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2011年8月23日 (火)

とにかく楽しかった「博奕十王」:第9回亀治郎の会

819日、21日 第9回亀治郎の会初日昼の部・千穐楽夜の部(国立劇場大劇場)
遅くなってしまったけれど、次の演目を。
「博奕十王」
非常にテンポよく、文句なく楽しめた。
ここは冥途、六道の辻。近頃は仏の教えを守って極楽へ行く人間が多いので地獄は飢饉状態にある。そこで閻魔大王は自ら罪人を地獄に落とそうと獄卒を率いて六道の辻で待ち構えている。というところから始まる。
初日は、長唄・鳴り物の演奏陣も、獄卒(猿四郎・弘太郎)も二畳台の閻魔大王(亀鶴)も大ゼリに乗って舞台に上がってきたのだが、千穐楽は板付きであった。いつ変わったのか、あるいは昼夜で変えてあるのか。客席は幕が上がるまで暗闇に包まれる。千穐楽はそのまま幕開きまでずいぶん長い時間待たされたから、その辺に原因があったのかな、なんて思ったりもした。また、「六道の辻」と刻まれた石標も初日は後から出てきたが、千穐楽は最初から舞台に置かれていた。
面白いのは演奏陣も後見さんもツケ打ちさんもみんな頭に白い三角布をつけていること。こういう遊び心が客を地獄の世界に連れて行ってくれる。
さて、この六道の辻に博奕打ち(亀治郎)がやってくる。これも初日と千穐楽では出の方法が違った。初日は花道スッポンから、千穐楽は鳥屋からの登場。亀ちゃんは白い経帷子を着ているが、その中の着物は博奕打ちらしく花札、鳶ズボンみたいな下(なんて言うんでしたっけ)はサイコロが染め抜かれている。七三で、「死後の道行見物せんと国立劇場へお越し頂き、俗名市川亀治郎、厚く御礼申し上げます」というような挨拶をしてまず笑わせる。そして手に持った花を「あなたにおすそ分け」と客にあげていたけれど、これは両日とも4列目の花道脇の人だった。
待ち構えていた閻魔大王だけれど(最初、亀鶴さんだって、わからなかった。真っ黒い頬髯と、両側にピンと張った大きな顎鬚に顔が覆われているんだもの。ちょっと亀蔵さんに似ていたな)、博奕打ちのほうが一枚上手。まずは長旅でのどが渇いたからと酒を求め、その肴に自分の身の上を語る。それによれば地獄に落ちたのは博奕仲間との喧嘩で命を落としたからだそうだ。
閻魔一派が浄玻璃の鏡にこの男の前世を映し出してみると、様々な悪行が知れる。人の金品を奪うのは罪悪だという閻魔に対し、博奕打ちは博奕は勝負事であり娑婆の遊びであると反論する。その話に、閻魔は自分も博奕をやってみたくなる。そこでサイコロの目を当てる博奕が始まるが、閻魔は頑なに「一」の目に張り続け、負け続ける。サイコロが駄目だとなって虎拳を始めるが、それも負け。そのたび、笏だ、冠だ、浄玻璃の鏡だ、着物だと、獄卒まで巻き込んだ閻魔側は賭け物すべて身ぐるみ巻き上げられてしまう。しまいには極楽行きの通行手形まで。 

という話で、亀ちゃんと亀鶴さんの博奕の掛け合い踊りが楽しい。後見の段之さんが操る差し金の先の大きなサイコロを亀ちゃんがサッカーボールのように蹴ったり、バレーボールのようにレシーブしたり、野球のように打ったり…千穐楽にはこの時、亀鶴さんに気の毒なハプニングが起こり、それからもちょっと後を引いてしまったけれど、それでも2人の踊りは昨年浅草の「悪太郎」を思い出させる楽しさであった。亀鶴さんはいかめしくもちょっと間抜けな閻魔様をユーモラスに踊り、亀ちゃんはいかにも目端が利きそうな博奕打ちにぴったりの軽妙な踊り。そこに加わる猿四郎さん、弘太郎さんの獄卒もこの演目を楽しんでやっている様子が窺えて、見ているこちらも笑いっぱなしな感じ。
まんまと極楽行きの金札までせしめた博奕打ちは意気揚々と楽しげに花道を引っ込んでいく。何とも情けない顔でそれを見送る閻魔たちは、ちょっと可哀想だったな。

 
上演時間は短かったけれど、「ああ楽しかった」と劇場を後にできるのは幸せだなあと思った。
追記:カーテンコールは1回のみ。亀ちゃん1人が出てきて、いつもの睨みまわすような視線のあと、舞台中央に座り、お辞儀。幕が下りた後も拍手は鳴りやまなかったが、もう幕が上がることはなかった。

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コメント

楽しかったですね。このお芝居は「勧進帳」のパロディになっているのですね。土曜の昼はせり上がりでしたよ。

投稿: うかれ坊主 | 2011年8月24日 (水) 01時17分

うかれ坊主様
こちらにもありがとうございます。
勧進帳のパロディ、というのは面白いですねsmile

千穐楽は、機械類に何か急なトラブルがあったのかもしれません。暗くなってから幕開きまでかなり長い時間かかったのは、急遽板付きに変更したからでしょう。やはり、せり上がりに比べてインパクトは弱いように思いましたが、その分、出演の皆さんが力いっぱい演奏し、演じ、で本当に楽しかったです。

投稿: SwingingFujisan | 2011年8月24日 (水) 03時00分

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