« 最古映像よりアルベール・カーンの名前に驚く | トップページ | 納得のいかない敗戦にも悔しさ湧かず »

2011年8月 6日 (土)

まさに「今 美術の力で」

85日 「今 美術の力で」(東京藝術大学大学美術館)
「空海と密教美術展」(国立博)→「今 美術の力で」(藝大)→「孫文と梅屋庄吉」(国立博)の予定だったが、久々の暑さで美術館3つを巡る余力が体になく、孫文は次の機会へ。そして感想は藝大から。以前、線描画展を同じ藝大美術館で見たときに、とてもいい企画なのにガラガラでゆっくり見られたものだが、今回も空海の混雑を思えば、もっとこちらへも足を運んでほしいなあと思った(21日までやっています)。
東日本大震災被災地の美術館から提供された作品たちの展覧会である。
セクション1へ入る前にまず「合掌」(佐藤静司・郡山市美術館)が迎えてくれる。托鉢をする僧の像で、柔和さと厳しさが感じられる。私も心の中で合掌して展示室へ。東北ゆかりの作家たちの作品群。
「カルピスの包み紙のある生物」「髑髏の静物」(ともに中村彝、茨城県立美術館)は関東大震災後に描かれた絵で、この時期に絵画を描くなどどうかと葛藤しながらも「助かった命を意義あらしめるものは制作以外にない」と取り組んだ作者の生と死への意識が強く伝わってくる。
「雪を踏む」(大沼かねよ、宮城県美術館委託)は色鮮やかに力強く、北国の生命力が心を押す。いい作品だ。
「祈」(荘司福、宮城県美術館)はイメージは違うのになぜか井上ひさし「雨」のおたかを思わせた。
「山あるき十一月」(本田健、岩手県立美術館)は、まるで写真のような絵画。大きなその画面は、まさに自分がその中に入って下草や枯れ枝を踏み分けながら山を歩いている気持ちにさせてくれる。
「雪待つ山」(吉田清志、岩手県立美術館)は、鮮やかな黄色、オレンジ色でごつごつした山を表現したスケールの大きな力強い作品。勇気が湧いてくる。
「西へ」(斎藤隆、宮城県美術館)は不気味な死を思わせる3人の人物が手を取り合って西へ向かって走っている(飛んでいる?)。黒の濃淡、独特の世界である。
セクション2は岡倉天心コーナーとでも言おうか。天心のもとで学んだ木村武山(「小春」茨城大学)、横山大観(「海暾」「朝霧」、茨城県近代美術館)の作品。そして平山郁夫「日本美術院血脉図」(茨城大学)では天心と思われる白い着衣の人物が中央馬上で手を挙げている。
津波で消失した貴重な六角堂のあった周辺の風景は塩出英雄「五浦」(茨城大学)で知ることができる。大和絵風の大らかな景色の中に、六角堂、天心邸等が点在している。
津波の爪あとの写真や引き揚げられた六角堂の瓦、天心自筆の棟板の展示もされていた(ともに茨城大学)。
この中で一際目を引いたのが平櫛田中「五浦釣人」(藝大)。道士風の帽子と着衣で、釣竿を持った人物は天心の木像で、大らかな気持ちになれる。天心が作らせたという釣り船「竜王丸」の(多分実物大)木の模型(茨城県天心記念五浦美術館)とともに、釣り人天心の生活が偲ばれる。
セクション3は昭和59~平成10年の現代美術群。作品名だけ挙げておく。中村一美「破庵29(いわき市立美術館)、小野隆生「日付のない置き手紙」「みがかれた黒い靴」「男のいる部屋でⅢ」(岩手県立美術館)、佐藤潤四郎「オブジェ・手」「オブジェ・仏足跡」(郡山市立美術館)、マグダレーナ・アバカノヴィッチ「ベンチの上の立像」(水戸芸術館)、アントニー・ゴームリー「領域XⅢ」(郡山市立美術館)、河口龍夫「関係-再生・ひまわりの種とマムサスの歯」(いわき市立美術館)「関係-叡智・鉛の百科事典」(水戸芸術館)。いずれも自分の好きなように見れば楽しい。
1
つ、ラベルはあるのに作品が見当たらないものがあって係りの人に聞くと、奥にもう1つ部屋があり、そこに展示されていた。闇の中にずら~っと並べられた19までの数字が赤く点滅している。発光ダイオード、IC、電線を駆使した「カウンター・ヒストリー」(いわき市立美術館)。目がちらちらしたけれど、非常に面白かった。
後でパンフレットを読んだらセクション1は「復興期の精神」、2は「岡倉天心 日本美術の再興者」、3は「美術の力」と、ちゃんとテーマがあったのね。

出品している各美術館の地震当日の状況、その後を記したパネルを読むと、あの恐怖の中で見学客と貴重な美術品を守るための担当者の努力、そして復興への意欲が迫力をもって伝わり、実体験しているような気分になった。私は美術館というのは免震構造になっているのかと思っていたが、必ずしもそうではないようだ。免震構造をもつ展示台にあった作品には被害が及んでいないことからも、その重要性が感じられた。

何で情報を得たんだか忘れたが、必ず見ようと決めていたこの展覧会、ありきたりな表現だが、勇気・力をもらった(本当にそうで、これ以外の表現がみつからない)。まさに「今 美術の力で」である。と同時に、地方にこれだけの作品があるということは、自分の地元でもきっといい作品が見られるに違いない、これからは少し地元の美術館にも目を向けてみようかという気持ちになった。

入場無料だったので、最後にわずかながら入場料程度を募金箱に入れてきた。

このあと、3階の「台東区コレクション展」へ。藝大卒業生の作品のようで、左脚の痛みがひどくなったのでさ~っと眺めるだけにしたが、なかなか興味深い作品ばかりで、もうちょっとゆっくり見たかった、

|
|

« 最古映像よりアルベール・カーンの名前に驚く | トップページ | 納得のいかない敗戦にも悔しさ湧かず »

ミュージアム」カテゴリの記事

展覧会」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/41103729

この記事へのトラックバック一覧です: まさに「今 美術の力で」:

« 最古映像よりアルベール・カーンの名前に驚く | トップページ | 納得のいかない敗戦にも悔しさ湧かず »