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2012年2月18日 (土)

見応え十分、御園座花形昼の部

214日 二月花形歌舞伎昼の部(御園座)
12021801misonoza 今月は御園座、松竹座、博多座と3座で花形。その第1弾は御園座の花形。
前日、アルコールの力で早寝し、苦手な早起きを克服して名古屋へ。新幹線では1時間くらい爆睡したかな。
「義経千本桜 渡海屋・大物浦」
知盛・松緑、弁慶・團蔵、相模五郎・亀三郎、入江丹蔵・亀寿は去年7月国立劇場と同じ。今回、典侍の局を菊之助、義経を梅枝という実にフレッシュで期待の大きい配役となった。
菊之助さんは前半、お柳としての家内を取り仕切る生き生きとした世話女房らしさに加え、平家の身分高い女性としての楚々とした上品な美しさがあった。後半の貴族姿に昨年の浮舟が重なったが、あの時と違って違和感はなかった。知盛をはじめとする平家一族の武運を案じながらも天皇を守り女官たちを束ねる凛とした品格が、早くも涙を誘う。義経に保護されて知盛の前に姿を見せた時には、知盛に対して自分を恥じているような感じを受けた。平家の悲劇をかくも美しく気高く見せる菊之助さん、思えば菊ちゃんは政岡もきっちり演じこなしたし、玉手御前も雪姫も新鮮に演じたし、この若さで凄い役者さんだ。声がきれいに戻っていて安心した。
松緑さんの知盛は、前半の銀平に大らかさがあって、相模五郎と入江丹蔵をあしらうところもそれが活きる。そして頼もしい。後半の勇ましさ、哀しさ、怨念、諦念、安堵、潔さ、色々な気持ちがこちらにも入り混じって伝わってきて、胸を抉られる。碇とともに海に消えた瞬間には思わず心の中で手を合わせた。
亀三郎・亀寿さんの五郎、丹蔵は口跡がいいから、ユーモラスな前半の魚尽くしが楽しい。後半の相模五郎のご注進は力強さの中に悲しみが、そして主君の最期を見届けねばという強い覚悟・意志が感じられた。入江丹蔵も、背に回した源氏方の侍ごと自らに刃を突き立てるという勇猛さ。ここにも滅びの美学を見るような気がした。
梅枝クンの義経は若いがその品格、古風さがぴったり。義経からも悲しみが滲み出ている。先月の中村座でも「鳥居前」で義経を演じた梅枝クン、立派な義経役者になることを十分予感させる演技であった。
團蔵さんの弁慶のほら貝には知盛への敬意とともに戦のむなしさ、悲しみ(ここの登場人物にはみんな悲しみが漂っている)が込められていてじ~んときた。主君義経を守るという忠義の任務がなかったらこの人も熊谷みたいに出家したのではないかしらと思いかけて、そういえば弁慶はもう出家していたんだっけと気がついた。
菊五郎劇団の若手による見応えたっぷりの「千本桜」であった。

「女伊達」
倅に負けちゃあいられない、時さまの女伊達。粋でカッコよかった。何も考えずにそれを楽しんだ。男伊達の右近クン、私は右近クンは立役のほうが好きで、とくに立役の踊りはきりっと力強くていいなあと思う。同じ男伊達でも萬太郎クンのほうには少し柔らか味が感じられたかな。萬太郎クンには大らかさがあって私は好きである。

若い者の立ち回りは様々な趣向があってこちらもまたたっぷり楽しめた。開脚仰向けの若い者の脚の間を返り越す。「よろずや」と書かれた傘を車輪に見立てた人間車――これ、前にも見たことがあったけれど、女伊達でしたか――など、傘が大活躍。そういう楽しさだからこそ、言っちゃいけないことかもしれないけれど、この立ち回りにいるべき人がいないことの悲しみにあらためてとらわれた。

「雪暮夜入谷畦道」

先月中村座で開幕前の蕎麦屋の様子を見たものだから、咲十郎さんと音之助さんが蕎麦をすすっているのも幕開き前からだったかもね、なんてにやにやしてしまった。ここは、幕が開いた瞬間に薄暗い雪の江戸世界へ観客をワープさせなくてはいけない場面である。蕎麦屋夫婦(大蔵・菊三呂)と客
2人。私は即、その世界に入った。
裾端折り、素足に下駄履き、頬かむりの直次郎(菊之助)があたりをはばかるようにやってくる。花道七三で後ろを振り返ろうと体の向きを変えた菊ちゃんの容姿がはっとするほど菊五郎さんそっくり。その後も、とくに頬かむりの顔がよく似ていた。しかし今の菊五郎さんと比べて若さと美貌では菊ちゃんが上なのは当然として、直次郎全体像としては菊五郎さんのほうがはるかにしっくりくる(色気なんかも含めて)。菊ちゃん初役だからまだ自分のものにしていない、というところだろうか。それでも直次郎の粗末な拵えに雪の夕暮れの寒さがこちらにもしんしんと伝わってくる。それだけではない、蕎麦屋の火鉢と酒で暖を取る直次郎だが、火を足してもらったり、燗をもっと熱くと頼むところに芯まで冷え切った様子が窺える。

 火鉢に炭を足してもらう場面ではもうちょっと灰を意識したほうがいいかもしれない。確かに灰をよけてはいたけれどそれっきりだったので、杯に浮いた灰を箸でひょいっと捨てる時蕎麦屋のおばさんのほうを睨み付けていたのが灰ではなくて最初からゴミが入っていたからと見えないこともないなあという気がした。
田之助さんの丈賀の味わいにはやはり何とも言えないものがある。田之助さんに出会ったら思わず「丈賀さん」と呼びかけてしまいそう。毎晩、味はともかく安くてたっぷり食べられる蕎麦を楽しむ生活をしている丈賀の、三千歳からお声がかかったおかげで少しいい思いをしている様子を微笑ましく思うと同時に、この人も案外したたかなところがあるかもなあ~なんてね。
大口屋寮で梅枝クン(新造・千代春)と菊ちゃんが並んだ時は、三千歳を梅枝クンでもいいかもと思ったのも束の間、時さまが「直さん、会いたかった!」と飛び出して来たら、ああやっぱり現時点では梅枝クンの三千歳では物足りないと思い直したのであった。菊ちゃんと時さまでは年齢差を懸念したのだったが、全然気にならなかった。最後の別れの切なさよ。
<上演時間>「千本桜」120分(11001300)、幕間30分、「女伊達」15分(13301345)、幕間25分、「直侍」70分(14101520

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