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2011年10月 8日 (土)

澤瀉屋一門の活躍が嬉しい10月演舞場昼の部①

106日 十月花形歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
珍しく初日を避け5日目の観劇。今月も澤瀉屋一門の活躍が見られてとても嬉しい。
「義賢最期」
この芝居は好きだし、愛之助さんでは初めて見るので楽しみだった。
さぞかし仁左様に似ているのではないかと予想したが、愛之助は愛之助であり、少なくともこの義賢を見る限り、丁寧でしっかりした愛之助の芸というものが確立されつつあるのではないかと思った。兄・義朝の髑髏を足蹴にされた時の怒りはすさまじく、こちらの胸にもその悲憤が伝わって切なかった。死に瀕しての「思い残すことはない、さりながら腹のわが子にただ一目、こればっかりが残念だわい」が泣ける。
もっと泣けたのは笑三郎さんの小万。死の前に義賢が装束を直すのを甲斐甲斐しく助け、悲しみをこらえて使命を果たそうとする。しかし義賢の様子に気づいて末期の水を与え最期をみとる。ここは一番泣けた。この小万が命をかけて源氏の白旗を守ろうとしたかと思うと胸がつまった。女武道の落ち着いてきっぱりした面と女性としてのやわらかさがうまくミックスされて、この後の小万の物語も笑三郎さんで見てみたいと思った。
春猿さんの葵御前、娘役でなくこういう奥方役はあまり見たことがないが、落ち着いた品位に情も深く感じられ、夫との別れの悲しみ、夫に思いを残して去る様は哀れであった。
獅童さんの折平(多田行綱)はカッコいいが、浄瑠璃に合わせた動きにもう少し重みがほしいような気もした。折平ってその後妻子とはどうなるのだっけ?(鮓屋の弥助はお里が身を引いたけれど…。どちらも身分の高い者勝ちなのかなあ…)
薪車さんは敵方ながら勇ましく、動きも大きい。
新悟クンの待宵姫は可憐で、恋人の折平に妻子がいることを知った時のショックがさもありなんという感じであったが、声が少し変だった(かすれているような…)。
錦吾さんの九郎助は真面目な人がちょっと剽軽な面を見せる楽しさがあった。太郎吉の大西陸クンがかわいい。
物語としては前半にちょっと長さを感じたが、様々な盛り上がりがあって面白い。立ち回りは愛之助さんの戸板倒しや仏倒し(何度見ても、よくケガをしないものだと心配かつ感心する)はもちろん、花道での返り越しなど見どころいっぱい。義賢めがけて無数の矢が飛んでくるところはけっこう危険に見えて、ハラハラしちゃった。
「京人形」
見るのは多分3回目。橋之助×扇雀、三津五郎×菊之助、そして今回の右近×笑也。
右近さんの軽妙な動きが甚五郎の飄々としたところを見せる。笑也さんの人形は美しく、動きがユーモラスで、人形、男、女の移り変わりも絶妙で楽しめた。はじめの数分間、微動だにせず、またまばたきしないのはどんなにか大変でしょう。
奥さんが夫の子供じみたお大尽ごっこにつきあう鷹揚さは同じ鷹揚さでも、役者さんによって違うのが面白い(去年の松竹座は萬次郎さん、今回は笑三郎さん。どちらも好き)。
井筒姫(春猿)、奴照平(猿弥)と澤瀉屋の4人が揃うのが嬉しい。
大工道具の立ち回りも楽しんだ。
この演目は常盤津と長唄の掛け合いで演じられるが、イヤホンガイドによれば、常盤津は叙事的で物語性あり、長唄は抒情的で物語性なし、なのだそうだ。なるほど、わかりやすい。 

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