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2012年1月29日 (日)

楽しい俳優祭に感謝!!

128日 東日本大震災被災地復興支援第36回俳優祭(国立劇場大劇場)
チケット発売日、スカイライナーの中から一応携帯でチャレンジしてみたのだけど、まったくつながらず。成田空港では携帯と公衆電話の両方で頑張り、やっとつながったと喜んだのも束の間、すでに完売になっていた。ま、最初から諦めていたのだし…ところがなんと運よく知り合いから声をかけていただきチケットが入手できたのです(何も予定入れてなくてよかったよ~)!! 申し訳ない、そして感謝!! 喜び勇んで国立へ。席は決まってるんだし早く行くことはないと思いつつ、でも売り場の下見をしておきたいと、開場の15分前に到着。甘い甘い、もう劇場の角を曲がった先まで列ができていた。とはいえ、やっぱりそんなに焦る必要はないのであった。
「絵本太功記 尼ケ崎閑居の場」
俳優祭ならではの配役だろう、十次郎に七之助、初菊に梅枝という何とも初々しいカップル(後で、日本俳優協会会員の研修発表として、次代を担う花形に演じてもらったということを知り、ナットク。今月は研修発表が3つもあったことになり、それは喜ばしいことだと思った)。七之助さんは凛々しくも儚げな風情で、光秀の嫡男としてやらねばならぬことと初菊とともに築いていくはずだったこれからの人生に対する無念との板挟みに苦しむ気持ちが窺え、あたら若い命を散らすことに哀れを覚えた。梅枝クンはひたすら十次郎を思い、それだからこそ別れを嘆いてばかりはいられない、妻として夫をしっかり見送らなくてはとわかっていながら、やはりこの悲しみは耐え難いという愛と悲しみがひしひしと伝わってきた。七之助さんは都会的なイメージがあったが、この十次郎は人形のように古風で、梅枝クンとともに十分義太夫にものっていたと思う。ともに命の火を消そうとしている祖母・皐月の顔を一目見たい。でももう目が見えぬ…この前のお三輪もかわいそうだったが、こういう場面には泣かされる。しかし最期は母親より妻なのね…。
光秀は染五郎さん。線の細さはやはり否めないものの重厚感はあったし、竹本に合わせて無言で芝居をする前半の光秀は大きく見せていたが、もう少し凄みがほしかったのと、後半声がもうちょっと自然に出るともっとよかったかもしれない。しかし手負いの十次郎が戻ってきたときに見せた息子への愛情には胸を衝かれるものがあった。十次郎を励まして戦況を聞きだそうとするのではあるが、そういう中にも愛情が感じられたのだ。また、母と息子の死によって悩みは吹っ切れ、何が何でも戦わねばとの強い意志が見えるような気がした。
松緑さんは出番が少なくその中で久吉という人物を見せなくてはいけないので難しかっただろうが、旅僧の出も久吉の出もよかったと思う(染五郎さんとのコンビは「石川五右衛門」だねっ)。
秀調さんの芸はわりとあっさりしているように普段思っているのだが、皐月の心がよく伝わってきたし、操の孝太郎さんの姑を思う気持ちに心打たれた(孝太郎さん、この日の朝の「ぶらり途中下車」の旅人でしたねえ)。
佐藤正清の亀三郎さん、足の親指をきちんと上にあげていたのが印象的だった(90度立ってるという印象)。こういうのは気持ちいい。
前々日まで各座で本公演に出演していた面々がわずかな日数の稽古でこれだけしっかりまとめてくるとは、歌舞伎役者恐るべし。わりと眠くなりがちなこの演目だが、今回はとても面白く見た。
模擬店の説明:幕間のあと、梅玉さんによる模擬店の説明。画廊は前回苦情が出たので、今回は入札制にしました、とのこと。早い者勝ちだとご年配の方には不利だという苦情だったよう。で、今回入札制(入札抽選)なのは押し隈だけで、役者さんの色紙は早い者勝ちになります。という説明だったが、私が事前に係の人に聞いた話では、色紙は希望者が複数いたらじゃんけんで決めるとのことだった。そして実際、その通りになり、じゃんけんに弱い私は悲哀を味わうのであった。
「殺陣 田村」
新國激の創始者・澤田正二郎が作った殺陣を袴姿の勘太郎・海老蔵・扇雀・橋之助がそれぞれ見せる(4人の相手は名題下の面々)。「田村」は謡曲「田村」のことだそう。
歌舞伎の殺陣は形式的な立ち回りであることが多いが、新國劇の殺陣はスピーディで迫力がある。
まずは勘太郎さん、棒を使う相手をものともせずに斬り捨て、悠然と去る。
海老蔵さんは相手の首に刀を当てて冷酷に斬る。最後に勘太郎さんが再び出てきて海老蔵さんとすれ違いざま、2人は刀を交える。勝負はつかず、2人は去る。海老ちゃんの赤い鞘が目に残った。
舞台に敵が9人。すると花道から扇雀さんが薙刀を持って登場。女形の印象が強い扇雀さんだが、私は立役のほうが好きで、薙刀の扇雀さんもステキ。
扇雀さんが引っこむと上手から刀を構えた8人が腰を引き舞台へ後ずさりしてくる。8人を押し出しているのは橋之助さんだ。その後ろにも1人いる。橋之助さんは二刀流も見せて敵を倒す。
形が一番きれいだったのは勘太郎さんだったと思う。橋之助さんは時代劇の殺陣のようでドラマチックだった。
最後は全員が舞台に並んでご挨拶。激しい斬り合いだからこれも稽古が大変だっただろう。男の殺陣のカッコよさを堪能した(立師は橘太郎さん)。

「模擬店」
 
幕が下りるや、まずは2階の画廊へダッシュdash 錦之介さんが仕切っていた。色紙コーナーは3区画に分かれており、一番左から順に1枚ずつ決めていくという。でもそれじゃあ時間がかかって仕方ない。というわけで、途中から3区画それぞれが同時に進行することになった。私は亀治郎さんの色紙がほしかったのだけど(だって、亀治郎という名の色紙を入手できるチャンスはおそらくこれが最後でしょう)、あえなくジャンケン1発で沈没down ところが5枚あるうち決まったのは4枚(つまり、最後まで残った人が4人だった)。で最後の1枚をめぐって3人でジャンケンしたのだけど、これも1発でKOpunch ほんと、ジャンケンに弱いのよ、昔っからweep
 それでも彦三郎・亀三郎・亀寿さん連名のサイン色紙(これも最初ジャンケンで負けたんだけど、もう1枚同じのがあってこっちは無競争でゲット)と市川右近さんの色紙をいただくことができた。そうそう、もっと後になって翫雀さんのサイン色紙も購入。私が歌舞伎にハマるきっかけを作ってくれた知り合い--翫雀さんの慶応の同級生で、翫雀の会を通してチケットを取ってもらった--に自慢しようと思って。もっともその知り合いは歌舞伎にはまったく興味がないらしいbleah
 
一応目的は達したので、ここからはミーハー精神フル回転であっちこっちをうろうろrun 3階の被災地物産コーナーには右近さんや笑也さんがいた。実は開演前にここで買い物をしてしまったので何も買わないつもりだったのだが、笑也さんの魅力に負けてlovely鯨の大和煮缶詰を1つ購入(後で見たら、石巻からの出品でした)。そうしたら笑也さんがツーショット写真を撮りましょうと言ってくれて、私としてはこんな美形と並んでなんて畏れ多かったのだがせっかくなので撮っていただいたscissors
 
あとは團蔵さんのところで木村屋のあんぱんを買い、勘太郎さんのところでお酒を買い(勘太郎最後のサインを箱にいただけました)、どえらい荷物になってしまった。
 
時間も迫ってきたころ、2階食堂前で亀鶴さんheart04と壱太郎クンがフランクフルトを声を嗄らして売っていた。剽軽な亀鶴さんは自らフランクを頬張りながら「おいしいおいしいdelicious」と言って宣伝するのだが、写真を撮る人はいても財布を出す人はいない。私もどうしようと迷った末、そういう食べ物はすぐに口に入れなくてはいけないので申し訳ないながら撮影組で。でも、後でみたら、完売したみたいでよかった。
 
猿弥さんや春猿さんがいないと思ったら、私がそっちのほうへ行きそびれただけだった(1階下手の側の売店、気づかなかった)。久しぶりに月乃助さんのお顔も見たかったのに残念bearing
次の演目に出る役者さんは模擬店にはいなかったか、早めに引き上げたかも(仁左様と勘三郎さんの姿は見た)。
 
人込みの中あんまりあっちこっち歩いたので大汗をかいてしまったわsweat01
「質庫魂入替(しちやのくらこころのいれかえ)」
 
一番楽しみにしていた演目。
 
雨の日になると宝珠屋という質屋の質庫から声がするという(そういう話を三津之助さんと新十郎さんが質庫のそばで話している。新十郎さんの持つ提灯には「俳優祭」と書かれている)。宝珠屋は様々な古道具を集めているのだそうだ。
 
やがて質庫の中へと場面はうつる。そこには鉞の精・金時(團十郎)、太鼓の精・雷神(左團次)、兜の精・八重垣姫(魁春)、羽織の精・通人(勘三郎)、苧環の精・お三輪(時蔵)、文箱の精・禿(三津五郎)、枕の精・宿場女郎(福助)、金冠の精・平将門(仁左衛門)、男雛(菊五郎)、女雛(芝雀)がいておしゃべりをしている。
 
團十郎さんのおかっぱ金時(金太郎の腹掛けもしている)に場内爆笑。一番拍手が多かった。仁左様は声がちょっとおかしいなと思ったら、あとで咳をしていて心配したが、その後立ち直ったのでほっとした。福助さんのセリフで笑いが起きたけれどよくわからなかった。團十郎さんが男雛を見て「この人形がさっきから何か言っている。代弁しよう」。「昨日飲み過ぎた。早く京都に行きたい。この俳優祭はまじめすぎてつまらない」なんて言うから可笑しくて可笑しくて。團十郎さんはセリフが怪しい時もあったけれど、それも團十郎さんらしいご愛敬で楽しい。左團次さんの雷神も姿がめちゃくちゃ可笑しくて見ているだけで笑える。
 
やがてスッポンから奇妙印(梅玉)という法印が現れ、真言秘密の一巻を使って古道具たちの魂を入れ替えてしまう。金時がお三輪に、お三輪が金時に。雷神は禿と入れ替わり、通人と八重垣姫が入れ替わり、女郎の色気にやられた将門は女郎と入れ替わり。奇妙印も一巻を奪われて魂を入れ替えられ…。もう何が何だか…。女になった梅玉さんと男になった魁春さんの紙相撲がめちゃくちゃ面白かった。姿は立派な将門の仁左様がなよなよと女踊りをして福助さんを「こわいこわい」と言うのがまた可笑しくて。福助さんはこういう時は弾けまくって本領発揮。美しい姿で大股開いて鬘を落とさんばかりに(smile)将門の凄みを出す。仁左様が「こわいこわい」と逃げるのもわかる。後ろで見ている役者さんたちも笑っている。そんな中で三津五郎さんの踊りは秀逸。
 
最後は元に戻ってみんなで総踊り。これがなんだかゆるくて(仁左様とかちゃんと覚えていないみたいだった)、可笑しくて可笑しくて、楽しくて楽しくて。こんな顔合わせは無理だろうけど、本公演でもぜひやってほしいな。
 
ご挨拶:藤十郎さんと水谷八重子さんが舞台に出て、藤十郎さんがお礼のあいさつ。国立劇場の方が物のわかった方で俳優祭ができた。収益金はすべて寄付するとのこと(少しは貢献できたかな)。途中であれあれあれな方向へいきそうになったけれどちゃんと軌道修正してお茶目な藤十郎さんだった。最後は手締めで。
 
<上演時間>「尼ケ崎閑居」73分(16301743)、幕間20分、「殺陣 田村」14分(18031817)、模擬店60分(18171917)、幕間5分、「質庫魂入替」40分(19222002
 
実際は模擬店が少し長引き、「質庫魂入替」が始まったのは1930だった。
 
こんな楽しいひと時を過ごせたことに感謝感謝です。
なお、3月9日、NHK Eテレ「芸能百花繚乱」でダイジェスト放送があるようです。

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コメント

SwingingFujisan様! 会場にいらっしゃることは、他所様より伺っていたのですが、場内でお会いできず、残念でしたー! でも、戦利品があったことも伺って、よそながら喜んでおりました(笑)。私はビール片手に食い気に走っておりました(苦笑)。
本当に楽しかったですねぇ。国立は広いので、本当にワンダーランドでした。エスカレーターやエレベータがあるので、ご年配の方々はじめ、移動がスムーズでよかったですよね。
また機会がありましたら、思いでを語り合いたいですわ!

投稿: はなみずき | 2012年1月29日 (日) 13時41分

はなみずき様
続けてありがとうございます!!
はなみずき様がいらっしゃることは私もお聞きしたのですが、お目にかかれませんでしたわねえ。残念。
はなみずき様はビールでしたか!! あの場で飲むビールは格別でしたでしょう。揚げたこ焼きにフランク、焼き鳥、焼きそば、から揚げ、ポテトとおつまみも豊富でしたものね。それに国立は食べ物を頂くにもあまり窮屈でない感じでしたね。国立での俳優祭ほんと、おっしゃるようにワンダーランドで、時期がよければ模擬店など外を使ってもいいのではないかしらと思いました。
楽しかった思い出をまたいつか語り合いましょうね!!

投稿: SwingingFujisan | 2012年1月29日 (日) 14時58分

羨ましいですね。
チケットはキャンセル戻りの出る日(そのまたキャンセル戻りの出る日)にも電話しましたがNGでした。
1/28は4世中村時蔵が亡くなった命日。
1962年1月28日ですからちょうど丸々50年目の日。ひたすら追悼しておりました。
ちょうど「澤村田之助むかし語り」を読んでおりましたら、4世のお話がところどころに出てきて嬉しかったです。
昭和36年7月の東横ホールで来日中のチャップリンと一緒に写る4代目さんの維盛が紹介されております。
お里が田之助さんで権太が富十郎さんでした。

投稿: うかれ坊主 | 2012年1月29日 (日) 21時59分

うかれ坊主様
チケットを入手できなかった方には本当に申し訳ない気持ちです。今回は1回公演でしたのでよけいチケット入手が困難なようでしたが、私のそばの座席が1つ空いており、突然来られなくなったのか当日券が余ったのか(そんなことがあるかしら)、もったいないことだと思いました。
3月のNHK Eテレをお忘れなく。

時蔵ファンでありながら、先代のご命日のことは存じませんでした。ほんと、ちょうど50年なんですね。お命日のことを思いながら昨日の舞台を甦らせますと感慨も一入な気がします。梅枝丈がしっかり萬屋の芸を受け継ぎつつありますから先代もご安心なさっていることでしょう(でも梅枝丈は4代目よりも3代目に似ていますね)。

田之助さんの本はまだ購入もしておりませんが、来月あたり時間ができたらぜひ読みたいと思っています。と言いながらなかなか本を読まない自分に呆れております(子供~若い時は活字の虫だったのに)。

投稿: SwingingFujisan | 2012年1月29日 (日) 23時54分

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