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2011年11月17日 (木)

花形歌舞伎巡業

1116日 松竹花形歌舞伎昼の部(日本青年館)
10
月の「一心太助」に引き続き獅童さんが初代錦之介の当たり役を演じる。華といいカッコよさといい、獅童さんの演技にどんな批判があろうと私はやっぱりステキだと惚れ惚れ。
「瞼の母」
どんなお話かざっとは知っているが、見るのは初めて。ちょっと残念だったのは、音響の面。セリフが時として響いて聞き取りづらかったのと、客席内外の話し声が中にエコー付きで聞こえてきたことでよけい舞台のセリフに集中できないことが間々あった。
獅童さんの忠太郎はやむを得ず博徒の世界に入ったものの、母恋しの思いがまっすぐな道を進ませる。弟分半次郎に足を洗わせたのも、半次郎に「母」がいたからである。半次郎の宗之助さんは立役でもうまいなあと思った。
母を探して歩く中、忠太郎は3人の老女に出会う。1人目が半次郎の母おむら(松之亟)、2人目が三味線弾き(蝶紫)、3人目が夜鷹のおとら(徳松)である。この老女役の3人の役者さんがそれぞれに味を出して獅童さんを引き立てる。おむらは、博徒の世界に息子を引き込んだ忠太郎を恨んでいたが、忠太郎の本当の気持ちを知ってすっとその恨みは消え、温かい気持ちを注ぐ。半次郎の家の庭先でヤクザものを2人殺したことで半次郎一家に迷惑がかからないようにと、一筆書く場面では、字が書けない忠太郎の頼みをきいて後ろから手を持って筆を進めてやる。そこに母の匂いをかぐ忠太郎。泣けた。
三味線弾きが蝶紫さんとはわからなかった。この老婆も子供とのつらい別れがあって1人細々と江戸の町の底辺で生きている。巡り合った母が万が一苦しい生活をしていたらあげようと、博奕で稼いだ金をためていた忠太郎は三味線弾きに金を与える。その気持ちが切ない。ところで、このおばあさん、忠太郎に年齢をきかれて「65」と答えるが、その途端、客席からどよめきが。80くらいに見えたから? でも当時の年齢としては、また日々道端で三味線を弾いて駄賃をもらうような生活をしていたら、あのくらい老けて当然だろう。
出色だったのは徳松さん。松也クンの勉強会で見てからちょっと親しみをもっている。その徳松さんがこういう役を演じるのは嬉しい。こちらも底辺で暮らす夜鷹、しかも年老いた夜鷹だから、まともに扱ってもらえない。そういう寂しさ、不貞腐れなどが忠太郎の心に触れて解けていく。「人間らしい扱いをしてもらったのは初めてだ」と泣くおとらにこちらも涙。最後に忠太郎から1両もらって、涙ながらに去っていく。徳松さんだけが通路を使って引っこむのだが、途中何度も何度も立ち止まっては頭を下げるものだから、しまいには微笑ましい笑いが客席に沸いた。
さて、いよいよ忠太郎の本当の母おはま(忠太郎の心配とは逆に、料理茶屋水熊の女将として不自由ない生活を送っている)が登場するが、秀太郎さんのセリフが私にはあまりよく聞こえてこず、非常に残念だった。そのためか、忠太郎を我が子だと確信しながら冷たく突き放すおはまの気持ちも、思い描いていた母との再会がまったく逆の形になってしまったことへの忠太郎の絶望も、忠太郎を追い返したあと、娘のお登世になじられてそれを後悔し忠太郎を呼び戻そうと後を追うおはまの必死さも、意外と伝わってこなかった。母ではなかったこれまでの3人の老女たちとの触れ合いで泣けたのだからここはもっと泣けるだろうと思ったのに、全然泣けなかった。クライマックスの割にはあっさりしすぎているような気もしたが、そういうものなのかな。
それでもラスト、自分を呼ぶおはまとお登世の声を耳にしながら「会ってやるもんか」と口に出し、瞼を閉じて母の面影を偲ぶ忠太郎の思いはわかったような気がした。
お登世の笑也さんが愛らしく大切に育てられたお嬢さんのおっとりした感じがとてもよかった。やっぱり奇跡の52歳だわ。



うんと年上のおはまの婿として水熊に入り、店を乗っ取ろうと企んでいる金五郎(男女蔵)がもうちょっと深く描かれているともっと面白かったかもしれないが、結果として忠太郎が水熊の危機(?)の芽をつぶしたことになるわけか。
 
金五郎が雇った刺客として由次郎さんが最後にちょいとだけ登場するが、こういうちょい役でも、体にまとわりつく悪い生活の匂い、胡散臭さが実によく出ているのはさすがのうまさだと感心した。でも、忠太郎にいつ斬られたんだか、わからなかった(あの時かなという場面はあるんだけど…)。
 
肝心の場面での物足りなさはあるものの、脇の役者さんの好演も手伝って、獅童さんの華が活きたし、忠太郎はこれからも獅童さんの当たり役として上演してほしいなと思った(太助もね)。
 
「お祭り」
 
鳶頭の獅童・男女蔵、芸者の笑也・宗之助に若い者として千志郎・獅一・富彦・獅二郎の4人が絡む。こういう踊りは出演者の華を楽しめばいいと思って気楽に見た。
 
「待ってました」の掛け声にすかさず「待っていたとはありがてえ」の獅童さん。この「待ってました」は必ず誰かが掛けるって決まってるのかななんてつまらないことを考えた(だって、掛からなかったら次のセリフが出せないでしょ)。
 
イキのいい獅子舞を男女蔵さんが見せる。
 
芸者の2人はきれいで華やか。
 
若い者の立ち回りが楽しい。三点倒立って案外むずかしいようだけど、今日の2人(どなただったかしら)はとてもきれいに倒立していた。
 
楽しかった。
 
<上演時間>「瞼の母」105分(14001545)、幕間20分、「お祭り」20分(16051625
おまけ① 獅童さんのお母様がいらしていた。お顔を拝見するのは「淋しいのはお前だけじゃない」以来かな。「小栗判官」のときに獅童さんが「さっきまで母親があそこにいて」と言っていたけど…。
おまけ② 獅童さんもブログを始めたのね。獅童さんのHPから見られます。
おまけ③
 プログラムの役者さん紹介文が楽しい。

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