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2011年9月 7日 (水)

又五郎さん、応援してます:9月演舞場昼の部

94日 秀山祭九月大歌舞昼の部(新橋演舞場)
昼の部はたった1回の予定。でも、見終わったらもう一度見たくなってきた。でも今月は大阪へ行くし、日程はともかく…。
「舌出し三番叟」
以前に見たことあったかどうか。子供時代に見ているとは思うのだけど。
三番叟(染五郎)と千歳(歌昇)の板付きで始まる。千歳は序盤にちょっとだけしか出ないのかなあ(襲名の主役なのに)と思っていたら、ずっと舞台の上にいて、三番叟と一緒にリズミカルに時に激しく踊ったりもして、見応えがあった。
歌昇クンは染五郎さんが踊っているとき、三番叟から目を離さず、それは演技上そういうものだとしても、その踊りから何かを吸収しようとしているかのような意欲が感じられた。染五郎さんの三番叟は軽やか、華やかでキレがあり、五穀豊穣の願いが伝わるようであった。
5時台の地震で予定より1時間早く起こされ、ここで沈没するんじゃないかと心配したが、全然寝ないで楽しく見ることができた。
「新口村」
このお芝居はそんなに苦手ではないのだけど、地震の影響がこちらへきたのかしら。期待した歌六さんがいまひとつな気がした。「沼津」の平作ではあんなに泣かされたのに、孫右衛門にはあまり心を動かされなかった。ただ、梅川(福助)が孫右衛門に目隠しをしたところへ忠兵衛(藤十郎。若い)がたまらず飛び出してきた瞬間は涙が滲んだし、親子が手を取り合うところはじ~んときた。福助さんは最後、山道を逃げながら孫右衛門に手を合わせる姿に真情が感じられた。それでも全体に乗り切れなかったのは、眠かったからだろうか。
「寺子屋」
又五郎さんが足を痛めているとは聞いていたが、あんな状態だとは!! 「源蔵戻り」では気が付かなかったのだが、家へ上がってから足を見てぎょっとした。右足を石膏で固定してあるようなのだ。足の指がその先から見えているが、足底から踝から甲までギブスをはめているではないか。そう思って見ると、家に上がるときに脱いだ草履も右足だけが特別大きい。正座ができないから、その場面になるたびに、黒衣さんが正座イスみたいなものを後ろから差し入れてカバーする。立ち上がったり座ったりする動作がややぎこちない。膝をつくときにどうしても裾が開いてしまう。
いつ怪我されたのか知らないが、まだ始まったばかりの4日目。ご本人の襲名公演だから休演するわけにいかない。痛み止めを打ったりしているのかしら…。はじめは痛々しくてお気の毒でそっちにばかり意識がいったが、又五郎さんが武部源蔵になりきっているのを見ているうちにだんだん「寺子屋」の世界に入り込んでいった。首実検が無事に済み、戸棚から菅秀才を出してほっと安心、思わず抱きしめる又五郎さんに涙。戸浪とともに実直に温かく主君の跡継ぎを守ろうと心を砕く源蔵に又五郎さんはぴったり。地味さは否めないが、それがまた源蔵という人物をよく表しているようで、とても好きな源蔵です。
他の役者さんも鬼気迫る演技で、小太郎を身代りに立てることを決めたときの芝雀さんは「鬼になって」のセリフとともに顔が鬼になっていた。芝雀さんの戸浪は甲斐甲斐しく源蔵を支え、情に溢れ、心のこもったいろは送りに胸が熱くなった。
吉右衛門さんの松王丸は声だけ聞いていると、トーンが時々幸四郎さんに似ていた。又五郎さんの緊張感を受け止める演技が大きい。小太郎の死に際「さぞかし未練を…」と源蔵に確かめる吉右衛門さんの表情が何ともリアルで、不憫なことをしたけれど、立派に死んでくれたに違いないという親の心、でもやっぱりまだ幼い子供だから…もうこの辺りは庵弥陀がぼろぼろ、はなみずくしゃくしゃだった。兄弟の中でただ1人、時平側についたばかりに息子を犠牲にしなくてはならなかった親の悲哀は、吉右衛門さんということもあってか、事情は違えど熊谷直実を思い出させた。「大はりまっ」の掛け声がかかる。
魁春さんの千代も忠義と諦めながら母親の思いが全身に感じられて泣かされた。
ちょっと楽しみにしていた歌昇クン(こういう時はやっぱり種ちゃんって言いたくなる)の涎くり、亀蔵さんとか大人の役者が醸し出す味にはかなわないけれど、イタズラっ子種ちゃんっていう雰囲気がとても楽しかった。

それにしても、又五郎さん、あの状態ではとくに梅王でかなりのご無理をされていると思うけれど、1カ月何とか無事に乗り切っていただきたいものです(来月は御園座だし)。私にできることといえば、心の中でひたすら声援を送るのみ。
 
「勢獅子」
 
浅葱幕が振り落されると、華やかな舞台が目の前に。常盤津は一巴太夫である。
 
手古舞の歌江さんが「又五郎、歌昇の襲名で演舞場も大賑わいでございます」と言うと大きな拍手が起こる。その歌江さんは気が付いたら舞台からいなくなっていたような…。
 
梅玉さんの音頭で襲名と秀山祭を祝う手締めに観客も参加して、気分はぐっと盛り上がる。獅子は前脚が歌昇クン、後ろ脚が松緑さん。イキがよくってユーモラスな獅子は楽しい。梅玉さんもおかめの面をかぶったり楽しそう。
 
あら、あの美形は誰? 隼人クンだった。これまであまり女方は似合わないと思っていたけど、今回はきれい。そしてあのかわいい手古舞は? 米吉クン。素顔が超いやし系の米吉クンったら、可愛くってしょうがないのだけど、化粧を施した顔にも癒されちゃったわ。
 
種之助クンは「趣向の華」で注目だわ、と認識したけれど、やっぱり注目に値する。動きがとてもなめらかできれい。他の演目でももうちょっと活躍の場を与えてほしかったな。
 
緊張と涙の後に華やかな踊りを気楽に楽しんだ。

ところで、私の今回の席は孤立席とでも言おうか。3階正面上手下手側最後列一番外側だったのだけど、その一画は宙乗り小屋で他の席と隔離されている。しかも、一部には黒い布がかけてあって、座れないようになっている。そういうのは、宙乗り小屋があるために舞台が見えない席なんだと思う。で、私の列では私の席以外は全部黒布席。後ろに大向こうさんが何人も立ったけれど、1人でとっても気が楽だった。
 
<上演時間>「三番叟」28分(11001128)、幕間20分、「新口村」51分(11481239)、幕間35分、「寺子屋」88分(13141442)、幕間15分、「勢獅子」30分(14571527
11090701seats←こんな感じ。



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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

いつも楽しみに拝見しています!

2(金)ですね、梅王が一旦鳥屋に入って再度花道に出ていらした時にはすでにお怪我され黒衣さんが右足をかばうように支えてました。
私の同行者はそれとは気付かなかったようです。
お客さんも気付かなかった方、多かったかも。
その日もですが、きっと翌日痛みが増して、ご不自由でしたことでしょうね。

私もその後再見しましたが、又五郎さん、上半身とお声、表情で充分、寺子屋を演じ切られていたと思いました。
御園座顔見世、演目変更とかあるのかしら、、、

(文中の上手、下手は打ち間違いでしょうか^^)

投稿: on | 2011年9月 8日 (木) 01時20分

on様
おはようございます。コメントありがとうございます!!

2日目にはもうお怪我されていたのですか。又五郎さんの胸中をお察しするとたまらなくなりますが、そういうことを忘れさせる武部源蔵でした。又五郎さんの演技力の魅力をあらためて認識いたしました。
御園座のご出演は口上を除けば曽我五郎と放駒長吉だけのようですが、どうでしょうね…。もう配役も決まっているし。何とか早く回復されることをお祈りします。

上手と下手、また間違えてしまいました。よくやるので注意しているのですが、意識していないと、こうやって間違えてしまいます(昔から右と左がごっちゃになって、一瞬考えないとわからなくなる…それの流れですゎcoldsweats02)。
ご指摘ありがとうございました!! 訂正いたしました。また何かお気づきになられましたら、教えてくださいませね。

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月 8日 (木) 10時38分

私は初日に拝見し、その後、どうしてももう1度(色々な意味で応援したくなって)3日に再見しました。その後、お舞台をどうされていらっしゃるか心配で、SwingingFujisan様のレポを待っておりました。

拍手を送って治るものなら…と思いますと居ても立ってもいられませんが、ほんと、私どもに出来ることは、祈るばかりですね…。でも、お声と上半身でご立派にお役を表現してらして、より、お役に近づかれてらっしゃるとも感じました。

歌昇クンもご心配でしょうねぇ。

下手の「孤立席」、私も体験したこと、あります(笑)。客席に入った瞬間、「え?!、ここ、座っていいんです…よね?」って思っちゃいますよね。

投稿: はなみずき | 2011年9月 8日 (木) 17時09分

はなみずき様
こんばんは。コメントありがとうございます!!

初日を通しで、そして3日目は夜の部を再見なさったのですね。はなみずき様の応援の心が強く強く感じられて、同じ気持ちの私は思わず泣きそうになってしまいました。
梅王は衣裳の着付けにもしっかり足を踏ん張らなくてはなりませんから、それだけでも大変なご苦労なのに、舞台でそういうことを感じさせずに役になりきっていらっしゃるのは、本当にご立派で、ますます応援したくなります。
お父様を敬愛なさっている歌昇クン、お父様の役者魂に触れて、ご自分も大きくなられることでしょうね。

はなみずき様もあの孤立席経験をお持ちなんですね(o^-^o) 私も思わず「え?」と、チケットを見直してしまいましたわcoldsweats01

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月 8日 (木) 21時30分

遅ればせながら行ってきました。
新又五郎さんの足は骨折なんでしょうか?ギブスみたいな状態で梅王をやってらっしゃいました。肩で息をしているのが3Fからでも分かるほどで、その懸命な姿にグッときました(;_;)
皆さんがおっしゃる通り何もできませんが、精一杯の拍手を送りました。
襲名披露が終わるまで無事につとめられるよう、これ以上怪我が大事に至らぬよう、祈るばかりです!!

投稿: 林檎 | 2011年9月18日 (日) 22時35分

林檎様
こちらにもありがとうございます。
又五郎さん、骨折か靭帯か、いずれにしてもそう簡単にギブスは取れないかもしれませんね。ご自分の公演でなければ休演して回復に努められるのでしょうが、本当にお気の毒です。梅王が一番きついでしょう、と胸が痛みます。でも、これを乗り越えられて、さらに一回り大きな役者さんになられることと信じております。
来月は御園座での公演、休む間もなく大変ですが、少しでも早く回復されますよう。

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月19日 (月) 07時50分

 いつも楽しみに拝見しています。楽しい記事に興味深いレポと、ありがとうございます。
 又五郎の怪我をとても心配してます。重い捻挫か靭帯を伸ばしたかと思ってましたけれど、ある評論家は、御社の日に花道を入った途端にアキレス腱を切った主旨を言っていました。これで、歌昇時代から2度目、今度は右。代役が立った前回とは違い、今回は本当に心配。先日行った際には、心なしか落ち着いた感じでしたけれど、傷めた状態での体の動かし方に慣れたのでしょう。なんにせよ、見ているこちらは何もできません。祈るだけです。
 ただ、これだけは言いたい。できない体で勤めているから、できていることがある。そう思ってます。いい舞台です。

投稿: 淳之 | 2011年9月21日 (水) 22時03分

淳之様
こんばんは。コメントと又五郎さんの情報、ありがとうございます。
アキレス腱ですか…。直後の梅王はどんなにおつらかったでしょうね(評論家さんの記事、検索して読みました)。代役が立てられないのが本当に苦しいですね。又五郎さんの役者魂に涙が出る思いです。
淳之様の「できない体で勤めているから、できていることがある」というお言葉にも大変感動しました。怪我の状態、今後への影響など心配は心配ですが、大好きな又五郎さんがこういう状況でいい芝居を見せてくれていることで、ますます応援しようという気持ちを強くしました。

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月21日 (水) 23時31分

昨日(22日)昼夜観てきました。
違うことで毎日拝見しているSwingさまに今日こそコメントを、と思っておりましたが、
「できない体で勤めているから・・・」に思わず反応してしまいました。
歌舞伎初心者の私には大変に失礼ながらさほどなじみのない役者さん一門でしたのですが、
もーーもーーもーー! 昨日の私のいち日の素晴らしいことったら!
わたしは梅王丸が本来どういった動きをするのか知りません。
寺子屋源蔵さんも。
でもでも、話すことばひとつひとつが力漲り闘志溢れ、
ぐぐぐっとお芝居に引き込まれて観劇&感激致しておりました。
涎くりさんが源蔵さん見上げる場面ってありましたよね。
演技を超えてお父様を案じてるような気がして(まなざしが)、心からお二人を応援したくなりました。

当初Swingさんにおしゃべりしたかったこと。
 ビール話、大好きです♪^^
 ハイビスカスレッドフラミンゴ、台風で大丈夫でしたか? etc.
長くなりまして失礼致しました。
お邪魔でなかったらまたいつか・・・

投稿: ひー | 2011年9月23日 (金) 14時23分

SwingingFujisan様
今晩は。今日、昼の部みてきました。又五郎の足の怪我は少しずつ良くなっているのでしょうか。ともかく、気迫で演じているようですね。初役の源蔵、最近のやや柔らかみのかった演じ方とは異なり、きっぱりと、男性的であり、義太夫の味も十分で結構だったと思います。そして、それにも増して、吉右衛門の松王丸の良いこと、良いこと。前半の敵役で通した、しっかりとしたハラ芸、後半の愁嘆場の大きな演技は圧倒的でした。その他、周りの役もよくそろい、大変結構な寺子屋でした。
 あと、勢獅子、華やかで楽しいですね。今日は、歌江が口上のせりふが上手く出てこず、あれっと思いましたが、人柄のせいでしょうか、観客の温かい笑いを誘っていました。印象に残ったのは、梅玉で、舞踊の技術、切れの良さは、松緑のほうが、ひょっとしたら、すでに上なのかもしれませんが、何ともいい味があり、これが役者の踊りなのでしょう。この優の吉原雀がいいのも同様ですね。

投稿: レオン・パパ | 2011年9月23日 (金) 18時20分

ひー様
こんばんは。コメントありがとうございます!!
昨日は昼夜ご観劇でしたか。馴染みのない役者さんでも、素晴らしい1日を過ごされたと感激していらっしゃるご様子に、又五郎ファンとして、また同じ歌舞伎ファンとして大変うれしく存じます。
梅王は本来の動きが制限されてご本人も悔しい思いをされていることでしょうが、その中で荒事の力強さを見せていらっしゃるのは素晴らしいことですね。そして源蔵さんも…又五郎さんの源蔵、とても好きです。「できない体で勤めているから」には教えられるものがありますね。
歌昇クン、そういうお父様と同じ舞台に立つことで、ますます大きないい役者さんになられることと思います。

ビール話のこと、嬉しいですわhappy01 最近では氷点下ビールが普及してあちこちで飲めるようになりましたね。これから涼しくなっても、やっぱり私はまずbeerです。 
ハイビスカスは家の中に入れたので大丈夫でした。ご心配くださってありがとうございます。朝晩冷えてきましたので、今後の管理をきちんとしなければ。

楽しいおしゃべりに、またいつでもいらしてくださいませね。

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月23日 (金) 20時43分

レオン・パパ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
昼の部はいついらっしゃるのかなあと思っておりました。
源蔵は又五郎さんらしい、きっぱりとした演技でしたね。とても好感のもてる源蔵で、芝雀さんとの夫婦も、この人たちの地道であたたかい生活ぶりが窺えるようでした。
吉右衛門さんの松王は、圧巻でしたね。昼の部を1回だけにしたのは失敗でしたが、1回だからこそ見るほうも気合が入りました。

「勢獅子」もお祝いにふさわしい華やかさでよかったですね。梅玉さんの踊り--うまく表現できないでいたのですが、そう、「役者の踊り」です!! レオン・パパ様のコメントを拝読して、思わず膝を打ちました。ありがとうございますhappy01

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月23日 (金) 21時07分

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