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2011年7月29日 (金)

7月松竹座夜の部

726日 関西・歌舞伎を愛する会 七月大歌舞伎夜の部(松竹座)
7
27日 同千穐楽
夜の部は昼の部と違って全部2度見ることができた。
「車引」
松嶋屋の従兄弟3人に我當さんという松竹座ならではの組み合わせか。進之介さんを見るのは平成1911月国立劇場の「摂州合邦辻」以来かしら、あるいはその後もあったかもしれないが、印象に残っているのは次郎丸。いやあ、この松王丸もいろんな意味で印象的だったなあ。
愛之助さんの梅王は素晴らしかった。稚気に溢れ、堂々と大きい。腰の位置も低く、目玉もよく寄って荒事の面白さを満喫。荒事を見るといつも感心するのだが、足の親指を上げておくのをよく忘れないものだなあ、と今回も感心した。
孝太郎さんの桜丸は隈取がなく、それもあるのかとてもやわらかさが感じられ、これまでに見た桜丸の中で「賀の祝」に一番通じる桜丸だと思った。後で番付を見たら、東京と大阪の演出の違いだそうで、やはり大阪では前後の物語を踏まえて和事の役になっているのだとか。また、孝太郎さんの立役はこれまであまりピンとこなかったがこの桜丸なら納得。
我當さんに対する私の印象は「いい人」なので時平はどうなのかしらと思ったが、意外にも妖しげでとてもよかった。声からも「いい人」らしさは消えて、大きな実悪として舞台がしまった。
「伊勢音頭恋寝刃」
4
回目の伊勢音頭。仁左様では2回目。通しも3年前の海老ちゃんに続いて2回目。その通しが非常に面白かったので、今回も期待していた。そして期待どおりの面白さであった。
幕開き、女芸人が街道で芸を見せている。これを見物している2人の男女がいかにも楽しんでいる様子で、当時の空気が感じられてよかった。出だしのこういう場面は観客がお芝居に入っていくのにとても大事だと思う。
ここへ登場する典型的なつっころばし、今田万次郎。このダメ男(悪人の画策で紛失した青江下坂という大事な刀の詮議のため伊勢にやって来ながら遊女に入れあげちゃって、せっかく取り戻した青江下坂を質に入れるなんて、どうしようもないダメ男でしょ)が上品でなんとも可愛くどことなくユーモラスで憎めないのは秀太郎さんがあまりにぴったりだから。若々しくて、相手の遊女が梅枝クンであっても全然違和感がない。もっとも梅枝クンも昼の部で書いたように、ベテランの中に入っても位負けしない落ち着きと演技力があるから。
秀太郎さんはこの後、後半で福岡貢をいじめる万野役もするのだが、これがまあ憎ったらしいこと。万次郎の愛敬とはまったく逆で、年季の入った底意地の悪さがたまらない。秀太郎さんも江戸の女将、つっころばし、意地悪仲居と3役で奮闘。
「妙見町宿屋」では我當・秀太郎・仁左衛門と3兄弟が勢揃い。我當さんは膝を追って坐らず立ち膝だったように見えたが、動作にふらつきはなかったので一安心(私も膝が悪いからついつい気になってしまった)。

話が戻るが、伊勢街道の場では、奴・林平(愛之助)もあっさり騙されて刀の折紙をすり替えられてしまう。これでもわかるように、林平はしっかりしているようでいて、案外頼りない。そして実に愛すべき人物である。愛之助さんが骨太で愛敬たっぷり、二枚目半の林平を楽しく見せてくれた。「追駈」「地蔵前」では杉山大蔵の松之助さん、桑原丈四郎の當十郎さんとともにあっちへこっちへと走り回る(お疲れ様と声をかけたくなる)。當十郎さんは空席を見つけるとそこへ坐って林平の目をごまかす。丈四郎を見失った愛之助さんはお客にその行方を教えてもらって再び追いかけっこが始まる。逃げ場を失った丈四郎は窮余の策として井戸に隠れる。「井戸の中は涼しいであろうなあ。この夏一番の隠れ場所」と言いながら。ところで丈四郎がつかまっている井戸の竹竿は、林平から逃げようとした大蔵の抜かれたままの刀が触れて切れてしまうのだが(故に、丈四郎は井戸の底へ落っこちてしまう)、千穐楽はその前に竹竿が切れてしまうというハプニングがあった。大勢に影響はないのだが、一瞬ハッとした。
ここの場面は笑いの連続だが、ちょっと長すぎる気もしないでもなかった。
「二見浦」のだんまり、密書を早く読みたくて夜明けが待ち遠しい貢、コケコッコーの声と昇る朝陽、にっこり笑い密書を掲げる仁左様、ここの場面も好き。
後半の「油屋」。ここも仁左様の笑顔が素敵である。吉田屋でもそうだが、好きな女のことを考えて微笑む仁左様は、スッキリした二枚目の中にはんなりとした柔らかさがあって、さすがの上方の味わいにうっとりする。料理人・喜助をせかせかと呼ぶのもなんか、いいなあと思った。
万野のいじめもだが、貢が耐え切れなくなったのはお紺の愛想づかしだろう。満座の中で恥をかかされる姿は佐野次郎左衛門に重なる。そこからの仁左様の凄絶な美しさは無残な人斬りであってもいつまでも見ていたいほどである。すっくと立った時の背中の反り、丸窓の障子を破って半身を出した時の姿のよさ、ほつれ毛の若々しさ、「水もしたたるいい男」とは仁左様のための言葉かとため息が出る。
時蔵さんのお紺は、偽りの愛想づかしの中に悲しみと強い決意が感じられた。悪い連中を今度はお紺がだまして折紙を手に入れ、貢に差し出した時の表情に、尽くす女の強さがみられた。仁左・時コンビには菊・時コンビとはまた違った色っぽさがあって、今後ももっともっと共演してほしいと思う。
三津五郎さんの喜助がカッコいい。伊勢ではあるが江戸前なカッコよさだった。
彌十郎さんのお鹿は2度目(最初に見たときは三津五郎さんが貢だった)。あの彌十郎さんがちゃんと女に見えるからスゴイ。
吉弥さんの千野は、「伊勢街道」では意地悪に見えなかったのに、「油屋」では万野ほどではなくてもかなりの意地悪女であった。今回、吉弥さんは昼の部では「江戸唄情節」で弥市夫婦の小田原住いの隣人の気のいいやさしいおばあさん役。一瞬誰だかわからなかった。情が感じられてとてもよかったのだけど、ちょっともったいないなと思った。
<上演時間>「車引」30分(16301700)、幕間25分、「伊勢音頭・序幕」60分(17251825)、幕間30分、「伊勢音頭・二幕目」80分(18552015

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