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2011年8月29日 (月)

八月歌舞伎千穐楽第三部

827日 八月花形歌舞伎千穐楽第三部(新橋演舞場)
夏の終わりは花形歌舞伎で…と言いたいところだけれど、まだまだラス前coldsweats01
「宿の月」
ある夫婦のありようを描いた舞踊劇で、ゆる~く楽しめた。
祝言から出発して子供も生まれると夫は妻の理想からは程遠く、さらに月日もたつうちに、妻の心は夫から離れて、金に執着するようになる。しかし、ある出来事によって、夫は妻の愛情を失っていないことを知り、2人は手を取り合って美しい月を見上げるのでした。めでたしめでたし。という他愛もない夫婦の物語なんだが、橋之助・扇雀のコンビが息の合った夫婦を見せる。
祝言の場面・新婚時代は惚れた男と一緒になる嬉しさで殊勝、甲斐甲斐しく可愛らしい女ではあるが、カミさんのほうが強くなりそうな暗示がすでに三々九度でみられる。女が男に酒を促すのである。しかしそれは「女から始めるのは女は弱く男はいたわってくださるものだから」なんだそうである。思わず吹き出してしまった。
妻は「無駄遣いで軽はずみ、下司でものの善し悪しをわきまえない」と夫を非難し、私の気に食わないことはしないでちょうだいと誓わせる。従いはするが、心の中では悔しがる夫。そんな気のいい夫と気の強い妻が橋之助さんと扇雀さんにぴったり。扇雀さんがきれいで(今月の扇雀さん、私はかなり好き)橋之助さんもおっとりとして、2人の踊りが大らかで、クスクス笑ったり吹き出したり。「無駄遣いで軽はずみ、下司でものの善し悪しをわきまえない」夫でも愛する大事な夫――はは、たまにはこんなのもいいかな。
「怪談乳房榎」
2年前の同じ827日、勘三郎さんの「乳房榎」千穐楽(2年前もやっぱり第三部)を歌舞伎座で見たのだった。
序幕はなんてったって小山三さんでしょう。2年前も同じ茶屋の女で出演していた。90歳を超えて今なお若々しい小山三さんに、竹六役の小三郎さんが「若いねえ」、七之助さんが「いつもお元気そうで」と声をかける。客席の拍手も一番大きい。
さて、この演目、芝居としては面白くて楽しめたのだけど、話としてはどうもそんなに好きになれない。というのは、お関という女性の気持ちが摑めないからなんだと思う。磯貝浪江に脅されたとはいえ、その言いなりになる気持ちがわからない。恐怖ゆえなのか、浪江に対して多少はその気があるのか…とくに、子供をあっさりと里子に出してしまうのは納得がいかない。子供を手放したのは、浪江の近くに置いておくほうが危険だと考えたのだろうか。いや、そんな風には見えなかった。主体性がないというか、流されるというか。お関の哀れさは、追い詰められていくことによるものというよりは、自分で声を上げることのできない人物だというところにあるのかもしれない。七之助さんのお関は時々福助さんを見ているようであったが、やっぱり福助さんに教わったのだそうだ。顔は、眉がない(薄い?)せいか、目と目の間隔なんかが勘三郎さんによく似ていると思った。 

浪江は本当にどうしようもなく悪いヤツだ。色悪の浪江に獅童さんはぴったり、との期待はかなり裏切られた。まずはセリフがよくない。やたら太い声で脅すばかりで、間もまずいし、棒読みか、と言いたくなる(獅童さんのせいかどうかわからないけれど「ではお先に休まさせていただきます」はひどく気になった。「休ませていただきます」でいいんじゃない? 小さなことでも、引っかかる)。お関に言い寄るときもテンションが同じで、お関がちょっとでも浪江に惹かれるかもという魅力はほとんどない。動きもよくない。なんとなくもっさりとしていて、それだからなのか、色気もない。酔っ払いにからまれたお関を助ける出からして、ガクッときた。後半は多少セリフにもメリハリが出てきたが、前半からそれがほしかった。「さびしいのはお前だけじゃない」で、あんなに魅力的な人物になれるのに、歌舞伎だと構えてしまうのか、あるいはやっぱり基礎ができていないのか。それでも私が獅童さんを好きなのは、特異なキャラクターでもあり、無限の可能性を秘めていると信じているからだ(それに、かっこいいと思うことしばしば。「さびおま」で獅童さんの写真パネルのチャリティー抽選販売をしていて、浅草歌舞伎「御所五郎蔵」の扮装と普段着の獅童さんが雷門前に立っているセット写真を申し込んだら当選しちゃってhappy02 2人の獅童さんは今うちの居間にいるのでありますbleah)。

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年前は8月歌舞伎を2度ずつ見ていて、「乳房榎」初見の際に私は「勘太郎さんがやっても面白いかも」と感想に書いていた。それが早くも実現したわけだ。勘太郎さんは声だけ聴いていると、まるでそこに勘三郎さんがいるようだった(声のトーンに多少違いはあってもセリフ回しとかそっくり)。それに肩のすぼめ方とか動きも酷似している。ただ、勘太郎さんは勘三郎さんの自在なやわらかさに比べてやや硬い。そこが私には大いに好ましい。
 
愚直ゆえに浪江の術中に陥る正助、悪いとは思ってもやはり自分はかわいい。極限に追い詰められていく正助の恐怖、人間の弱さがじわじわと感じられた。それでも私はうわばみ三次が好きかな。カッコよかったもの。料亭花屋で浪江と話していた三次が「正助が来る」と知り、「それじゃあ、あっしはこれで」とその場を去ろうとすると客席がどっと笑った。階段での早替わり、期待してるよ、といった笑いだろう。ほんっと、ここの早替わりは早い。

滝での重信の霊は私の席からは顔まで見えなかった。2年前は本水がちょっと飛んでくる席だったけれど、今回は遥か3階。でも十分楽しめた。
 
今月は、いずれの部も上演回数の多くない演目が取り上げられていたが、次回「乳房榎」が上演されるならば、レオン・パパ様のおっしゃる通り、最後の場面も円朝でなくて芝居で見せてほしいものだと思った。
 
<上演時間>「宿の月」30分(18001830)、幕間30分、「乳房榎」序幕・二幕目63分(19002003)、幕間10分、三幕目・大詰42分(20132055

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