ以降の作品に勢いがなくなったのは別人が描いたからではないか。2つの落款――「東洲斎写楽」と「写楽」が――がそれを表している。あくまで仮説に過ぎないんだろうが、ちょっと説得力がある。

版画というのは色が褪せやすい。しかし恐らく当時の色がほとんど変わらぬまま保存されていた作品が何点かあり、それが褪色した作品と並べて展示されてあった。なんと色鮮やかな!! この色は元はこういう色だったのかとちょっとびっくりした。でも褪色したって素晴らしい作品は素晴らしいのだ。
そのほか、版の一部に変更が加えられた作品(落款の位置が変わっていたりも刷る。変更というと、レンブラントにも後にずいぶん手を加えた作品があったことを思い出す)も興味深い。

展示されているのは写楽のみではなく、写楽以前、同時代のライバル、写楽を受け継ぐ作家などの作品もある。私がとても好きなのは歌麿の「歌撰恋之部 物思恋」と「同 深く忍恋」の2点。どこがと具体的には言えないけれど、ぐいっと惹き付けられる。

写楽が描いた世界は、私がほとんど知らない演目ばかり。それでいて見たことがあるぞというような作品――悪人に父を殺され、お家の宝を盗まれ…。
当時の番付も何点か展示されていた。1枚のチラシのような「辻番付」、出演役者の紋、名題、場割、役人替名などの入った「役割番付」、今のプログラムに当たる「絵本番付」。松竹座で「番付」というのはこの名残なのだということを改めて認識した。

写楽の作品はアクが強い。好まない方もいらっしゃるだろう。当時も、役者自身にはウケが悪かったそうだ(美しくないものね)。でも、このアクの強さこそが写楽の魅力だとよくわかる展覧会であった。これほどの作品が一堂に並べられる展覧会などめったにないから、駆け込みでも行ってよかった。

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コメント

あぁ〜〜やはり行けば良かったかなぁとこれを読んで後悔。普通の浮世絵展で写楽作品を見てはいますが、4点以外全て展示とは価値が高いですよね…

私は先週、太田記念美術館でやっている国芳展に行ってきました。愛嬌、笑い、洒落、そして風刺もきいているところが特徴なんですが、今回初公開という「国芳芝居草稿」という、いわゆるデッサンばかりの巻物が圧巻でした。元々絵はうまい親分も、こんなに努力していたのかと益々大好きになりましたheart04
もしお時間があれば行ってみて下さい!

投稿: 林檎 | 2011年6月13日 (月) 18時39分

林檎様
この写楽展は点数の多さだけをとっても貴重でした。地震があったことで会期が変更になったりで混乱しましたが、最後に滑り込めてよかったと思いました。

国芳は大阪でもやっていたみたいですね。どちらも好評なのでぜひ見たいのですが、前期は間に合うかなあ。でもデッサンだけの巻物っていうの、見たい!! 早く仕事を終えて時間を作るよう、頑張ります。他にもうひとつ行きたい美術館があって、今月はフル回転になりそうcoldsweats01

投稿: SwingingFujisan | 2011年6月13日 (月) 19時38分

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