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2011年10月27日 (木)

大感動、大満足の「小栗判官」千穐楽

1026日 十月花形歌舞伎夜の部千穐楽(新橋演舞場)

泣いて笑って大感動・小感動、十分満足な舞台だったのに、カーテンコールのおまけまでついて、本当に楽しく幸せな夜でした。
「當世流小栗判官」
前回見たとき以上に緊張感が増し、役者さんの演技もさらにヒートアップし、非常に密度の濃い舞台になっていた。

横山大膳親子の悪巧みの真相に気づき、大膳の兄であり照手姫の父親である横山郡司(寿猿)の遺骸を抱き、「お殿さま、さぞご無念でござりましたでしょう」と泣き、遺骸を揺さぶりながら「おとのさま~」「おとのさま~」と嘆き悲しむ竹三郎さん(藤浪)に、こちらも思い切り感情移入して泣きそうになった。
段四郎さん休演の代役として横山大膳を演じた右近さんは、味わいという点では少し物足りない感じがしたが、大きさも憎々しい悪さもあったと思う。
おとなしくなった鬼鹿毛に乗って悠然と立ち去る小栗判官に対し、横山側は幕が閉まるまで、悔しがってワナワナと体を震わせていたのが印象的だった。
お楽しみ、浪七詮議の場は、爆笑爆笑、もうほんと~に可笑しくて可笑しくて、私も笑い転げた。以下、爆笑シーンを再現(順番は前後しているかも。あんまり可笑しくてなんだかわからなくなっちゃった)。
偽代官役の橋蔵(獅童)が胴八(右近)に教わったとおり「者どもそれ~」と言うと、「これは」と答えるはずの浪七(亀治郎)が考え事をしていて何も言わない。そこで橋蔵は何とか答えさせようと、亀ちゃんに向かって色々仕掛ける。亀ちゃんったら、思わず顔をそむけて笑いをこらえる。こんなことが2回ほどあって、こっちの笑いも倍加する。
役立たずの橋蔵に見切りをつけた胴八が「浪七、返事はどうじゃあ~」と橋蔵にかわって詮議を始めると、獅童さんが扇子で煽って客に拍手を要求。客席は大笑いしながら拍手拍手。
橋蔵は役に立たないし、胴八と四郎蔵(猿弥)の「トン」も打ち合わせどおりいかなくて、猿芝居が全部ぶっこわれると、橋蔵「四郎蔵、もういっぺん立たしてんかぁ」と猿弥さんの助けを借りて立ち上がると、黒御簾から太鼓が「どんどん」。獅童さん、驚いたように黒御簾へ近寄り中を覗き込み「黒御簾までバカにして」。そのあと花道へ出ようとしたところへもう一度太鼓が鳴る、つかつかと黒御簾の前へ進んだ獅童さん「もうぉっ。誰? 出てらっしゃい」。で、もう客席の笑いは止まらない(黒御簾は千穐楽バージョンかな)。
気を取り直した獅童さん、「このままじゃ役が悪すぎる」と例のアレに入ろうとすると、客席から「そんなことないよっ」「がんばれ~」の声がかかる。ハプニングに獅童さんは一息ついて、「さっきまでね、あっちの後ろのほうに(と、上手側を指す)僕の母親がいたんだけどね、いなくなっちゃった。こういうの嫌いみたい」と再び客席が笑いに包まれたところで、例のあれ、<ほそまっちょ>が始まる。場内ノリノリの手拍子で獅童さんを盛り立てる。<ほそまっちょ>が終わると、再び客席から色々な声が獅童さんにかかり、獅童さんもよく聞き取れなかったようだけど、「もう一度やって」の声には応えず、ほそまっちょは1回だけ(それでよかったと思う)。
そして右近さんのほうを見て、「あの人、ああ見えて本当はいい人なのよ。僕が小学生のとき、ディズニーランドに連れて行ってくれたの」。突然振られた右近さん、「あの頃はかわいかったな~」と胴八笑いで応える。
さて、こんなふうに花道で獅童さんが奮闘している間、舞台の右近さんと猿弥さんは元の姿勢を崩して(右近さんは本来なら肘枕で横になっているのを浪七の家の縁に腰かけていた。猿弥さんは元の姿勢はどうだったか忘れちゃったけど、立って眺めていた)花道を見ている。ふと獅童さん、「あの人たち休んでる」。慌てて右近さんは肘枕の姿勢に戻る。
大爆笑、大拍手の中、獅童さんが花道を引っこむと、右近さん「あいつ、1カ月よくやったよなあ」。
獅童さんに完全にもっていかれた笑いだけど、照手姫(笑也)の「あれえ」もかなり笑える。胴八につかまりそうになって「あれえ」と叫ぶ姫に、大声を出すと殺すぞと脅す胴八。姫は途端に小声で「あれえ」「あれえ」。

ここからは悲劇の場へ。
 
浪七の家では女房お藤が哀れな最期を遂げるが、今わの際の春猿さんがめちゃめちゃ綺麗だった。万感の思いが籠っていたのだと思う。
 
堅田浦の岩場で浪七が我と我が腹に刀を突き立てはらわたを摑み出す場面は、自分も同じようにしていると錯覚するほど力が入った。浪七の壮絶な最期は、亀ちゃんの素晴らしい大熱演と、照手姫の気持ち(浪七に対する思いと、自分のこれからを頼りなく思う気持ちが混ざっていたんじゃないかな)が胸に刺さり、泣けて泣けてしょうがなかった。この亀治郎を見ただけでも大満足、という気持ち。
 
万福長者の場面では、娘に手をかけるお槇(笑三郎)に泣いた。笑三郎さんの悲しみが前回以上に響いたのは、ちょうど今こっちに帰ってきている娘のことが重なったためもあるかもしれないが、演技に込めた笑三郎さんの気持ちの迫力が凄まじかったのが大きい。忠義のために我が子を犠牲にする芝居は多いが、なんともやりきれない。
 
しかし、そういう犠牲を踏み越えて主筋は幸せにならなくてはいけないのである。天馬に乗った2人、にこやかで幸せそうだった。亀ちゃんたら、ちょっと馬を揺らして、後ろの照手姫を慌てさせたりして。今回は宙乗りが間近に見える席を取ったので大満足。
 
ラストの勢揃いでは笑三郎さんの貴公子ぶりがあんまり素敵で、この人で光源氏を見てみたい、なんて思ったりした。右近さんが大膳にまわったため横山太郎のところがぽっかり空いていたが、ラブリンとか無理だったのかなあ。

定式幕が引かれ、緞帳がおりても拍手は鳴りやまない。やがて、客席の期待に応えて緞帳があがる。下手に笑三郎さんと薪車さん、笑也さん、右近さん、上手に獅童さん、春猿さんと並び、最後に亀ちゃんが登場すると右近さんが上手側へまわり、亀ちゃんを中心にみんなで手をつないでご挨拶。もう最高の感動で泣きそうになった。
 
楽しかった10月の演舞場、大満足で終わったのでした。
 
おまけ:行きに、采女橋交差点のあたりで我當さんをお見かけした。カジュアルな服装で、洋服とお揃いの帽子をかぶって、2人の人に見守られながら杖をついてしっかりした足取りで歩いていらした。

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コメント

千穐楽、羨ましいですわぁ。
どんなに楽しかったことか、文章を拝見していて伝わってまいりました!
笑也丈の「あれぇ~」。私も(私は1回しか拝見できませんでしたが)、大ウケしておりました。そのときは、まわりは割りと静かで、私ひとり、くっくと我慢して笑ってました(苦笑)。小声で「あれぇ~」って叫んで(?)も聞こえないのに、同じような調子で「あれぇ~」って繰り返してるのが、なんだか可笑しいんですよね! 笑也丈、「3」のセンもなかなかお上手ですよね(笑)。

忙しい10月も、終わっちゃいましたねぇ。

投稿: はなみずき | 2011年10月30日 (日) 19時00分

はなみずき様
こんばんは。コメントありがとうございます!!

花形歌舞伎はその名のとおり、華やかでしたねえ。お勤めしていらっしゃる方には本当に申し訳ないと思うのですが、千穐楽、心ゆくまで楽しみました。そして亀治郎さんを中心に澤瀉屋の皆さんが並んだ姿には胸がアツくなりました。

笑也さんの「あれぇ~」はほんと可笑しかったですね。大笑いするというより、そうそうくっくと笑ってしまう、そういう可笑しさでしたね。そんな照手姫、かわいかったですわ~。

千穐楽から次の初日まで、わずかな日々ですが寂しいですねcoldsweats01

投稿: SwingingFujisan | 2011年10月30日 (日) 21時30分

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