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2011年12月 5日 (月)

初南座、初顔見世:昼の部

121日 吉例顔見世興行昼の部(南座)
11120501minamiza 本当は初日の昼の部を見たかったなあと思ったけれど、2日目は先斗町の芸舞妓の総見とかで、左右の桟敷席にきれいどころがずら~り。付加価値がついて嬉しかった。開場前の入口前では、報道陣が3人の芸舞妓さんたちを熱烈撮影。路上に寝そべってレンズを向ける熱心なカメラマンもいて、南座の人も感嘆していたのが興味深かった。
「寿曽我対面」
「対面」といえば様式美と思っていたら、この「対面」は非常にドラマ性に溢れていて面白かった それは多分、セリフに感情が籠っていたからではないだろうか(私にはそういうふうに聞こえた)。たとえば秀太郎さんの舞鶴、声を張り上げてゆっくり喋ったり、ちょっと低めに落して早口気味に喋ったり(いわゆる秀太郎節っていうか、特有のセリフ運びね)、そういう変化のつけ方に舞鶴の気持ちが感じられたし、我當さんの工藤祐経にも単なる様式を超えた感情がにじみ出ているようであった。我當さんは高座に移動するときに黒衣さんの手を借りていた。私も膝を痛めているからわかるのだが、立ったり座ったりの時が一番つらいんだと思う。階段を下りるときハラハラしたが無事に高座に着いてほっとした。我當さんは夜の部の五右衛門でも大きさを見せたが、祐経も度量の大きさを見せて、とてもよかった。
愛之助さんの五郎は若々しく力強く、とても素敵。孝太郎さんの十郎は常に五郎が暴走しないように見守りつつ、隙あらば工藤を狙おうという意気込みが感じられた(この、見守るっていうのがまたドラマ性を高めているような気がした)。兄弟が河津三郎に似ている、と工藤が言ったとき、2人が思わずといった様子で顔を見合わせたのには初めて気が付いた。
このあと、後ろの襖があき、バック中央に富士山、下手に紅梅、上手に白梅が1本ずつあしらわれていたが、これは江戸の「対面」にはなかったような…。なかなか風情があってよかった。
「お江戸みやげ」
さんざん笑って泣いてほのぼのした気分になったのは今年の4月のことだったのね。早いなあ、時間の経つのは。演舞場で上演された時と同じ三津五郎(お辻)・翫雀(おゆう)コンビだからとても楽しみにしていた。
幕あき、茶店の緋毛氈に腰かけている竹三郎さんがイキだこと。でも、この文字辰って、この物語ではお紺の母親でありながら敵役なんだよね。あのいつも温情溢れる竹三郎さんのこんなイヤな女役は興味深い。竹三郎さんは声が温かいという印象をもっていたが、敵役としての声には温かみがなく、「おお」と思った(文字辰に温情があっちゃいけないでしょ)。
権十郎さんの鳶頭も文字辰側の人間だから敵役なんだけど、いかにも江戸の空気を漂わせてカッコいい。亀三郎さんに顔が似ていると初めて思った(やっぱり親戚だ)。
右之助さんの茶店女中お長は儲け役ではあるが、世話焼きな庶民性を出しつつ品性などを崩さない、いい感じであった。
吉弥さんののんべの役者が面白い。いかにも酒好きで役者らしさも見せ、ちょっとだけの出番であっても存在感たっぷりだった。
お紺の梅枝クンは世間知らずで一途な町娘ぶりが愛らしかった。孝太郎さんのお紺は気の強さが前面に出ていたが、梅枝クンはややおっとりしていて、同じ一途さでも自分で自分の道を切り開くというよりは、ただただ栄紫についていきたい、という心持のような気がした。
愛之助さんの栄紫に役者らしい柔らかさと色気があり、一見女たらし風なのにとても誠実で、人間の心の機微がわかる男っぷりのよさ、あの堅物のお辻が惚れてしまうのもよくわかる。上方で幸せになってほしいと私も願う。
三津五郎さんのお辻は、襖越しに栄紫とお紺の窮状を知り、何とか助けたいと金を出すに至る心の動きがよく表現されていた。こちらもお辻の気持ちに同化して胸がドキドキした。お辻の金に厳しい面や頑なさは演舞場のときのほうがもっと手ごわかったような気がした。
いっぽうの翫雀さんのおゆうも演舞場のときに比べて、がちゃがちゃした騒ぎ方がややおとなしかったかも。しかしその分、おゆうの大らかなあたたかさが見えて、この2人は本当にいいコンビだと思った。三津五郎・お辻も翫雀・おゆうも大好き!!
物語のよさもあり、ラストは再びお辻の気持ちに同化して涙涙。

「隅田川」
食後にこれはつらい(開演も通常より30分早いしねえ)。ごめんなさい。
人買いに攫われた子をはるばる追って隅田川までやってきて、その死を知った母親(藤十郎)の悲嘆は、子を持つ親なら我がこととして捉えることができる。子も哀れであり、残された母親はもっと哀れである。
その母親をいたわる舟長(翫雀)のあたたかさが身に染みる。
「与話情浮名横櫛」
とにかく仁左様がステキでステキで。片裾をからげるカッコよさ。胸を反らせてつかつかと歩く姿のカッコよさ。とくに源氏店で蝙蝠安が先乗りしている間、柳の下で所在なげに(やんちゃな感じもあり、寂しげでもあり)足元の石を蹴ったりしている仁左様の姿の絵になること!! もう、この立ち姿を見られただけでも幸せlovely 
しかし仁左様はただ外見がステキなだけではない。胸を反らせて歩く姿は見染めから3年後、そこに与三郎転落の人生が感じられる(このつかつか歩く姿は、他の芝居でも見られる――「夏祭」の一寸徳兵衛とか色々――が、同じようでもそこに現れる人生は違う)。柳に寄りかかっている姿には寂しさ、侘しさみたいなものが漂う。与三郎という人間の内面まで表しているのだ。
その隣でひょこひょこ卑屈に歩く蝙蝠安の卑しさ。人間、固定観念を捨てるというのは難しく、菊五郎さんがこんな…とはじめはちょっと引いたが、だんだん菊五郎という役者と蝙蝠安という役のギャップが面白くなってきた。ご本人の希望で演じることになったそうだが、与兵衛にお富、そして蝙蝠安と1人で全然違う3役をやるなんて菊五郎さんにしかできないだろう。
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両をせしめて花道を引っこもうとする2人は南郷と弁天みたいで微笑ましい。
時様は見染めの場ではそんなにきれいだとは思わなかったが、源氏店で風呂上りに化粧をしているところを見て、「ああ、これは女が化粧しているんだ」という感慨を覚えた。そして多左衛門と与三郎のやりとりの間ずっと背中を見せているその後ろ姿がとても色っぽかった。
多左衛門の左團次さんに妹を思う気持ちが感じられ、お守りを見て「そんならお前は私のアニさん」と縋るお富を見る目のやさしさに泣けた。
松之助さんの番頭藤八が大活躍。
菊五郎・仁左衛門・時蔵トリオは「盟三五大切」以来かしら。今回は三角関係ではないけれど、なんか複雑な気分。ラスト、仁左様が「もう離さない」と時様を抱きしめたときは、こっちがテレてしまったわcoldsweats01
なんか、大人の芝居っていう感じで堪能した。
<上演時間>「対面」45分(10301115)、幕間20分、「お江戸みやげ」65分(11351240)、幕間30分、「隅田川」45分(13101355)、幕間20分、「与話情浮名横櫛」80分(14151535

「対面」で十郎と五郎が花道で決まっているときに、なんとケータイが!! これだけ事前に注意を受けているのに、まだ鳴らす人がいるんだなあ。と呆れていたら、次の「お江戸みやげ」でも着信音が。同じあたりだったので、さすがに劇場の人が飛んできて電源を切ってもらっていた。自分への戒めも込めて、携帯はせめて鳴らさないようにしましょう。

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コメント

いいな、いいな、と南座レポ夜・昼を拝読。特に切られ与三は、読みながらいろいろ想像(空想、妄想?)しちゃいました。これ、ほんと見たかったですっ。
先斗町の総見、思わぬ「遠征ご褒美」というところで、よかったですね。私も偶然、総見の日に当たったことがあって、いっそうワクワク度が増したことを思い出しました。
その一方、恐怖の「隅田川」(爆)の記憶がよみがえる・・・。私の初・南座は海老蔵襲名披露の「助六」の時で、その「助六」の前に、なぜ「隅田川」!?だった記憶がぬぐいされないのです。藤十郎さんにも「隅田川」にも申し訳ないとは思いつつ。ええ、ミーハーのたわごと、です。

投稿: きびだんご | 2011年12月 5日 (月) 23時50分

きびだんご様
おはようございます。
いいでしょ、いいでしょ[e:wink]
でも海老蔵襲名で南座にいらしたなんて、もっといいないいな!! 時間は戻せないし…南座での「助六」、どんなにか素敵だったでしょうねconfident 

きれいどころが観劇するという話は聞いていましたが、実際に目のあたりにすると、顔見世が冬の京都の風物詩であること、京都にとって大事なイベントであることが実感できました。

「助六」の前に「隅田川」ねえ…でも「助六」の後でなくてよかった?coldsweats01 私は南座の翌年の歌舞伎座で一度見ているのですが、つらい舞踊だなあとその時も感じたように覚えています。ハッピーエンドの良弁様と思い比べると、母親の哀れさがよりつらくなってきます。

菊五郎さんの蝙蝠安、ほんとババっちかったですsmile これからもこんな汚れ役やるのかなあ。面白いかもしれないけれど、私はやっぱり粋できれいな菊五郎さんを見たいですわ。
柳の仁左様は、「対面」が錦絵なら墨絵のような印象でした。

投稿: SwingingFujisan | 2011年12月 6日 (火) 09時57分

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