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2011年7月13日 (水)

絵師も彫り師も摺り師もすごい:国芳展後期

712日 「歌川国芳」展(太田記念美術館)
前期を駆け込みで見た反省を踏まえ、後期は少し余裕をもって行ってきた。ただし、今の時期は後期の前半(18日まで)。後半は20日~28日で展示替えがあるのだけど、行かれないかもしれない…。
さて、後期はお待ちかね戯画・狂画が登場。ほかに美人画、洋風画が見られる。
前期同様、後期も最初は靴を脱いで畳の間で鑑賞する肉筆画。
①肉筆画
はっとさせられるのは「雪中屋根舟美人図」である。屋根舟での宴席の最中に酔いで火照った身体を冷気に当てようとしたのだろうか、ふっと女性が簾を上げて外を眺める一瞬。美しい瞬間だと思った。
「役者夏の夜図」は、前期の6枚続錦絵「両国夕涼之図」を思い出させた。この絵は人物にも舟にも影がついているのが印象的。そういえば「両国夕涼之図」には影はない。
「舌切リ雀図」、「甲子大黒図」はささっと描いた感じが軽やかで、こんな風に筆が運べたら楽しいだろうなあ、と全く絵心のない私は激しく羨ましく思った。
②戯画・狂画
人体で顔を構成するなど、有名な作品がいっぱい。地下のビデオでは実際に人体で顔を作る実験をやっていたが、あんまりピンとこなかった。そのことからして、国芳のアイディアはすごい。どうしたらそんな発想が湧くのだろう。
また贅沢禁止令のために役者絵が禁止になれば、猫を役者に見立てたり子供の落書きのように見せかけたりして、幕府に文句を言わせないそのユーモアたっぷりの反逆精神にも感銘を受ける。戯画についてはあねご様のところでもお楽しみください。
「其まゝ地口猫飼好五十三疋」は東海道五十三の宿場+日本橋+京都を、猫と言葉遊びで描いている。たとえば藁で縛ってある鰹節の中から2本を引っ張り出した猫:二本だし⇒日本橋。ネズミに餌をとられてへこ寝する猫:へこ寝⇒箱根。尾が2つに裂けた猫:おがさけ⇒岡崎(三毛猫は10年経つと尾が裂けて化け猫になるんだとか。やっぱり岡崎は化け猫なんだねえ)等々。そして最後はネズミを口に咥えた猫:ぎゃう⇒京。
「かさねのぼうこん」は戦前から行方不明になっていて去年、80年ぶりに都内で確認された絵だそうだ。かさねの歯はふんどしを締めた人のお尻を並べてある。ほんと、すごい発想だわ。かさねの恐ろしさに震える人々は頭は1つで体が複数。そういう表現によって慌てふためく様子がよく表されている。
「金魚づくし」シリーズはあねご様によれば「ぽんぽん」が新しく発見されたそうだが、今回の出品は「酒のざしき」。蓮の葉を盆に、タモを三味線に浮かれる金魚たち。そのまわりで囃し立てるおたまじゃくしたち。楽しい楽しい。
影絵とその実体の差が楽しく驚かされる「其面影程能写絵」は、たとえば影を見ると金魚なのに、その実体は狸の八畳敷につぶされた狩人だったり、影は海老、実体は陸釣をしている釣り人の姿。
「両面相」は1つの顔を上下逆さにすると別の顔になる。たとえばだるまの逆さは外道、とくさかり(能の老爺)は伊久(意休)になるといった次第。上から見たり下から見たり飽きない。

狸や福禄寿、天狗など、11枚見ながら思わずくすりと笑わずにいられない。
もう紹介しきれないからここらで終わろう。

③美人画・風俗画
目を引くのは「山海愛度図会」の「ヲゝいたい」。勢いよく飛びついてきた猫、「おお痛い」と顔をそらす美人の絵は、自分の経験と重なって微笑ましい(私の場合は犬だったけれど、痛くたってかわいいのよね)。3枚続きの「両国納涼花火」、「江戸名所草木尽 首尾の松」は2艘の舟に乗る美女たちが描かれている。前者は屋根舟を舳先から描いており、後者は屋根船と猪牙舟の2艘がぶつかったところを描いている。目の前に本当にこういう図が見えるようだ。「暑中の夕立」がよい。土砂降りのラインがとても効いている。
「賢女烈婦伝 大納言行成女」は行成女が蝶の絵を描いてうたた寝をしていると、猫が絵の蝶をとらえようと紙を破ってしまったという図。「譬論草をしへ早引 と 砥」は母親の膝の上で髪を剃ってもらっている子供、しかし子供はじゃれて手を出す猫と早く遊びたくてしょうがない。どちらも何気ない時が生き生きと描かれていて魅力的。
④洋風画
例の、スカイツリーが描かれていることで話題になった「東都名所 浅草今戸」。スカイツリーらしきものが実は何であったかなんてどうでもよくて、悠々たる開放感がたまらない。
国芳はオランダの「東西海陸紀行」という画集からインスピレーションを受けたそうで、その影響がこれまでの絵にも現れている。たとえば、肉筆画で紹介した「役者夏の夜図」の影もそうである。このコーナーでは、原図と国芳の絵が比較されているが、そういう画集を見て画想を膨らませる国芳の姿が見えるようでちょっとドキドキする。この時代、西洋画に触発された浮世絵師はけっこういたんだろうな。「五百羅漢」の狩野一信もその1人であったっけ。
「唐土二十四孝 大舜」は「東西海陸紀行」中の「地図 ブラジル」に描かれた天使に基づいているが、これが銀座・天賞堂の天使像を思わせる。
日曜美術館で取り上げていた「忠臣蔵十一段目夜討の図」は同「バタビアの領主館」の構図を用いている。バタビアのこの絵を見て、忠臣蔵討入の絵に応用しようという発想は驚くばかりである。確かに他の浮世絵に比べて異質ではあるが、原画を知らずに赤穂浪士の夜討ちだと言われればそのように見えるから不思議である。
とにかく、面白い絵がたくさんあって、思いがけず時間が経っていた。戯画・狂画などは父が好んだジャンルであるし、元気なうちに一緒に見ればよかったと悔やまれる。
それにしても、国芳の絵がスゴいのはもちろんのこと、その絵の勢い、繊細さ、味わいを失うことなく作品に仕上げた彫り師、摺り師の腕もまたスゴいと感嘆する。実は前期の作品を見て、「これ、ほんとに全部版画なの?」とわからなくなってしまったくらい。日本の文化って素晴らしい!!

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