« 梅雨明け | トップページ | このほうがこわい »

2011年7月10日 (日)

もう一度見たくなっちゃった7月演舞場夜の部

79日 七月大歌舞伎夜の部(新橋演舞場)
用事があって銀座で降りたので演舞場へ向かうだけで汗だく。しかし1階席は涼しく、しまいには少し寒くなったほど。3階席のためにはそれくらいでないといけないのだろうけど、うまく調節できないのかしらね(3階席は暑いもの。実ははじめ3階を取っていたのだけど、どうしても「春興鏡獅子」を1階で見たくなって、3階席は友人に譲り、私は取り直したのcoldsweats01)。
「吉例寿曽我」
見たことあるような、ないような…平成183月に愛之助の八幡三郎、進之介の近江小藤太で見ていた。筋書き引っ張り出したら何となく記憶が甦ってきた。
さて、鳥屋から猿四郎さん(奴・早平)と猿三郎さん(奴・色内)が勢いよく飛び出してきて浅葱幕の前で秘密の一巻を巡って争う。一巻は色内が奪い、やがて色内の主人・八幡三郎(猿弥)の手に渡る。そして今度は八幡三郎と早平の主人・近江小藤太(右近)が一巻を巡って争い、立ち回りとなる。この後、一巻は工藤祐経の手に。この一巻は、近江小藤太の工藤祐経に対する謀反の証拠となる重要なものなんだそうだ。曽我兄弟の敵である工藤側にもこんなお家騒動があったのねえ。この結末はどうなっちゃうんだろうか、「対面」ではわからないし。
猿三郎さんと猿四郎さんの立ち回りはキレがあり、澤瀉屋はやっぱりいいなあと思う。浅葱幕が振り落とされるとそこには石の大階段が。近江小藤太が花道から、八幡三郎が上手から出てくる。立ち回りのために2人は下駄を脱ぐのだが、右近さんの脱ぎ方がとてもきれいでカッコよくて、足元に惚れ惚れした。
私は大好きな2人の立ち回りにわくわくしていたけれど、客席はなんとなく静か。でもがんどう返しになると「おお~」とどよめきが起こった。猿弥さんは一度も足元がふらつくことなく、最後の最後まで踏ん張って大拍手。
がんどう返しで背景が富士に変わり、大薩摩が入る。舞台には赤い消し幕。けっこう大薩摩が長かったので、消し幕を掲げる3人は大変だなあと思った。消し幕が取り去られた後、大ゼリから工藤祐経一行が姿を見せる。梅玉さんの祐経は大きさがあり、笑三郎さんの大磯の虎は動きや形がきれい。
短いながらとても楽しめる演目であったが、照明が煌々と明るすぎて、だんまりの気分が出ないのが残念であった。
「春興鏡獅子」
5
月に菊之助さんの見事な舞を見てしまったからどうしても比較したくなるが、海老蔵と菊之助では全然タイプが違うし、その比較はすべきではないだろう。
海老ちゃんはやっぱりスリムになったよなと思ったのも束の間、「やっぱりデカい」。前半の踊りは大らかさがありメリハリがきいて、海老蔵の弥生として見るべきものがあったのではないかと思う。扇使いに躊躇いのない自然さ、きれいさがあり、海老蔵さんの努力が感じられた。でも、弥生がものすご~い美形には見えないのが不思議。
後ジテの獅子は美しく、とにかく勇壮、海老蔵オーラにやられた。見ていてドキドキしてしまった。ジャンプが高く、観客も「おお~」。後ろ向きの花道引っ込みは毛を自分の右手に寄せていた。毛振りは70回くらい? 途中でわからなくなった。回数が多いと客席は盛り上がるけれど、50回程度でやめておいてもいいんじゃないかしらと思った。
亀鶴さん(関口十太夫)の声がいつもと違うように聞こえてきた。
獅子モノの鳴り物はやっぱり傳次郎・傳左衛門兄弟よね。この2人が出す音、吼える声を聞くとぞくぞくと興奮が湧き上がってくる。傳次郎さん、サマーカットになっていた(^_^)

「江戸の夕映」
前に海老蔵、松緑、菊之助で見た時の印象から、堂前大吉は本田小六と同年輩なのかと思っていた。だから團十郎の大吉?と「?」付きだったのだが、これが意外にもとてもよかった!!
ちょっとセリフが怪しい時もあったものの、粋で大らかであたたかい人柄、「無駄な殺戮をしなくてすむ」「女子供が逃げ惑わなくていいんだ」など、戦が終わって本当によかった、だから自分は武士でなくなったこと頓着がないという気持ちが素直に伝わってくる。小六とお登勢の仲を心配して何とかお登勢の思いを遂げさせてやりたいと心を砕くのにも、同年輩ではなく年長者としての温かみが感じられる。品川沖へ出かける小六に「出かけちゃいけねえ」と止めるのが、私の中で例の事件のことと重なったのは、芝居が終わってからである。
福助さん(おりき)とのコンビもなかなかよく、2人の間に通う情がからっとして笑わせたりしながらしみじみさせる。福助さんは最初の酔っている時はいつものようにあまり品がなくてガッカリしたが、小六が品川沖へ出るのに「オレがついていってやるよ」ときっぱり立ち上がったのは実にカッコよく、以降の福助さんは芸者の粋と意気が素敵だった。
お登勢(壱太郎)とその父・松平掃部(左團次)とのやりとりには目頭が熱くなった。武士の高潔な矜持をしっかりと示した左團次さんの、娘に対する愛情がしみじみ・ほのぼの伝わり、自分も父を思い出してじ~んとした。また父を敬愛する壱太郎クンも可憐であった。
小六、大吉、松平掃部、幕府の武士であった3人の生き方が心に響く。小六の役は大佛次郎が9代目海老蔵に当てて書いたそうだが、当代海老蔵にもぴったり。新しい時代に馴染めない小六の気持ちもよくわかる。蕎麦屋の場面ではどうしたって直侍を思い出す。最後、大吉が「受けてくれねえか」と差し出す杯に俯きながらそっと手を出す小六にほっとする。そして駆けつけてきたお登勢と見つめあう海老蔵さんの目の表情が刻々と変化していくのに思わず涙が滲んだ。
早々と小六に斬られてしまう赤毛の薩摩武士・黒岩伝内は亀鶴さん。亀鶴さんが出るんだったら絶対そんな役だろうなあと思っていたらやっぱり…。実に憎ったらしくて、さっさと斬られてもしょうがないか…。
蕎麦屋では橘太郎、芝喜松の夫婦に、萬次郎のおきんとくれば、嬉しい限り。萬次郎さんは三枚目としての本領発揮(「決闘高田馬場」を思い出しちゃった。あそこまでではないけれど)。そばで暗い面持ちで飲んでいる小六との対比が面白い(ちゃっかりしっかり元気に生きている人と、思うように生きられない鬱屈を溜め込んでいる人と)。
夜の部は1回きりなんだけど、もう一度見たくなっちゃったな。でも、相変わらずの厳しい日程。結局ムリかなあ。
<上演時間>「吉例寿曽我」29分(16301659)、幕間20分、「鏡獅子」57分(17191816)、幕間35分、「江戸の夕映」103分(18512034

|

« 梅雨明け | トップページ | このほうがこわい »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisan様
夏本番、暑いですね。昨日の夜の部、私も見てきました。予想どおり、昼の部よりずっと面白いですね。
「鏡獅子」、海老蔵、本興行3度目とのことですが、何故か初役のときからすべて見ています。数年前の正月公演と比較して着実に進化していると思います。前シテの振りの連続性、なめらかさの点で確実によくなっていました。女形の諸優との比較は無理ですが、後シテの勇壮さ、見得、眼光の鋭さは、その不満を補って余りあります。海老蔵の鏡獅子は今後も出す価値はあると思います。毛ぶり、雛壇へ上がってからの回数、100回は超えていたと思うのですが・・一所懸命数えたのですが、数え違いでしょうか。(こんなに振るのは初めて見ました。)
批評家諸氏はFujisanさん同様、多く振ることに批判的ですが、私は結構、その点は寛容なのです。
 「江戸の夕映え」は昔、元祖、三之助のトリオで見ました。主役三人は勿論、脇役が良くかけた作品だったなあという記憶があります。今回印象に残ったのは、私も萬次郎、橘太郎ですが、老船頭役の新蔵?も江戸世話狂言の味があり良かったですね。あと、男女蔵もおかしかったですね。女性客は目のやり場に困ったのではないでしょうか。

投稿: レオン・パパ | 2011年7月10日 (日) 13時13分

レオン・パパ様
こんにちは。昼の部に続いて夜の部もニアミスでしたのね(^_^)
「鏡獅子」はそういえば私も本興行の3回とも見ていました。襲名公演の時の「鏡獅子」はよく覚えていないのですが…。弥生も海老蔵なりのよさがありましたね。獅子はもうただただ素敵で、海老蔵という稀有な役者の魅力を満喫しました。毛振り、すっごいエネルギーですね。100回超えですか!! もうやめるかと思うとまだ続いて。自身に100回という目標を課したのかもしれませんね。批評家の間でも、良くも悪くも回数が話題になっているのですね。回数が多いのは私も嬉しいのですが、正直後半はこちらが少し疲れてきましたcoldsweats01

「江戸の夕映」の新蔵さん、取り上げませんでしたが、私もいい味を出していると思いました。舟を出すのに立ち上がる心意気に、物陰から小六が薩摩武士を斬るのをじっと見ていた時の船頭の気持ちが表れていて、ここもちょっと胸が熱くなりました。
今回の「江戸の夕映」はおっしゃるように、江戸世話物の味わいがあって、とてもよかったです。
男女蔵さんね、私はオペラグラスでしっかりお尻を拝見しました。後姿は割ときれいだと思いましたが、前はちょっとおなかが…。
前回も男女蔵さんはあの役だったのですね(^_^)

投稿: SwingingFujisan | 2011年7月10日 (日) 15時39分

毛振り、回数はどうでもいいけど、軌跡がなあー。
でも、舞台に戻れて水を得た魚みたいな感じがしました。うれしそうだからか、なんか狐忠信っぽい気も。w
また見に行きたいです。
どうなっていくか見届けたくなるんですよねー。

投稿: urasimaru | 2011年7月11日 (月) 22時42分

urasimaru様
毛振りは回数が増えると乱れが生じるのかもしれませんね。
そうそう、確かに狐忠信っぽい嬉しさがあったかも(^^)
私ももう一度見たい!! 大阪行きとのジレンマですわ~。

投稿: SwingingFujisan | 2011年7月12日 (火) 11時40分

こんにちは☆
先日演舞場昼・夜行ってきました!海老さま復帰公演ですもの♪
吉例寿曽我は平成18年3月のって歌舞伎座でしたでしょうか。。。配役(というか愛之助さん)伺い、うっすら記憶が…
江戸の夕映えは初めて見たのですが、海老さまに合ってましたね!
私も左團次さんと壱太郎くん親子のシーン、すごく好きです。なんか涙がじんわりしちゃいますよね。
團十郎さんもいい味出してらして、最後はほんわか気分で帰れました♪
ところで、この三連休に一足お先に松竹座行ってまいりました☆早くSwingingFujisanさまとおしゃべりしたいです!
仁左さまはもちろん♪♪♪素敵でしたし、秀太郎さんも最高でしたが
時さま梅枝くん親子にかなりメロメロになってしまいましたわ~ん♪♪♪
オススメのキムカツもいただきました。私はゆず胡椒で!美味しかったです。


投稿: 七子 | 2011年7月19日 (火) 19時12分

七子様
おはようございます。コメントありがとうございます。
曽我は歌舞伎座でした。私も「ああ、何となく」程度の記憶でしたが…筋書きの写真ってやっぱり大事なんだなあと思います。写真で記憶が甦るということもあるんですもの。
「勧進帳」に惹かれて昼の部をもう一度見るのですが、夜の部がとてもよくて、こちらも予定に入れておけばよかったわbearing

わ~い、松竹座、いらっしゃったのですね!! 私も早くお喋りがしたいですっdash

キムカツは、一度閉店しての再開店ですから気合入っていたかしら。よかった、美味しいと言っていただけて。私も今回はキムカツに行ってみようかなと思っています。ゆず胡椒にネギ塩、梅しそ…迷いますぅ~happy02 

投稿: SwingingFujisan | 2011年7月20日 (水) 10時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/40753350

この記事へのトラックバック一覧です: もう一度見たくなっちゃった7月演舞場夜の部:

« 梅雨明け | トップページ | このほうがこわい »