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2011年11月13日 (日)

脇も主役もいいから面白い「髪結新三」

1112日 顔見世大歌舞伎夜の部(新橋演舞場)
 
早くからわかっていたのに、なぜこの日を取ってしまったのか。諸事情あって、泣く泣く「外郎売」と「道成寺」を諦め「髪結新三」だけの観劇に。
「髪結新三」
菊五郎さんの新三の悪さ、凄み(怖い)、愛敬、色気、どれもがカッコいい。忠七の頭をやり終えて、その肩から手拭をさっと取り払う仕草なんて思わず「おおっ」と声が出そうになるくらいカッコよかった。
菊ちゃんはいい男すぎるキライがあるが、新三のもとで暮らすことが楽しくてしょうがないという感じがよい。新三にも勝奴を可愛がっている様子が見えて、ああこの2人も黙阿弥の悪党たちなんだわ、とちょっと愛おしくなる。菊ちゃんっていい身体しているなと感心するけれど(勝奴の体、大きく見えた)、肩のあたりなど丸みを帯びていて、そこはやっぱり女形なんだなと思う。新三とのカギの遣り取りにはクスリと笑わされた。
白子屋での結納の場面は秀調、萬次郎、権十郎の3ショットがおいしい。秀調さんは手慣れた役で、後にも登場するが、萬次郎、権十郎さんがこれだけというのはもったいない。
梅枝クンは顔が玉三郎さんに似て見えてしょうがなかった。時さまとの恋人役は私にはちょっとくすぐったい。
時さまの忠七は心理描写が丁寧で、好きな女が主筋の娘、どうにもならないところへ新三に唆されて駆け落ちする気になり、新三にだまされたと知って絶望する気持ちの動きがよくわかる。
雨の永代橋の場面が秀逸だと思ったのは初めてかも。黒御簾の太鼓が激しく鳴る、にわか雨に人々が慌てて行きかう、広重の「大はしあたけの夕立」とか、そんな浮世絵が展開しているような気分になった。その雨の中で忠七はびしょ濡れ泥だらけなんだろうなあ。暗い大川の流れも目に見えるよう。弥太五郎源七に救われた忠七が袖から石を取り出して捨てるところで幕が閉まる。忠七はちゃんと生きていけそうだなと思った。
左團次さんの源七は、お熊解放を新三に掛け合いに行き、はじめの余裕はどこへやら、恥をかかされた悔しさが湯気を立てて伝わってくる。にもかかわらず、芝居の邪魔になるほどの熱さではなく、加減がほどよいのがさすが。
菊十郎さんの「かつおかつおっ」が又聞けてうれしい。魚のさばき方にも勢いがある。あんまり鰹は好きじゃない私でも、ちょっと一杯やりたくなる。
家主・三津五郎さんと新三の遣り取りは可笑しくて可笑しくて、三津五郎さんの芸達者ぶりを堪能した。亀蔵さんのおかみさん(亀蔵さんの女形は初めて…だと思う)がまた可笑しい。強欲を絵に描いたようなバッチいお顔で、でもなんとなく愛敬があって。
江戸の町に住む人々の生活が生き生きと描かれるこういう芝居は好き。たとえ、新三のお熊かどわかしがヒドい事件であっても(かわいそうなお熊。いつもお熊は新三のところでどんな目にあっているのだろうとぼんやり想像していたが、今回ははっきりそれが摑めた)。

<上演時間>「外郎売」35分(16301705)、幕間15分、「道成寺」65分(17201825)、幕間30分、「髪結新三」130分(18552105
 
私は1815頃演舞場に着いたのだが、25分になっても終わった様子がない。演舞場前でぼんやりとあちこち眺めていると、タイムテーブルが見えた。「道成寺」の終演が1835になっているではないか。よく見ると、15分の幕間が25分に延長されている。演舞場の人に聞いたら、団体さんが入ったことでこの日だけ10分延長になったそうだ。新三の終演2115は、「外郎売」から見ていたらきつかったかも。
 
おまけ:演舞場に向かう途中、采女橋のあたりで團蔵さんをお見かけしました。

 

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コメント

SwingingFujisan様
今晩は。昨日私も演舞場夜の部見ました。ニアミスでした。
「髪結新三」男の色気あふれる菊五郎を中心とし、脇役まで優れた劇団のアンサンブルの良さを堪能しました。ところで、今晩、NHKBSで「人情紙風船」(日本映画史上傑作との評価がありますね)やりますが、録画予定です。
「娘道成寺」ご覧にならなかったとのことですが、それは残念、残念。夜の部もう一度ご覧になるのでしょうか。菊之助の娘道成寺、素晴らしいです。とにかく、綺麗、そして技術的にも非常にすぐれています。毬歌の足の動きの速さ、各所の中ダメの振り(鏡獅子前シテばりのぐっと腰の落としかた)のきまり、極限までの海老ぞり等々、見どころ満載です。技術が生で出る箇所が多いのですが、私としては、そういう踊りもミーハー的に大いに楽しみました。そして、何より感心したのは、他の誰でもない、「菊之助の娘道成寺」を主張して、成功していることです。まさに若い女性の情念を菊之助の思うまま真摯に表現しています。「恋の手習い」が実に面白い。玉三郎との「二人道成寺」の競演が、どれほど良い影響を与えたのかと感じ入りました。
 

投稿: レオン・パパ | 2011年11月13日 (日) 18時28分

レオン・パパ様
こんばんは。
まあ、レオン・パパ様も昨日ご観劇でしたか!!
道成寺は本当に残念でした。よほど途中からでも入ろうかと思ったのですが、あと10分ほどだからとガマンしていました。ところが昨日に限りあと20分あったんですね。入ればよかった(でも、きっと私の席には誰も来ないからと大向こうの方が座っていらしたと思います)。35分にチケットを切ってもらいましたが、まだ最後の鳴り物と音楽が聞こえてきて、たまらない気持になりました。
夜の部も昼の部ももう一度見ますが、幕見があれば道成寺だけ見たいですわ~。
「二人道成寺」は菊之助さんにとって大きく飛躍するきっかけとなった作品と言えますね。あの作品を見ただけでも、そう確信しました。

「人情紙風船」のこと、教えてくださってありがとうございます!! 気がつかないところでした。急いで録画予約しました(間に合ってよかった)。

投稿: SwingingFujisan | 2011年11月13日 (日) 19時30分

「髪結新三」は本当に良かったですね。劇団力が見事に発揮されていました。権一さんの持ち役だった長兵衛が辰緑さんにバトンタッチされていて嬉しかったです。菊之助の勝奴は鍵をとぼけて隠しているあたり、如何にも良からぬことを考えている小悪党という感じではありましたが、やや鋭すぎたように思いました。
その菊之助はやっぱり「娘道成寺」が素晴らしい出来でした。なんとか時間を作って観てください。
「外郎売」も劇中に松緑の口上があって松助さんの7回忌についても触れていて良かったです。本当は「熊谷陣屋」を当代の松緑、梅枝の相模に三津五郎が弥陀六に付き合うような配役で期待していましたが、楽しみはあとに取って置きましょう。

(PS)「人情紙風船」は確かに髪結新三のお話ですが創作された人物も加わり、原作とは大分趣きが違います。雨のシーンが印象的でした。ただ「前進座」の大いなる財産であることに変わりはないと思います。殆ど映画を観ない小生ですので講評できる資格はありませんけど・・・観る前に解説めいたことをして申し訳ありません。

投稿: うかれ坊主 | 2011年11月13日 (日) 20時30分

うかれ坊主様
こんばんは。昨日に引き続きコメントありがとうございます。
「髪結新三」は季節はずれだし、何度も見ているし…なのに面白くて、季節感のズレも全然気になりませんでした。
勝奴って、難しい役なんですねえ。しかし、すっとぼけて新三をだますあたり、なかなかなものですね。

「外郎売」の口上では松助さんのことにも触れられると聞いていたので赤胴鈴之助にオネツを上げた私としては楽しみにしていたのですが…。「娘道成寺」ともども1回しか見られないのは残念ですが、必ず見ます!!

うかれ坊主様期待の「熊谷陣屋」の配役は斬新ですね。いずれ、それが見られる日がくるかもしれませんね。

「人情紙風船」は映画としての評価が高いようですので、内容は違ってもぜひ見てみたいものだと思っていました。NHKBSでは貴重な映画を放送してくれてありがたいです。

投稿: SwingingFujisan | 2011年11月13日 (日) 23時30分

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