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2012年1月16日 (月)

アツくなれなかった「三人吉三」

114日 「三人吉三」「奴凧廓春風」(国立劇場大劇場)
あまり心惹かれなかったのだが、やはり新年の国立劇場も見ておくべきかなというわけで、発売日をだいぶ過ぎてからチケットを取った。
「三人吉三」
以前に松緑・和尚、愛之助・お坊、菊之助・お嬢で見た「三人吉三」には胸がアツくなり、心が昂揚して、この3人が肩を寄せ合って生きる様に涙が出たものだが、今回の芝居にはそういう感動がまったくと言っていいほど湧いてこなかった。お坊とお嬢の間に流れる悲しくも美しい、限りなく友情に近い愛情のようなものもないし、「会いたかった会いたかった」と手を取り合う2人の燃え上がるような熱さもなく、「会いたかった」が通り一遍の挨拶程度にしか聞こえてこなかった。2人の気持ちが妙にあっさりしていて、熱さも深みも感じられないのだ。もちろん、必要以上にべたべたしたらかえって気持ち悪いが…。
福助さんはきれいだが両性具有の妖しい色気という点では…(これは菊ちゃんにしかないものかもねえ)。声も作り過ぎかなと思う。「男」を意識し過ぎなような気がした。
染五郎さんもかっこいいんだけど(駕籠から降り立った姿がステキだった。でも立とうとするときに駕籠のバランスがちょっと崩れてひやっとした)、上に書いたようなことでイマイチだったなあ。それに、同じアウトローでも時々直侍に見えてしまったわ。
幸四郎さんは兄貴分というよりは父親みたいだった。それでも私は幸四郎さんの和尚は悪くないなと思った(こういう役の幸四郎さんって、普段は苦手なんだもの)。とくに吉祥院でおとせと十三郎を手にかける決意をするあたりはちょっとぐっときた。
高麗蔵さんのおとせと友右衛門さんの十三郎が悲しい宿命を悲しく表していてよかった。2人ともいい役者さんだなあと思った。ただ、吉祥院裏手で和尚が2人を殺す場面は私にはやや長く感じられた。
錦吾さんはご自分でも「人の善い錦吾さんとしては悪の面が出ないのが悩み」と弱点を意識しているようだが、たしかに伝吉さんはいい人にしか見えず、殺される時には哀れを覚えた。
夜鷹の3人(幸雀、芝喜松、芝のぶ)の芝居の確かさ、存在感。大川端の三人吉三のやりとりを再現した場面には大いに笑った。
寿猿さんが元気に登場したのは嬉しかった。
まあ、そういうわけで全体に昂揚感が湧いてこない芝居だったが、それでもそれなりに面白かったのは原作の力だろうか。 

「奴凧廓春風」

どちらかというと、「三人吉三」よりこっちを目当てにしていたのだけど、まあこんなものかな、という感じで楽しめた。
 
「大磯舞鶴屋格子先」では歌江さんの番頭新造がさすがの存在感で、珍しい友右衛門さんの女形に目を瞠った。兄弟あんまり似ていないと思っていたのに、女形の友右衛門さんは芝雀さんによっく似ていた。顔だけじゃなくて立ち方なんかも似ているの。友右衛門さんの2人の息子さん廣松・廣太郎(どっちがお兄さんだっけ、いつもわからなくなる)クンも新造で女形。この2人は「趣向の華」で素の顔を見ているから女形というのは新鮮な気がした。この世代はけっこうたくさんいるから互いに切磋琢磨して上手になってほしい。
 
両花道で下手側から福助さんの大磯の虎、上手側から染五郎さんの十郎が登場し、本舞台で全員揃うと「あなた方がおいでになるのをご贔屓ご見物のいずれも様がお待ちかねでございましたよ」と友右衛門さん。お年玉にと早くもここで手拭撒き。高麗蔵さんの踊りが楽しかった。福助さんは花魁が似合う。
 
「大磯八丁堤」は、幸四郎さんが目を細めて金太郎ちゃんとの共演を楽しむのをこちらも楽しむ。「お客さまに良い風が吹くように」と、ここでも撒きものがある。撒かれたのは筋書き売り場で売っていたメガネ拭きらしい(売り場にそう書いてあった)。おじいちゃんが「風がないから待とう」と止めるのを金太郎ちゃんが凧を揚げたい揚げたいとダダをこね、その時ちょうどいい風が吹いて奴凧が舞い上がる。そして幸四郎さんと金太郎ちゃんはセリ下がる。後ろの景色を描いた幕が動き、凧が空を飛んでいる様子となるのが楽しい。奴凧役は染五郎さんだから、ここは親子3代が揃うのが見もの。金太郎ちゃんはおそらく客席の目を全部引き付けたであろう可愛らしさ。染五郎さんは宙乗りのまま踊る。鷹が咥えてきた手拭を取っての手拭踊りとか。宙乗りでの踊りは相当むずかしそう。最後は円盤に張り付いた染五郎さん、円盤ごと回転しながらセリの中に下りていく。
 
「富士野猪退治の場」ではデカい猪が鼻先に奴凧をつけて上手花道から疾走してきて、舞台を駆け回り、猟人の仁太郎(染五郎、3役目)が猪を仕留め、富士山の向こうに朝日がのぼって(というか、富士山が沈んで)終わり。
いろんな趣向が見られて楽しかった。

 
<上演時間>「三人吉三」序幕・二幕目70分(12001310)、幕間35分、三幕目・大詰75分(13451500)、幕間20分、「奴凧」50分(15201610

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