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2011年9月24日 (土)

松竹座昼の部

919日 九月大歌舞伎昼の部(松竹座)
正直言って、全体に夜の部のほうが面白かったので、昼の部はささっと。
「悪太郎」
亀治郎・亀鶴コンビで見たのは去年の浅草歌舞伎。あれが「悪太郎」の初見だったから、今回は演目から受ける衝撃はあの時ほどではない。しかし、面白いことは面白い。澤瀉屋の演目って、本当に心を摑むよねえ。
大酒飲みで酒癖の悪い悪太郎、愛敬と無邪気さを伴った憎めない暴れん坊のキャラクターとしては亀ちゃんより右近さんのほうが合っているかもしれない。極端かつ乱暴な言い方をしてしまえば、亀ちゃんには繊細さが見え、右近さんは豪快というところだろうか(ほんと、乱暴な表現です)。
猿弥さんの智蓮坊とのコンビはもちろん息が合って(浅草の亀ちゃんと亀鶴さんコンビもすっごくよかった)、悪太郎に困り切っている智蓮坊が可笑しいやら気の毒やら。軽快で滑稽な念仏踊りが楽しい楽しい。
珍しい笑三郎さんの立役は、悪太郎の伯父・安木松之丞。やわらかさとスッキリした姿と品のよさと、セリフもよく、実に素敵だった。
弘太郎さんの滑稽味もほどよく、4人がうまく調和して最後の連舞までたっぷり楽しんだ。客席からも何度も笑いが起こり、みんな楽しかった様子が窺えてよかった。
今月、何が嬉しいって、筋書きに右近、猿弥、笑也、笑三郎、春猿の5人のインタビューが載っていること(こちらでいう「花競木挽賑」)。うれしくて何度も読み返した。それにしても松竹座番付の「今月の出演俳優」の写真、どうしていつも黒枠なんだろう。だいぶ慣れたけど、やっぱりちょっとドキっとする。

「若き日の信長」
 
海老蔵と信長、さぞやぴったり、どんなにかいいだろうと期待したが、私の期待が大きすぎたのだろうか。平成181月に見た現代的な「信長」はまさに海老蔵のオーラと信長のオーラが重なって魅力的であったが、今度の信長にはそういうものがあまり感じられなかったし、なんとなく深みがないような気がした(若き日の信長には色々な苦悩があったと思うが、苦悩というよりはただ暗い…)。またセリフを変に伸ばすのが下品に感じられてよくない。桶狭間に打って出る覚悟を叫ぶ時の開放音的発音も海老ちゃんがやると、ちょっと品が落ちる。まあ悪いところばかり挙げちゃったけれど、平手中務(左團次)の死を嘆く長台詞には泣けたし、雷鳴が轟き稲妻が光る中で舞う信長は印象的だったし(それでもかつてのオーラは3階席にまでは届かなかった)、物語としては面白かった。
 
藤吉郎の翫雀さんはサル顔ではないけれど、後の秀吉としての大きさが感じられた。
 
壱太郎クン(人質・弥生)はいつもより声を低く抑え、控えめな演技で、囚われの身の悲しみ、信長への思慕をうまく表していた。壱太郎クン、信長が「敦盛」を舞う時に得意の鼓を披露する。
 
左團次さんは、信長を諌めるための切腹を深刻ぶらずに飄々と実行するのが左團次さん自身のキャラクターと重なってよかった。遺書は下書きがありそうではあったけれど、自筆で書いていた(こういうのって、書く演技だけのことが多いでしょ)。
 
平手中務の3人の息子は、男女蔵、亀三郎、亀鶴。男女蔵さんは長男らしく鋭い目で父を見つめ(実の親子だからやりやすい面もあるそうな)、亀三郎さんは3人兄弟の真ん中であるということを意識しているような演技がよかったと思うし、亀鶴さんには末っ子らしい若さが感じられた。兄2人と違って父の死をまっすぐに受け止められず、死を前にした父から1人顔をそむけている。そして自害した父の遺骸に号泣する。今回は亀鶴さんの舞台写真を2枚買ってしまったわ(鎧姿と、「幸助餅」の時のと。鎧姿の表情がたまらなくよいです)。
 
澤瀉屋の面々のインタビューが載っている番付にはこの3兄弟も載っているから、さらに嬉しいではないか。
 
「河内山」
 
團十郎さんは愛敬たっぷりに表情も大きく、わかりやすく演技しているような印象を受けた。私個人としては、そこまでしなくてもという気もなくはないが、團十郎さんの大らかさがすべてを包み込む。小ずるそうな表情をしても品が落ちないのがいい(あの表情思い出すと、今でもクスっと笑いたくなる)。ただ、やっぱり声が少し変。前日の富樫に比べたらかなりよくなっていたが、気になる。「バカめ」にいまひとつインパクトが感じられなかったのも気になった。
 
松江出雲守は海老蔵さん。白塗りはこの役だけ。海老ちゃんのお殿様は見たことがある気でいたら、初役なんですって(デジャヴュか?)。私にとって、海老ちゃんの3役の中でこの役が一番よかった。癇性な感じもいいし、低めの声がよい。殿様オーラも出ていた。
 
笑也さん(浪路)が顔も声もきれいで、恐怖と覚悟がせめぎ合っている感じを受けた。笑也さんの歌舞伎出演をもっと見たい(来月は京人形と照手姫だね~)。
 
<上演時間>「悪太郎」50分(11001150)、幕間30分、「若き日の信長」90分(12201350)、幕間25分、「河内山」65分(14151520

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