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2011年9月16日 (金)

激しい立ち回りのワカドクロ:「髑髏城の七人」

916日 「髑髏城の七人」(青山劇場)
当日引換券が奇跡的にゲットできた「髑髏城」。新感線歴の浅い私としては1990年以来7年ごとに上演されるという「髑髏城」は今回が初めて。天魔王と捨之介が2役でなくなったと言われてもその差はもちろんわからない。
面白かった!! とくに芝居の半分以上を占めるんじゃないかっていうくらいの激しい立ち回りはサイコウ!! 12回公演をどうやって乗り切るんだと心配になるほど激しい活劇である。
殺しでも略奪でもやりたい放題の天魔王(森山未來)率いる関東髑髏党。強きをくじき弱きを助けるがモットーの兵庫(勝地涼)率いる関八州荒武者隊は打倒天魔王を叫び戦う。しかし荒武者隊に裏切り者が出て、関八州荒武者隊は窮地に陥る。そのとき、ふらりと現れた捨之介(小栗旬)。
旬クンがめちゃくちゃカッコいい。めちゃくちゃカッコいいし旬クンファンの私だけど、不思議なことに意外と捨之介に魅力を感じない。いや、魅力的は魅力的。でも他の人物の魅力のほうが上回っていたと言うべきかしら。それともカッコよさが人間的な魅力を凌駕しちゃった? 捨之介が本来もっているはずの飄々とした味わいがちょっと弱かった? 信長に仕えていた陰影みたいなものがもうちょっと感じられてもよかったかな? でも旬クンのあの明るさが、もと信長の家来であった天魔王・蘭兵衛・捨之介の行く末の違いを暗示していたのかもしれない。
勝地涼クン。「ムサシ」では旬クンに代わって小次郎役を頑張っていたけれど、旬クンの小次郎には敵わなかったなという印象だったのであんまり期待していなかった。その涼クンが面白くていい味を出している。ちょっと暴走気味の若さと正義感はわかるわかる。兵庫は刀を抜かず相手を殴ることで戦う。刀を抜かないのには理由があった。しかし兵庫が刀の封印を切るときがくる。覚悟を決めて刀を抜くと…なんと、それは錆び錆びのなまくらになっていた、というオチ。
刀を研いだら今度は研ぎ過ぎて刃がナイフほどの短さに。と命をかけた戦いの場でも笑わせてもらった。
刀が使えなければ、鎌だ。実は兵庫は農民だった。兵庫の貧しい兄・磯平(磯野慎吾)は兵庫が武士の真似事なんかしているのを何とか引き戻そうとするが、結局自分も一緒に髑髏城に乗り込んで戦うことになる。この磯平がなんと鎌の使い手だったりして、これが笑わせるとともに、兄弟そろっての鎌さばき、敵をバッタバッタと倒すと思わず客席から拍手が湧く。
髑髏城の主・天魔王は冷酷で残忍で卑怯で、主君信長の死を受け入れられないという心の傷があるにしても、それに同情することはおよそできない。しかも、物語が進むにつれ、この男が「天魔王」などと名乗って秀吉に反旗を翻そうとしていたって、本当は実に小さい人間であることがわかってくる。森山未來クンがうまい。自信と虚勢(天魔王自身は虚勢とは思っていないに違いない)に未來クンの繊細さが巧みに絡み合って、旬・太一・未來の中で一番魅力的だったかも。しかしこの天魔王、未來クンとわかっていてもその姿から普段知る未來クンはまったく想像できず、誰かと思ったくらい。
未來クンは動作がとてもきれいで、赤いマントを翻した動きなんかあんまり美しくて、見惚れてしまった。そういえば、「変身」で未來クンの身体能力の高さに感心したんだっけ。 

戦で行き場をなくした女たちを集めて一種理想郷ともいえる色里「無界の里」を作った無界屋蘭兵衛(早乙女太一)。太一クンの最初の登場は総髪、黒ずくめの衣裳だったが、これはあまり似合うとは思わなかった。無界の里を仕切る主人にしては若すぎる印象だったのかもしれない。後に白い衣裳に変えてからはとても素敵。立ち回りはさすがに一味違う見事さで、未來クンとの戦いは実に見応えがあった(2人の激しい立ち回りを見て、立ち回りは美しい舞踊なんだって思った)。蘭兵衛、実は森蘭丸は天魔王の卑怯な企みで催眠状態となり、仲間たちを殺戮することになる。心ならずも天魔王に加担してしまったわけだが、蘭兵衛は最初から死に場所を求めていたんじゃないかしら。
 
ところで、太一クンは女形にしては身長があるからもっと背が高いかと思っていたが、意外とそうでもないような…。旬クンと並ぶととくにそれを感じる(旬クンは本当に背が高いのね)。
 
無界の里随一の美女・極楽太夫(小池栄子)は元雑賀衆。きれいで勝気で気風がよくて、小池栄子にぴったり。仲間の女たちを無残にも殺され、彼女たちの髪の毛を地蔵の前に並べて冥福を祈った時には思わずウルっときた。同じく仲間たちの死を悼む兵庫の勝地クンにもウルウル。
 
城づくりに特殊才能をもつ沙霧(仲里依紗)は向こうっ気が強くて、アンタがそれをやったらみんなの足を引っ張るでしょ、みたいなことをやる子なんだけど、まあそれだけ純粋なんでしょう。仲里依紗は一生懸命頑張っていたけど、私はあのハスキーボイスがイマイチで…(もともとああいう声? それともお芝居でつぶした? )。
 
さっきチラっと触れたけど関八州荒武者隊の裏切り者・三五(河野まさと)は、まったく調子のよい日和見だけど憎めない。結局は生き延びる術を心得た人間としてみんなにも認められ、髑髏城から脱出するのに役立つ。あの時代、不器用に一筋に生きるのも生き方だっただろうし、どうせ虫けらぐらいの扱いしか受けないんだったらあっちについたりこっちについたりして生き延びるのも生き方だったのかもしれない。
 
孤高の刀鍛冶・贋鉄斎(高田聖子)が素晴らしい。孤高というイメージとはちょっと違うけれど、高田さんが出てくると舞台がしまり、しかも温かいユーモアが溢れる。刀鍛冶として、捨之介に「人を5人(だったっけ?)も斬ったら刀はぼろぼろになる。研がなくてはならない」と教えたものだから、捨之介は髑髏城での戦いで兵庫にもたせた砥石でしょっちゅう刀を研いでいる。時には兵庫が隙を見て研いだ刀と刃こぼれした刀を交換したりもしている。この時の旬クンと涼クンの呼吸が見事で楽しいことこの上なかった。
 
何か秘密のありそうな武士・狸穴二郎衛門(千葉哲也)。後に実は…とわかるのだが、千葉さんが飄々として人間的な大きさを見せた。 <上演時間>第一幕70分(18001910)、休憩20分、第二幕105分(19302115

最後はめでたしめでたしなんだけど、それぞれが別々の道を歩むことになる(カップルもできる)。1つの目的を遂げた仲間が最後は別の道にわかれるって、「さびおま」もそうだったな。観客としては寂しい余韻が残るものだ。 

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コメント

SwingingFujisanさま
私は「髑髏城」は97年、04年(アカ、アオ)と観てきて、大好きな作品ですので、一人二役でなくなったことを始め、どうしてもこれまでの髑髏城と比べてしまうのですが、初めてご覧に
なったというSwingingFujisanさまのご感想、とても興味深く
そしてうれしく読ませていただきました。
小栗旬くん捨之介が魅力的だけれども他の人物の魅力の方が上回っていた、というご感想に、膝を打つ思いだったり。
そうそう、周りの登場人物のドラマが色濃いですよね。
私も最初は捨之介が物足りないと感じたのですが、大阪で3回観て、観るたびに捨之介の存在感が増していったので東京の千秋楽の頃にはどんなことになっちゃうのやら(笑)。
10月10日に観る予定なのでとても楽しみです。
いずれにしても、若さ迸るすばらしくエネルギッシュな舞台でしたね。

投稿: スキップ | 2011年9月18日 (日) 20時08分

スキップ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
スキップ様が大阪公演をご覧になったのは存じ上げておりましたが、先入観なく見ようと思い、感想は拝読しませんでした。見終わった後で拝読するつもりでいながら、なかなか時間がとれなくて…。でも、後ほど必ず読ませていただきますわ。それに東京の千穐楽もご覧になるのですね!! うらやましいですっ!!! そのご感想も楽しみにしております。

捨之介は、何度も見るうちに存在感が増すということ、確かにそうかもしれない、と思う予感のようなものはありました。私は1回しか見られませんのでそこまでいかないのですが…。
あの若さ、エネルギーにこちらも全身に力を込めて躍動するような気分でしたわ。できたらもう一度見た~い!!

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月18日 (日) 20時48分

取りたかった「髑髏城の七人」・・・
でも取れなかった「髑髏城の七人」・・・
羨ましい限りです。

投稿: うかれ坊主 | 2011年9月19日 (月) 21時55分

うかれ坊主様
こちらにもありがとうございます。
髑髏城は、追加販売で当日引き換え券が運良く入手できたのですが、席も縦列はセンター、横列はやや下手寄りのとても良い席でした。全公演当日券が出ていますから、チャレンジなさってみては? どの程度の枚数が出るのかわかりませんが、電話でも申し込めるみたいですよ。
うかれ坊主様もお好きだとおっしゃっていた小池栄子さんの姐御肌の元雑賀衆太夫、カッコよかったです。

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月20日 (火) 06時46分

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