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2012年1月26日 (木)

一目会いたい、もう目が見えないが悲しい「妹背山婦女庭訓」

125日 坂東玉三郎初春特別公演(ル テアトル銀座)
 
前日の雪かきで出始めた足腰腕の筋肉痛を堪えながらの観劇(翌日に出たことでちょっとほっとしている――年をとると23日経ってから出るって言うじゃない)。
 
「お年賀 口上」
 
鳴物が入ってから幕が開くまでえらく長かった気がする。さて、チラシやポスター写真と同じ金屏風を背にして玉さまご登場。
 
昨年に続き今年も初春公演として幕が開いたことは誠に嬉しく、お客様には連日連夜かくも賑々しくお運びいただきありがたい。との挨拶のあと、セゾン劇場時代からのこの劇場との縁を語り、モダンな劇場で歌舞伎の雰囲気を感じてほしくてバルコニーには赤い提灯を、ロビーには正月飾りと緋毛氈をあしらった。
 
私にとってお美輪は大役であり、お客様には何気ないふうにしてきたが、この冬の期間体調を崩さずに通すのは難題。今夜風邪をひかなければ明日無事に千穐楽を迎えられる。
 
この後2代目松緑丈の思い出話となり、嵐クン(当代)が生まれた時はおじいさまもお父様も大変可愛がったということであった。
 
昨年は社会的にも大変なことがあったし、歌舞伎界でも先輩が亡くなった。指導してくれる人が少なくなり、自分でやっていかなくてはならなくなった。しかし人間、何事も乗り越えていかなくてはならない。歌舞伎座開場も来年となった。一芝居一芝居、精いっぱい勤める。
 
時々言葉を選びながら語る玉さまであったが、その思い、心が伝わるいい口上であった。
 
「妹背山婦女庭訓」
 
笑三郎さんに期待していたのだが、求女と橘姫(尾上右近)が出てくると眠くなってしまう。お三輪が出てきてやっと目があいたが、それでも舞台に三角関係の緊張感があまり感じられず、あるいはこっちに緊張感がなかったのか、求女と橘姫の存在感が希薄なような気がした(右近クンについては、私は立役のほうが好きである)。笑三郎さんはやっぱり女形の人なのかなあ。
 
玉さまのお三輪は一途でそれが嫌味にならず(本当はお三輪のほうがオジャマ虫なんでしょう)愛らしい。苧環の糸が切れてしまって、「いやん、この苧環のバカ」という感じで苧環を叩く姿も可愛かった。人間何事も乗り越えていかなくてはならないとは先の口上における玉さまの言葉であったが、お三輪も命がけの恋のために色々乗り越えていかなくてはならない。しかし迷宮に迷い込んだ果てのお三輪は…。
 
官女たちのいじめは前に福助さんで見た時には辟易するほどしつこくてこの芝居は嫌いだと拒絶感をもったが、今回はさほどでもなく、と言ってお三輪に擬着の相を表させるのに不足ではないと思った。官女たちに色々命じられても求女のことが気になって上の空のお三輪。そのぼんやりしたような表情は、田舎娘が迷い込んだ未知の世界さえお三輪の一途さをためらわせることはないことを逆に象徴しているようであった。
 
松緑さんの鱶七が大らかで大きくてよかった。前半のセリフは松緑さん独特の息つぎの前の言葉を下へ下げる調子で私はそこがあまり好きではないのだけれど、それを除けばこの役は松緑さんのニンだと思ったし(衣裳もよく似合っていた)、今後回を重ねて演じこんでいけばさらによくなると期待できた。
 
猿弥さん(蘇我入鹿)に意外とインパクトがなかったように思ったが、どうだろう。豆腐買のおむらも、歌六さんがやった時にもうちょっと面白かったような気がしたけれど…。それはそれとして、猿弥さんの女形はとてもいい。
 
弘太郎さんの宮越玄蕃が迫力あってよかった。声も太くよく通る。こういう弘太郎さんを見るのは初めてかも。
 
訳もわからず鱶七に斬りつけられたお三輪の哀れさ、事情を聞かされて求女の役に立つことを喜び、この世で添えなくてもあの世でと願いながら、一目お顔が見たい…ああ、でももう目が見えない…。泣けた。お三輪の魂の昇華を願うばかりだ。
 
それにしても、爪黒の鹿の血と擬着の相の女の生血を混ぜて笛に注いで吹けば、白い女鹿の生血を飲んだ母親から生まれた入鹿に鹿の性質が現れるっていうのがよくわからん…。歌舞伎は理屈ではないけれど。
 
<上演時間>「口上」10分(14001410)、幕間10分、「道行」30分(14201450)、幕間25分、「三笠山御殿」110分(15151705

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