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2011年7月28日 (木)

7月松竹座昼の部②

726日 関西・歌舞伎を愛する会 七月大歌舞伎昼の部(松竹座)
7
27日 同千穐楽
いよいよ昼の部一番のお目当て。
「江戸唄情節」
泣いた、泣いた。いい話だった。悪い人が1人も出てこない。みんな心があたたかい。そうして、みんなカッコいいのだ。
ヤクザだった男が三味線の腕を見込まれ足を洗って三味線弾き・弥市となる。弥市の腕は人気役者・坂東彦三郎(ややこしいけど、演じるのは坂東三津五郎)に気に入られ、彦三郎の「連獅子」には欠かせない存在となる。弥市には米吉(時蔵)という柳橋芸者の恋人がいるが、米吉は土地のヤクザ小揚げの七兵衛(彌十郎)の思い人である。さて2人はどうなるか。
序幕第一場「芝居茶屋伏見屋」

浮世絵を貼った粋な屏風が置いてある芝居茶屋の二階。三味線の音が流れてくる。その音がやんだと思うと、上手の襖がぱっと開いて、仁左様が飛び出してくる。そのカッコよさ。弥市は病気の師匠のかわりに弟子たちに稽古をつけていたのだが、稽古に熱が入りすぎて苛立ち癇癪を起こしているのである。それを「やくざから足を洗っても性根までは洗ってないね」と注意し諭すのはこの芝居茶屋の女将(秀太郎)。この女将がまたカッコいい。秀太郎さんはセリフをちょっと探しながら喋るようなところがあって、それが逆に厳しさの中の真心を感じさせる。
ここの場面は後の伏線になっているかもしれない。つまり、弥市はここで「心まで洗います」と女将に誓うのだが、結局のところ洗っていなかったことになる。
序幕第二場「柳橋河長の離れ座敷」
ほろ酔い千鳥足の米吉が弥市の待つ離れへやってくる(時様、はっとするほど艶やかな美しさ)。しかし弥市はいない。不審顔で探す米吉。すると桟橋につながれた屋形船の窓から弥市が顔を覗かせる。その風情がなんともいえず、浮世絵で屋形船の窓から見えるのは女性だが、そういう世界が髣髴とする。弥市は米吉に「三味線について考え事があるからお前がいるとジャマだ」などと意地悪を言うから米吉は「他に好きな女ができたんならそう言えばいいじゃないか」とやり返す。実は「おめえの来ようが遅いからシャクにさわったんだよぉ」。その時に仁左様のにやっとした顔ったら、胸キュンである。美男美女は痴話喧嘩もサマになるねえ。
杯を酌み交わす2人。そこへ、なんと七兵衛が。覚悟を決めて七兵衛に斬られようとした2人だが、駆けつけた彦三郎が必死で懇願し、2人の仲は七兵衛に認められる。ただし今すぐ江戸を出て二度と戻って来るなという条件付きである。私はここに七兵衛が本当に米吉に惚れていたんだなという気持ちを感じた。自分が本当に好きな米吉が本当に好きな男と一緒にいるほうが幸せならそれを叶えてやろうという愛情。江戸から2人を追放したのも、決して悪人だからなのではなく、ヤクザとしての筋を通しただけなのだ。

第二幕「相州小田原の侘住居」

2人は彦三郎の厚意で上方へ向かうものの、昔の悪いクセが出た弥市は箱根でいかさま博奕に手を出して一文無しとなり小田原へ流れ着く。小田原で弥市は三味線を教えたり、料理屋の客の座興に三味線を披露したりして、女房・お米(米吉)と細々と暮らす。しかしお米は重い病に冒されてしまう(結核でしょう)。やつれた時様も美しい。
ある時、上方からの帰りに小田原へやってきた彦三郎一行は、上方で探しても見つからなかった弥市の行方をやっと突き止める。弥市の家を訪ねてきた彦三郎の弟・市村家橘(これもややこしいけど、演じるのは片岡愛之助。彦三郎とか家橘とか言われるとはじめのうちはどうしても現・彦三郎、現・家橘の顔が思い浮かんじゃって)と番頭の平助(竹三郎)。弥市とお米の境遇に驚きながらもあたたかい心持が見えて泣かせる。竹三郎さんが素晴らしくよかった。気がよくて世話焼きでお喋りで、いかにも番頭らしい。セリフに気持ちが籠もっていて、竹三郎さん自身のあたたかい人柄がそのまま伝わってくるようである。それに、竹三郎さん、若い。
家橘と平助が訪ねてきたとき、弥市は陰ながら彦三郎に詫びてくると言って彼らの宿に出かけて留守であった。戻ってくると、部屋は真っ暗、明かりもついていない。手探り足探りで行燈のところへ行き灯を入れる弥市。このとき、仁左様は本当に火打石で火をつけているようであった(千穐楽はなかなか火がつかず、ハラハラした)。
明かりがつくと、部屋の真ん中に倒れているお米。弥市に抱き起こされたお米は今聞いた話を弥市に語る。彦三郎は弥市の三味線がないからと江戸で「連獅子」を封印してきたが、このたびよんどころない事情で「連獅子」を演じなくてはならなくなったのだ。お米は、先の見えている身、彦三郎の踊る「連獅子」で三味線を弾く弥市の姿をもう一度見たいと言う。弥市はお米の命が長くないことをずっと隠して励ましてきたのだが、ここで、お米がそれを知っていることがわかる。夫婦の愛情が胸を打つ。夫は妻を懸命に看病し妻はそれを有難くもすまないと詫びる。先が長くないお米のために江戸へ戻ろうと決める弥市と、嬉しそうなお米。肩寄せ合って暮らす夫婦の愛に翳りなし、仁左様カッコよすぎで抱き合う2人に涙涙。

大詰は村山座。第一場「村山座芝居前」、第二場「村山座の舞台」、第三場「元の村山座の舞台」。
何年ぶりかの「連獅子」ということで満員御礼の村山座。せっかく本所から見に来たおじいちゃんと孫娘が追い返されるのが本当に気の毒だった。
舞台では「宗問」が演じられ、弥市をはじめとする長唄連中が演奏している。劇中劇だから、本物の三味線・長唄・鳴り物さんたちも化粧をし、衣裳をつけている(う~ん、化粧をすると誰が誰やらよくわからない)。
七兵衛のジャマが入った後、舞台番が「お静まりを、お座りを」と観客席に向かってお願いするのは「幡随長兵衛」の「公平法問諍」を思い出す。あれも村山座だったっけ。舞台番の橘三郎さんがいい味わいである。
舞台の再開は大薩摩から。仁左様の三味線の腕は私にはよくわからないけれど、手の動きを見ていると相当難しい曲なんだろうなと思う。何度も拍手が湧いた。なんと「まつしまやっ」の他に「弥市!」という掛け声まで。
ここで三津五郎さんと愛之助さんの「連獅子」が一部ではあるが見られるのはご馳走である。ラブリンの毛振りは途中から三津五郎さんを無視して突っ走っていたが、キレのいい動きがカッコよくて、ちゃんと全部見たいと思った。
「連獅子」が終わり定式幕が閉まり、場内暗くなった後、再び幕が開く。終演後の舞台である。戸板にのせられて舞台中央に運ばれたお米は満足げに息を引き取る。七兵衛は覚悟を決めていた弥市にお米が死んだので恨みは残らないと言って赦し、お米の遺体に手を合わせる。弥市はこの先の生涯、三味線を女房に精進することを誓うのであった。泣けて泣けて、涙とでぐしゃぐしゃ、周りからもずいぶん洟をすする音が聞こえてきた。
この場面で、後見役の三久太郎さんが弥市や彦三郎、七兵衛の一つ一つの言葉に反応し、本当に泣いているみたいな表情で、とても印象的だった。
仁左様はとにかく素敵で、開き直ってタンカを切るのもカッコいい、病気の女房の世話をあれこれ焼くのもカッコいい。時様、じゃないお米さんは幸せ者だ。敢えて難を言えば弥市にはカッコよすぎるところだろうか(荒川の佐吉なんかもカッコよすぎる)。もちろんケチをつけているんじゃないのよ、仁左様のこういう役は大好き。
そういうカッコよすぎる仁左様を守る役はそれを超える大きさがなければいけない。三津五郎さんの彦三郎は適役だった。脇の役でありながら大きな存在感があり、ヤクザ相手にひるむことなく弥市を守る三津五郎さんもカッコよかった。
そして彌十郎さんの七兵衛、こちらもヤクザの親分としての大きさがあり、2人の仲を認めるのも、舞台を続けさせるのも、約束を破った弥市を赦すのも、「おお、カッコいい」と口から出そうになった。
あ~、本当にいいお話だった。配役も適材適所で大満足、幸せ。
<上演時間>「皿屋敷」45分(11001145)、幕間30分、「素襖落」50分(12151305)、幕間25分、「江戸唄情節」110分(13301520。二幕目と大詰の間に5分の幕間あり、従って細かくいうと序幕・二幕目は13301445、大詰は14501530

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コメント

こんにちは!
レポを拝見してまた涙が出そうになりました。

私が行ったときもあちこちからすすり泣きの声が聞こえてきていました。
私の横は40代くらいの男性でしたが、その方ももう号泣でしたよ。

お米の最期の場面、仁左衛門さんや愛之助さん、彌十郎さんはもちろんですが
後見役のお二人のこともかなり入り込んで見ていました。
後ろに控えているみなさんが本当に泣きそうになっているのを見て、余計私も泣いてしまいましたよ…。

本当にいいお芝居でしたね。
自分のところでも言ったのですが、「江戸」って題に入ってるのだから
ぜひ、ぜひ!(←しつこい)江戸でも上演してほしいですね。

投稿: あねご | 2011年7月29日 (金) 13時00分

あねご様
こんばんは。コメントありがとうございます。
私も思い出すと、今でも泣いてしまいます。登場人物の1人1人に情があり、それぞれの人物像が出番の多少にかかわらず非常によく描かれていたと思います。
ぜひぜひお江戸で上演してほしい、と私も強く願います。

投稿: SwingingFujisan | 2011年7月29日 (金) 23時30分

こちらにも失礼いたします…
私も今読みながら(もう三回目)また泣いてしまいましたcryingまたあの世界に浸れました。どうもありがとうございます!
仁左さま素敵でしたね~lovely時さまとホント、お似合いの二人heart04
そしてSwingさまも書いて下さってる通り、全員適材適所でしたね~この配役でお江戸で見たいですねっ!!
ホント、遠征してよかったです!!

投稿: 七子 | 2011年7月31日 (日) 10時13分

七子様
こちらにもありがとうございます。
「江戸唄情節」は川口松太郎の原作もいいのでしょうが、仁左様と時様のコンビがまさにあの世界に連れて行ってくれましたね。
すぐにはムリでしょうが、いずれお江戸でもきっと上演してくれることを期待しましょう。
私も遠征してよかった!!

投稿: SwingingFujisan | 2011年7月31日 (日) 13時12分

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