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2011年9月25日 (日)

大好き、仁左様の権太:巡業西コース

924日 松竹大歌舞伎巡業西コース(川口リリア)
地元に仁左様ご一行がいらっしゃるなんて大カンゲキ。それで入り待ちか出待ちかしたいと思っていたのに、やらなくちゃならない仕事があって、結局入りは色々含めてぎりぎりセーフ、出はダッシュで帰宅(私の入りと出です)。それが残念。
「雨の五郎」
短い舞踊ながら、起伏も舞踊としてのみどころもたくさんあって、大変楽しめた。これまで吉右衛門さん、松緑さんで見ているけれど、愛之助さんの今回が一番楽しく見られたのはこちらも多少は成長してきているせいだろうか。愛之助さんの五郎は力強いだけでなくどことないやわらかさがあって、荒事と和事が見事に融和していたと思う。荒事を見るといつも感心するのは、みんなよく足の親指を立てるのを忘れないなあということ(はは、レベルの低い感心ですみません)。
「義経千本桜 下市村茶店の場・釣瓶鮓屋の場」
2
年前は巡業東コースでほぼ同じ座組で同じ演目を見た。この時も「木の実」「小金吾討死」「すし屋」の上演だったが、「木の実」「小金吾討死」あってこその「すし屋」だという思いをあらためて強くした。
小金吾(愛之助)をだます時の仁左様の愛敬たっぷりのワルさ。小金吾には気の毒だけど、権太のほうが一枚も二枚も上手ですわ。愛敬を伴ったワルでも冷酷は冷酷、そんな権太が家族に示す愛にこちらもついつい頬が緩み、許してしまう。女房小せん(秀太郎)を振り向かせようと仕掛けるイタズラも子供みたいでかわいい。秀太郎さんもここで権太との間に通う愛情をしっかり見せるから、後で自ら身代りを申し出るという件が活きる。また、前半の笑いを呼ぶコミカルさが後半の悲劇をいっそう際立たせる。
仁左様の花道(もどき)を歩く姿のカッコよさ。ぱっと裾をからげるカッコよさ。デッカい体で母親(竹三郎)に甘えかかるお茶目さ、息子がかわいくて甘やかすからこんな大人になってしまう…。
母親の前では水で目を濡らしたニセ涙――妻と子供を若葉の内侍と六代君の身代りとして梶原に渡す時の涙はさりげなく手拭でふき、煙が目に沁みらあとごまかす。この対比が物語としてもよくできているし、権太と一緒に私の目にもどっと涙が…。2人を立ち上がらせるために足をかける、たまらない気持になる。引き立てられながら権太を振り返る妻と息子、目と目で別れを告げる3人にまた涙。権太の息子善太郎役の子役ちゃんがちっちゃくてかわいくて、身代りとしての衣裳がだぶだぶなのがまた悲しみを誘う。
2人を心の中で手を合わせて見送る権太、「大将、たのんまっせ!!」と強がってみせるが、その声はだんだん小さくなる。「たのんまっせ」「たのんまっせ…」。

父親(彌十郎)に腹を刺されて苦しい息の下、すべての事情を明らかにする権太は最大の見せ場だが、リリアは音響が悪くて、時々セリフが聞き取りづらくなる。自然に聞いている間は泣けて泣けてしょうがないのに、聞き取れなくなってそっちに集中しようとするとなんだか気が逸れてしまうのが残念であった。権太が合図の笛を吹くとき、一瞬「うっ」という感じで苦痛をこらえていたのが印象的だった(おなかに刀が刺さったまま息を強く吹いたらさぞ痛いだろう)。
 
仁左様のすし屋は仁左様が独自に作った台本によるものだそうで、権太の家族愛に重点が置かれている。それだけでなく出演者全員の丁寧な演技が、現代感覚からは理解しがたいかもしれない忠義と愛と悲劇のこの物語をすんなり受け入れさせる。仁左様の権太、大好き!!
 
竹三郎さんの母親、孝太郎さんのお里、秀太郎さんの小せんと維盛の2役、愛之助さんの小金吾はみんな手に入った役といおうか、自然で安心して見ていられた(竹三郎さんは前回の巡業では父親役だった)。彌十郎さんは体が大きい分、哀れさがどうかと懸念したが、忠義心がはっきりしていたし、心の底では権太を可愛く思っていた様子が見て取れて、ただの哀れではなく父親としてやるべきことをやった結果が悲劇となってしまったという感じがして、なかなかよかった。薪車さんの梶原には本心を隠した迫力があった。前回薪車さんが演じた猪熊大之進を今回は松之助さんがやっているのがうれしい。
 
この芝居でいつも理解不能なのは若葉の内侍(高麗蔵)。別に高麗蔵さんがどうこうではなく、だれがやってもこの人の感情が私には伝わってこない。なんとなく冷たい感じする。ただ、今回の高麗蔵さんには途中まで人間味が感じられて、「おお」と思ったのだが、結局権太の笛で呼び戻されてからはいつもと同じになってしまった。茶屋の前で権太に金をだまし取られたことを恨みに思っていたりして?
80歳近い竹三郎さんが巡業に出られるのは大変だと思うが(亀ちゃんの巡業も、2年前の仁左様の巡業も竹三郎さん参加されていた)、お元気そうで権太にあま~いお母さん(母親って息子が無条件でかわいいんでしょうねえ)を見せていただいて嬉しかった。

 
<上演時間>「雨の五郎」15分(15001515)、幕間20分、「下市村茶屋の場」47分(15351622)、幕間10分、「釣瓶鮓屋の場」87分(16321759

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisan様
今晩は。今日の昼の立川公演見てきました。立川のホールは音響が良すぎて残響時間が長いために、セリフが逆に聞き取りにくいのが難です。つけ打ちや下座がびんびん響きます。
 とはいえ、松嶋屋型の「鮨屋」堪能しました。まわりも、結構、鼻をすりあげる音がきこえましたよ。批評家筋からは、騒々しいすぎると、評価が今一歩の孝太郎のお里、私は前から気に入っています。文楽の本行に近い、上方の娘役(妹背山のお三輪にも通ずるものがあります)をよく演じていると思います。
仁左衛門の権太、東京の権太の演出と多くの点で異なりますが、あれっと思ったのは、東京系の役者が名優5代目幸四郎に敬意を表する眉上のほくろがなかった点(写真で確認したかったのですが、先代萩の仁木のように、この役に、ほくろつけますよね?)です。仁左衛門の主張があって面白いと思いました。

投稿: レオン・パパ | 2011年9月25日 (日) 19時23分

レオン・パパ様
さっそくのコメントありがとうございます。
立川もそういう問題があるのですね。川口も同じです。
孝太郎さんのお里は私もかわいくて好きです。以前に比べてよくなってきているとも思います(な~んてエラそうなこと言っちゃいましたsmile)。
ほくろのこと、気が至りませんでした。過去の筋書きを見ますと、たしかに、東京の役者さんは吉右衛門さんも海老蔵さんもほくろがついていました。そして、平成19年3月の権太は仁左衛門さんでほくろはついていませんでした。そこに気が付かれるとはさすがにレオン・パパ様!! 仁左様の権太はまさに仁左様の権太なんですね。

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月25日 (日) 23時27分

こんにちは!
歌舞伎歴1年にも満たないものがまたのこのこおじゃまします;
わたしも立川夜の部観ました。
もちろん初すし屋です。
この半年で四の切2パターン・碇知盛・権太の観劇ができました。
国立劇場の情報館も見学でき、義経千本桜の世界にすこ~し近づいた気がいたします。
テアトル銀座みたいな花道で、普通の場所で歌舞伎興行は大変なんだな、と思いました。確かに聞き取りにくい場面もあったような。
秀太郎さんがなんとなく可愛いかったです。
竹三郎さんも80歳近いんですかっ! びっくりです。
この方、鑑賞教室で「わあ、いいお声のご兄弟だなあ・・」と
びびっと感動した亀亀兄弟さんのお父様だったのですね。
話題に出る主役級役者さんばかりでなく、なんとなくこういった役の方たちに目が行ってしまいます。
・・・と、いってもニザ様のおみ足美しや~と双眼鏡ガン見でしたけどね(笑)

投稿: ひー | 2011年9月27日 (火) 13時04分

ひー様
こんにちは。コメントありがとうございます。
半年で「義経千本桜」をほとんどご覧になったわけですね。素晴らしい!! 情報館の展示も興味深いですよね。

巡業はそれぞれの会館で舞台サイズも音響も違うし、移動も含めて本当に大変だと思います。でも普段、なかなか見られない方もご覧になれるだろうし、役者さんの熱意がその土地その土地で観客を喜ばせていると思うと、巡業って大事ですよね。

竹三郎さんは亀兄弟のお父様ではなくて、梶原役で出演されたいた薪車さんの芸養父(っていう言葉があるのかな? 要するに薪車さんが竹三郎さんの芸養子coldsweats01)です。亀兄弟のお父様は坂東彦三郎さんです。来月の国立劇場には彦三郎さん・亀三郎さん・亀寿さんが揃ってご出演になりますから、ぜひお楽しみにhappy01

歌舞伎の役には足を見せるものがけっこうありますね。色々な役者さんの足を見比べたりするのも一興です(はは、悪趣味ですかしらねcoldsweats01)。仁左様のおみ足は細いけれどしっかりしていてステキですね。

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月27日 (火) 14時49分

お教えありがとうございます。 三郎さん違いでしたっ^^;
来月、両宙乗りって売りの新作とかいうものですね。 
もっちろん拝見いたします! すんごい楽しみ!

10月は他にも新橋昼夜と、じゃじゃーーん!
今年の浅草歌舞伎のあと、swing様のブログ発見してからチェックしてた中村兄弟の「芯」!
むふむふ・・・とっても楽しみ多き10月なのです♪

勘太郎さん・亀治郎襲名公演etc. 金策も大変でありまする(泣)
平成中村座なるものも一度は行きたいし・・・・・
もちょっともちょっと お安いお席でもあれば・・・とほほ。

投稿: ひー | 2011年9月27日 (火) 15時39分

ひー様
はい、三郎さん違いでしたねhappy01

両宙乗り、楽しみですね!! おかげで観劇回数が1回増えましたわhappy02 
演舞場もめっちゃ楽しみ。猿之助襲名の決まった亀治郎さんと澤瀉屋一門の共演ですもの。こちらも昼夜2度ずつ参ります。
しかし「芯」は…。ちょっとスケジュールが厳しく、まだチケット取っていないんですよ。もっと近づいて、仕事の調整がうまくできれば何とか行きたいと思っているのですが(ひー様には申し訳ないです)。ぜひご感想をお聞かせくださいね。

平成中村座は高いですねえ。私も顔色を青くしながら11月のチケットを取りました(桜席はちょっと面白い席ですよ)。12月はパスしようかというところでしたが、菊之助さんご出演では行かないわけには…。ほんと、とほほです。

投稿: SwingingFujisan | 2011年9月27日 (火) 17時58分

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