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2012年2月20日 (月)

政治に翻弄された若者の悲劇、「慶安の狼」:松竹座昼の部①

215日 二月花形歌舞伎夜昼の部(松竹座)
12022001syotikuza_2 遠征かつ花形歌舞伎の第二弾は松竹座。前日、終演後最速で新幹線に飛び乗り大阪へなんばの定宿でぎりぎりまでたらたらと過ごし(なぜかツインにグレードアップしてくれたので、余計のんびりした気分になった)、いざ松竹座へ。
御園座で歌舞伎らしい歌舞伎(って定義はわからないんだけどね)を楽しんだ後の松竹座はちょっと変わった演目の取り合わせ。とくに昼の部は新国劇と松竹喜劇?な感じで、音楽も夜の部の「すし屋」以外は録音。でも全部の芝居に染五郎・愛之助・獅童という同級生3人が一緒に出るというだけでも絶対見なくっちゃの魅力だし、実際ものすご~く素敵で楽しかった。 
「慶安の狼」
新国劇か普通の時代劇のような感じだと思ったら。初演が昭和41年、やはり新国劇が新橋演舞場で上演したのだそうだ。
「慶安の狼」は丸橋忠弥(獅童)の苦悩を中心に描いた物語で、体制に反逆しようとする忠弥と体制の中でおとなしく奉公する親友・野中小弥太(愛之助)の生き方の違いは、ちょっと「江戸の夕映」を思い出させた。しかし裏切りに次ぐ裏切りで、道を違えた親友2人が最後はひとつになる。ザンバラ髪を振り乱し、刀や槍を振り回す様式的ではない立ち回りは、先日俳優祭で見た殺陣と同様、危険でゾクゾクするような迫力がある。瀕死の小弥太を支えて立ち上がらせ、紐で自らの体と結びつけて戦う忠弥。小弥太は絶命し、その傍らでものすごい形相で1人戦う忠弥。真山青果のようなアツさはなく、しかし政治に翻弄され潰された若者たちの悲劇に思わず涙し、そのむなしさに胸が重くなった。
小弥太が口をきいてくれた仕官の道を断り、由比正雪(染五郎)に与した忠弥だが、正雪は手下の本吉新八(宗之助)に忠弥暗殺を命じ拳銃を与える。しかし銃声がした後姿を現したのは新八ではなくて忠弥であった。まったく動揺を見せない正雪。正雪は新八が返り討ちにあうことを見越していたのではないかしら。本当に危険だと思ったのは忠弥ではなくて新八のほうだったのではないかしら。その辺はよくわからなかった。正雪が舞を舞う場面は信長と重なった。
獅童さんには、武士は武芸を活かしてこその存在と考え、平和になった世の中についていけない忠弥の凄みがあった(でも目の化粧がパンダみたい。黒く縁取り過ぎじゃない?)。
体制の中で生きていこうとする愛之助さんは穏やかで友を思う気持ちが素直に出ていた。小弥太は忠弥の友人であったがために死なねばならなかったのだろうか。さぞや無念であっただろうが、友と一つになって死へ旅立ったことを彼は静かに受け入れたことであろう。
友右衛門さん(金井半兵衛)がいいところでセリフにつまり、プロンプターが入ってもしどろもどろになってしまったのが残念。そこだけだったから、余計に残念。
しょぱな、居酒屋の場面で女中役の梅之さんがいそいそと動き回る様子、店で起きる事件の行方を暖簾の陰から不安そうに窺う仕草に「らしさ」が表れていた。そういうところで、観客はその世界に入っていくのだ。小さいけれど大事な役だと思った。

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