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2011年11月21日 (月)

見てよかった国立劇場「振袖始」と「曽根崎心中」

1119日 「日本振袖始」「曽根崎心中」(国立劇場大劇場)
行きも帰りも雨がざあざあ。もっのすごく眠かったしちょっと億劫だったけど、見てよかった。
「日本振袖始」
3年前の9月に玉様の岩長姫をリピートしたことを思い出す。しかしあの時の岩長姫と今回の岩長姫はずいぶん趣が違った。
まず、今回は序幕として八岐大蛇が登場する前の段、「出雲国簸の川川岸桜狩の場」がついている。
稲田姫(梅丸)の侍女たちが鶺鴒を追いかけている場面で幕が開く。鶺鴒は恋をもたらす鳥らしい。松江さんのくまざさ(侍女の名前)が三枚目的可笑しみをもっぱら引き受けているが、やり過ぎ感はなく程よく品を保っているのが好もしい。あの男っぽい松江さんが三枚目とはいえ女形をやればちゃんとそう見えるのが見事。
歌江さんのいたどり(稲田姫の乳母)の登場は嬉しい。こういうベテランが舞台にいると、独特の素敵な空気が流れるような気がする。
さて、侍女たちが鶺鴒を追い回しているところへ素戔嗚尊がやってくる。そして稲田姫も鶺鴒を追って幔幕から出てくる。姫は突然、倒れる。介抱しようと姫に近寄った素戔嗚は姫の高熱に気づくと、やおら刀を抜く。そして姫の着物の両袖の下を切り開いて脇をあけたのである(この時、姫の背中から煙が立ち昇るのが神話的なんだろうけど、現代人の私にはご愛敬のように見えてしまった)。日本の気候は「陽気さかんにして暖かなること天地の内にならぶ方なき国なり」(湿気が多くて暑いってことかな)なのに、「父母愛に溺れ、わが子を絹に包み綿に巻き、熱に熱を添ゆるゆえ」姫が高熱を出したのだと素戔嗚は言う。それを聞いて、近松の認識に感心した。
この後、姫には八岐大蛇の犠牲になる運命が待っていて、周囲が嘆き悲しむ中けなげに己を差し出そうとする姫に、素戔嗚は「はばきりの剣」を渡し、これを脇明けの袖に忍ばせ身を守るように言う。〽太刀を一振りかくせしより、脇明けを振袖とは、この時よりぞ始めける。
なんだそうである。八岐大蛇のくだりだけでは振袖始が何なんだかわからないでいたが、この序幕によってなるほど、とわかった。
八岐大蛇は二幕目になって姿を現す。
魁春さんの岩長姫には玉様と違って悲しみは感じられなかった。物語の筋としては玉様の時と同じなのだろうが、味付けの仕方が違うのか、こちらの岩長姫には美女への憎しみというものが強く感じられた(日本中のきれいな女の子を殺そうとしているのだそうだ、岩長姫は)。魁春さんは時々、歌右衛門さんに似ている! と思った。隈を取った大蛇の化身姿は、女形の役者さんにみられがちな線の細さは感じられなかったが、ぞくぞくくるような恐ろしさというものもまたあまり感じられなかった(歌右衛門さんの岩長姫は見たことがないが、きっとそういう恐ろしさがあったに違いない)。
素戔嗚の梅玉さんはかっこいい。とくに二幕目の舞踊の要素が強くなると、とてもきれいでステキ。
梅丸クンには恋に憧れる少女の初々しさ愛らしさがよく表れていた。ただ、梅玉さんの相手役としてちょっとバランスが悪いかも、と思った。

「曽根崎心中」
苦手な心中ものではあるけれど、亀鶴さんが出るから、と見ることにしたこの演目、とても面白かった。
まず藤十郎さんが初々しい。徳兵衛への思い、死の決意、必死なお初の痛々しいほどの気持ちに、微笑ましい思いがしたり、こちらも手を握り締めて必死になったり。心中しようとする男女にはたいがい、何か苛立たしさを感じるのだが、翫雀さんの徳兵衛にもこのお初にもそういう感覚を全然もたなかった。
亀鶴さんの九平次がとてもよかった。悪役ではあるけれど、惚れているお初が絶対自分には振り向いてくれないことに対する拗ねた気持ちとか、そのお初の思う人が自分の友人であることに対する鬱屈した気持ちなどには、共感を覚えるほどである。おそらく軽い気持ちでしたであろう徳兵衛の意地悪がとんでもない結果を招くことになって膝をガクガク震わせるところなども、よくわかる。
寿治郎さんのお玉の自然な可笑しさに笑い、竹三郎さん(久右衛門)の愛に満ちた悲痛な叫び「死ぬなよ、必ず死んではならぬぞよ」に泣いた。
道行は、2人の愛が死へ向かって昇華していく過程がきれいで哀しかった。
<上演時間>「振袖始」序幕35分(12001235)、幕間10分、二幕目55分(12451340)、幕間35分、「曽根崎心中」100分(14151555

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コメント

そうそうそう!私の思ったことをみんな書いてくださってありがとうございます。
寿治郎さんのお玉、名物って感じですね。声もたくさんかかってました。
竹三郎さんも!!
なんか、あちこちで周りがいいって思う今月です。

投稿: urasimaru | 2011年11月22日 (火) 13時42分

urasimaru様
こんばんは。コメントありがとうございます。
歌舞伎は主役だけじゃ絶対に成り立たないと強く感じるこの頃です。それはもちろん歌舞伎に限りませんが、歌舞伎はとくにその時代の雰囲気が出ないと面白みが半減しますから。
ほんと、今月は周りに目が行きますね。

投稿: SwingingFujisan | 2011年11月22日 (火) 23時34分

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