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2011年12月12日 (月)

じわじわ満足感:平成中村座12月夜の部

129日 平成中村座夜の部(平成中村座)
またまたレポが遅くなっちゃって…。でも見終わってすぐより、じわじわと満足感が広がっている。
「葛の葉」
私にとって葛の葉は藤十郎さんであるが、数カ月ほど前から気になっている扇雀さん(いいと思って見るからいいのか、そのよさにこれまで気づかなかっただけなのか)もとてもよかった。子供への愛情、別れの悲しみがひしひしと感じられたし、狐になってからの動きも自然に見えた。見せ場の曲書きは全体に文字も悪くなかったと思う。
保名は松也クン。扇雀さんとのバランスを懸念したが、それは杞憂に終わった。丁寧で、狐であろうと愛し続ける純粋な気持ちが強く心を揺さぶり、妻に去られた悲しみには思わずこちらも涙を誘われた。こういう大きな役でまた一段と成長してほしい松也クンである。
保名の立ち回り、そして保名の引っこみの後スッポンから再び現れ狐の装束になっての葛の葉の立ち回り、と2度立ち回りが楽しめたのも嬉しかった。
子役ちゃんも愛らしく、夫婦のこれまでの生活の理解と別れの悲しさを盛り上げた。
ひとつ残念だったのは、葛の葉のクドキの最中にかなり長い間ヘリコプターのプロペラ音にジャマされたこと。中村座という小屋の性質上、周囲の様々な音が入ってくるのはやむを得ないし、それもまた芝居小屋の風情の一つではあろうが、セリフが聞こえづらくなるのはもったいない。私は舞台に近かったからそこそこ聞こえたけれど、集中がやや損なわれた。
「積恋雪関扉」
以前見た時は大半寝てしまい、ストーリーもよくわからないで面白くない演目だと思ったが、今回は少し面白みがわかったような気がする。ただ、やっぱり途中眠くなって(舞台横から見ているから途中物足りなさを感じたのが原因のひとつ)、でも居眠りできる席ではないので、必死で堪えた。
勘太郎さんの関兵衛は、最初から悪人顔でいかにも何かありそう。そんな人となぜ宗貞(扇雀)が一緒に暮らしているのかよくわからない。それはともかく、その後の展開を見ていくうちに、この役はやっぱり吉右衛門さんかなあと思ったのは、前に見た吉右衛門さんの味が残っていたからかな(前回寝ていた割にはその辺は忘れていない)。
いや、勘太郎さんの関兵衛も大きさ、凄みは十分でよかったのだけれど、もうちょっと大らかさやまろみみたいながあってもいいのかなと思った。
宗貞は前回染五郎さんだったのだけど、全然覚えていない。今回の宗貞は、勘太郎、菊之助、七之助と若手の中にあって最年長の扇雀さんだが、さすがに味わいが一番深いように感じた。4人とも声のいい役者さんであるが、立役の扇雀さんの声には独特のまろやかさと深みがあって好きである。
七之助さんの小町姫がハッとするほど愛らしい。恋人宗貞に対する気持ちもよく表れていた。
菊之助さんの墨染がまた美しい。多分前回よくわからなくなっちゃったのは、前回小野小町姫と墨染を福助さんが二役でやったからなんだと思う。しかも墨染は小町桜の精でもあり、小町姫と墨染を同一人物として意識してしまったのだ(そういうところもなぜか覚えている)。今回は2つの役が分かれたことで、自分の間違いに気づいた。菊之助さんの墨染は艶やかで、哀しい。そして関兵衛実は大伴黒主との対峙には恨みが籠り凄まじさを感じた。菊ちゃんは立役もいいけど、やっぱり女形よねえ。

「松浦の太鼓」
やっぱり女形よねえ、と言いながら菊ちゃんの大高源吾に惚れ惚れ。ちょっと優男すぎるかなあとは思うもののそれは見た目だけで、芯にある気持ち、付け句として其角に預けたその心にしみじみ感じ入った。討ち入り姿も凛々しく晴れ晴れしくすがすがしい。それにしても、源吾のなりのいかにも寒そうなこと、この演目に限らず、雪の場面の町人は寒そうな格好で歩いているが、源吾には格別その感を強くする。それがこの芝居における浪士の生活ぶり、立場を表しているのだろう。
彌十郎さんの其角に温かみ、ユーモア、味わいがあって非常によかった。お縫を巡っての勘三郎さんとのやりとりは呼吸がぴったりで絶妙。
過去3回見ているのに、松浦公で強く印象に残っているのは最初に見た勘三郎さん。その後吉右衛門さんで2度見ているのにほとんど記憶にない(申し訳ないっ)。なんとも我儘なお殿様ではあるが、勘三郎さんの愛敬もあり、その理屈を聞いてなんとなく「しょうがないな」と思ってしまう。山鹿流の陣太鼓が聞こえてきた時の喜びよう(あんなに待ち望んでいたのだから太鼓のリズムを指折り数える前に気がつけ、ってナンセンスツッコミ)も、こちらまで一緒になってウキウキしてしまう(思わず拍手がきたもの、観客みんなおんなじ気持ちになるのよね)。
勘三郎さんは煙管に火をつけた時だったか、火鉢の縁に飛び散った(ことになっている)灰を丁寧に指で拭いて火鉢の中に落としていた。そういう細かいところに、この殿様の性格が表れているのかもしれない。それにしても、この殿様、やたら煙管にタバコを詰めてスパスパやっていたなあ。これも殿様のイライラを表しているようで面白かった。
七之助さんの縫が可憐で、殿様の勘気解けず其角とともにしょんぼりお城を去ろうとする姿が哀れであった。討ち入りの助太刀をすべく支度している松浦公のもとへ女ながらの勇ましい姿で登場した縫、それがまた可愛らしかった。
こういう後味のいい楽しい演目で終わるのは気分がいい。
今回もスカイツリービューサービスがった。ラスト、舞台奥の扉が開き、外には足軽が2人(隆松さんと、もう1人はどなただったかしらごめんなさい)控えていた。こちらは本物の寒空の下に立っていたので、幕が閉まって戻ってきた2人は本当に寒そうだった。桜席はスカイツリーが見えないのがちょっと残念。
<上演時間>「葛の葉」60分(16001700)、幕間20分、「積恋雪関扉」95分(17201855)、幕間25分、「松浦の太鼓」75分(19202035

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