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2012年2月21日 (火)

何度でも見たい、「伏見の富くじ」:松竹座昼の部②

215日 二月花形歌舞伎夜昼の部(松竹座) 
「大當り伏見の富くじ」
最初から最後まで笑った笑った、ほんとによく笑ったhappy01
以下、ネタバレします。
まず染五郎さんが登場して口上。役名が幸次郎だから幸四郎に結び付けて、「日本中で弁慶やった。その息子はたまらない、世界中でやらなくちゃ。ところがその息子は人間豹になってどこかへ飛んで行ったりしてアホです」と、摑みはバッチリ。この口上でなんかうまいことを幸次郎が言うと伏見稲荷の神官が「座布団一枚!」。すると、お狐さんの陰から黒衣さんが座布団を投げる。その呼吸のよさに、場内爆笑
happy01
幸次郎は質屋の若旦那だったが、預かった大名家の屏風を紛失したために店はつぶれ、今では紙屑拾いをしている。その幸次郎、ある日吉原じゃなかった島原の花魁道中に行き当たり、鳰照太夫に一目惚れする。ここは「駕籠釣瓶」の見初めのパロディね。鳰照太夫が幸次郎ににっかりと笑いかけると、き~んという感じの音が鳴り、同時にライトがぴかっと光り、にっかり感というかぴっかり感を盛り上げる。これがめちゃ可笑しくてhappy01 幸次郎はそのたび「頬をちょっと押すとこし餡がぷにゅ~と出てきそうな(happy01におてる」の魅力にくらりとなる。
鳰照太夫はなんと翫雀さん。小太りの容姿が愛敬たっぷりで、人物もよく、何ともチャーミング(時々、お顔が扇千景さんに似ていると思った)。はじめのうち声が割れていて聞きづらいことがあったが、徐々に落ち着いてくると同時にだんだんいい女に見えてくるから不思議。
太夫は下駄が苦手のようで、すぐ脱げてしまう。すると、禿の1人(吉太朗)が「また脱げた」、もう1人が「言うたらあかん」を繰り返すhappy01 下駄が脱げるだけでなく転びもする(よく転ぶんだ)。すると「又、こけた」。吉太朗クンは実に演技がうまいといつも感心するが、この禿もその心を摑んで演じているようで見事だった。
ところで、鳰という字も読みもニナガワの「十二夜」(権十郎さん演じる「鳰兵衛」)で初めて知った私、最近「鳰の湖」という相撲取りがいることを知り1人「におっていう字読めるもんね」とほくそ笑んでいたのだが、ここで鳰照太夫が出てきたので、なんだかおかしくなってしまった。しかもこの名前、口に出すと「におてる」太夫だからね(でも、「鳰照」という遊女の浮世絵があるみたいなので、実在の人物だったのかしらね)。
でね、「鳰」というのは「カイツブリ」のことなんですって。それはこのお芝居で初めて知った。
閑話休題。
この鳰照と幸次郎の恋物語を縦糸として、様々な横糸が編まれる。思い出すままに。
幸次郎が当番で川攫いをしていたら、革の財布が引っかかってきた。それを拾い上げた幸次郎、「ごじゅう~りょう~」bleah
この財布を川の中で河童(鴈祥)と奪い合うんだけど、それがまた可笑しくて可笑しくてhappy01 この場面をはじめとして、舞台の作りが三谷さんの「決闘! 高田馬場」をヒントとしたんじゃないかと思うようなことが間々あって、楽しくてしょうがなかったhappy01
染五郎さんの関西弁は上方の人に「あんた、ほんとはお江戸の人やろ」とからかわれるが、私には違いはわからない。二枚目半のキャラで大奮闘。実にカッコいいのである。

河童と争って手に入れた財布には40何両だかが入っていて、幸次郎はやっと店を再興できると妹・お絹(壱太郎)と喜び合うんだけど、翌日それを持って紙屋と身分を偽り遊郭の鳰照太夫に会いに行ってしまう。そしてその遊郭で遣手のお爪(竹三郎)から伏見稲荷の富くじを買わされ、しかもその財布の曰くを知ると元の持ち主へ返してしまう(「芝浜の財布」とか「文七元結」とかが自然と思い出された)。
鳰照と色々あって縁切りされ、橋の上で今にも身を投げんとしている幸次郎。そこへ鳰照の飼い犬である狆の小春(千壽郎)が来てなぐさめていると、富くじの当たり番号が発表になったという町の人の噂。当たり番号は「せんひゃくじゅういち番」。自分の富くじを懐から出して小春とともに番号を確かめる幸次郎。「惜しいっ!! いっせんひゃくじゅういち番…惜しいっ(coldsweats01」とこれを3回くらい繰り返しているうちに…さすがの幸次郎にもこれが当たりだということがわかる。で、当たりくじをなくしたりとられたりするといけないからと、弁当箱の中に隠し、その弁当箱を商売道具の屑籠に入れたのまではよかったが、興奮のあまり、幸次郎はその屑籠を川にえいっと放り投げてしまったのだ ああ、なんたるアホshock
この時の染五郎さんと千壽郎さんの呼吸もぴったり、漫才みたいで笑い転げたhappy01 千壽郎さんの小春ちゃんは図体は大きいけれど、とっても可愛らしくてユーモアもたっぷり。
千両の富くじを捨ててしまった幸次郎はお絹に「アホやアホやと思うてたけど、ほんまにアホになってしもたわ」と言われるほど、ほんまのアホになってしまったのであるbearing
ここから悪人ども(お爪の竹三郎さん、仲居頭おとりの吉弥さん、男衆虎吉の薪車さんたち)が絡んで富くじのすったもんだがあり、颯爽たる信濃屋傳七(愛之助)の知恵で悪人どもは痛い目にあい、富くじは幸次郎の手に戻る。愛之助さんが大きさを見せてカッコいい。竹三郎さんはいつもあったかい人柄で泣かされるのに、こういう悪役をやると、この人って本当はすっごくハラが黒いんじゃないかって思わされるsmile それほどうまいのだ、しかもご本人、悪役を楽しんでいる。
そうそう、亀鶴さんと松也クンがツルんで幸次郎の友人として出てくる。この2人は「慶安の狼」でも忠弥の友人というか由比道場の仲間として登場していた。「慶安」のほうでは鋭い目をして結局は陰謀に翻弄され忠弥に斬られるシビアな青春、こちらではへらへらとのんきに若さを楽しむ青春である。
さて、大事な横糸が1本。
それは近江水島藩の黒住平馬という侍である。月代部分が広い鬘、パンダ目で思いっきり三枚目のこの役は獅童さん(あのパンダ目は、丸橋忠弥と同じように見えたけどな)。「小栗判官」の橋蔵みたいな感じかな(一応武士だし、あんな汚くない)。時々武士らしさを交えるのが可笑しい。鬘がしょっちゅうズレたり、お絹に横恋慕して徹底的にフラれたり、最後はキョーレツにおっかない奥さん(千蔵)の登場で鬘を取られ、その下から出てきたのがバーコード頭だったり、もう笑って笑って笑ってhappy01happy01  
結局目出度し目出度しになるんだけど、さらになくなったと思われていた屏風に関して絵描きの雪舟斎(歌六)による謎解きがあって、大団円。この謎解きの時に、古畑の音楽が流れ、歌六さんが古畑風に語り出す。想像してみて、歌六さんの古畑をhappy02 ほんと面白かった。
最後は壱太郎クンと癒しの米吉クン(鳰照のところの新造・雛江。とってもいい子なの)が踊りながら花道から出てきて、次々に登場人物が現れ、ラストは高いところから歌六さんが出て、みんなでマツケンサンバなどを踊る。客席は手拍子手拍子。そのまま幕が下りても拍手は鳴りやまず、カーテンコールとなった。
江戸の役者が多い(主だったところでは上方の役者といえるのは愛之助さんくらい? 翫雀さんは以前藤十郎さんが「子供たちは東京に拠点を置いていて上方のにおいがない」ようなことを言っていたから)上方喜劇で、しかも普通の日の昼の部、上方の人にこれだけ大ウケしたこのお芝居は大成功だったわね。役者さんたちの魅力にぐいっとheart01鷲摑みされたわあ~、あんまり楽しくてもう何度でも見たいっsign03
<上演時間>「慶安の狼」95分(11001235)、幕間35分、「伏見の富くじ」95分(13101445

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コメント

以前、「青木繁展」でお邪魔した画家の棚倉 樽です。
大変ご無沙汰しておりました。
実は、浅草のギャラリーカフェで26日まで個展を開催しております。
ロックスターの肖像描いた題して『Rock Alive』という個展です。
お時間ありましたら是非お越し下さいませ。
http://tarutana.exblog.jp/14610232/

場所は新春歌舞伎が催された浅草公会堂の近くです。
で、この個展のために先月店へ打ち合わせに行った時に、女優の
蒼井優ちゃんがフラリと一人で店へ来られたのですよ。私の隣の席へ
座られたので、いろいろとお話しちゃいました(笑)。新春歌舞伎を
観に来たそうでしたよ。そう言えば亀治郎さんと舞台で共演されて
いたから、その関係だったのでしょうね。とても可愛い女性で、
ミーハーなオジサンはポーッとしてしまいました(笑)。
「歌舞伎役者の絵は描いたことないんですか?」と聞かれたので、
「歌舞伎に関係した絵は描いたことがありますよ」と作品集の中の
『釆女(uneme)』という絵を見せたところ、非常に驚いていました。
作品はこちらで紹介しています→http://tarutana.exblog.jp/12906466/

とりとめのない話になってしまいましたね(笑)。

投稿: 棚倉 樽 | 2012年2月22日 (水) 00時40分

棚倉様
おはようございます。こちらこそご無沙汰しております。コメントありがとうございます。
蒼井優さんと親しくお話なさったとのこと、「sign03sign03」ですわ~。亀治郎さんと共演なさった「その妹」を見ましたが、しなやかさと芯の強さが感じられるいい女優さんですよね。いつだったか見たTVのトーク番組でお話も楽しかったので、棚倉様もきっと楽しいお時間を過ごされたことと、うらやましく存じます。

「采女」、生き生きとすばらしく躍動感のある絵ですね。歌舞伎の原点を捉えていらっしゃるように拝見しました。

個展のご案内、ありがとうございます!! ロックスターの肖像画ということでいうぜひ拝見したいのですが、日程的に「時間が作れれば…」としか現時点では申し上げられず、すみません。1日だけ可能性がありますので、何とか日程と時間が調整できれば、と思っております。

投稿: SwingingFujisan | 2012年2月22日 (水) 09時42分

SwingingFujisanさま
ほんとに楽しかったですね~(^o^)
SwingingFujisanさまの詳細なレポを読ませていただいて、
「そうそう」「それ、それ!」とうなづきながらまた思い出し笑い
してしまいました。
客席も大笑いですが、役者さんたちも皆楽しそうに演じてらして
とてもハッピーな気分になれる舞台でした。
ほんとに「何度でも見たい」と思える舞台ですが、いよいよ明日が
千穐楽。どんなことになるんでしょ。楽しみです♪

投稿: スキップ | 2012年2月25日 (土) 12時32分

スキップ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
舞台と客席で幸せの「キャッチボール」でしたね。翫雀さんの「にっかり」がなんとも素敵で、あの笑顔を見ただけでハッピーになりました。
今月はなぜ千穐楽が4座とも26日なんでしょうbearing  重なっていなかったらきっと松竹座も千穐楽を取っていましたわ。何度でもご覧になれる大阪の方が羨ましい(あ、でもあまりの人気で幕見も厳しいそうですね。千穐楽昼の部チケットも完売だし)。
スキップ様は明日いらっしゃるのでしょう。レポ、よろしくお願いしますね!!

投稿: SwingingFujisan | 2012年2月25日 (土) 17時59分

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