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2012年2月 4日 (土)

もう一度見たい:勘九郎襲名公演夜の部②

22日 中村勘九郎襲名披露二月大歌舞伎初日夜の部(新橋演舞場)
 
全然関係ないけれど、昨日(23日)新宿伊勢丹の地下が大盛況。一部には長蛇の行列ができている。そしてデパートの人が「最後尾」と書かれたプラカードを持って「年末以来だよ~」と嬉しそう。野次馬根性丸出しで売り場を覗くと、なんと「恵方巻き」でした。へえ、関東でもぉeyeとビックリしたのでした。
「春興鏡獅子」
小山三さんが老女・飛鳥井で登場。予備知識なしで行ったものだから、ああさっき仁左様が言っていたのはこのことか、と仁左様の心遣いにあらためて胸をアツくする。93歳という年齢で舞台に立つことだけでも素晴らしいのに、セリフもしっかりしているし、緋色の着物もよくお似合い。大感動!! それでも私はやっぱり小山三さんは娘役のほうが小山三さんらしいかもなあ、なんてちょっと思ったのでした。
さて勘九郎さんの弥生は、上品で愛らしく清潔感があり初々しい。その初々しさがちょっと生硬な感じも与える。あらっ、後見は七クン?と気づく。そうしたら七之助さんのほうも気になってしまって…。さっきの口上で兄弟が2人とも「手を携えて」と言っていたことが甦り、後見を見る目にも熱が籠る。いずれ七之助さんも鏡獅子を踊ることになるんだろうな。
胡蝶は宜生クンと玉太郎クン。玉太郎クンに一日の長あり。経験の差ならいいけれど、宜生クンの動きがちょっときつそうだったのが気になった。ところで宜生クン、ずいぶん大きくなってビックリ。国生クンに似てきたかも。
獅子のバックは花道七三で頭を横に振り、毛を脇にして。獅子は勇壮、動きもなめらかできれいだった。毛振りは途中ちょっと息切れ感がみられたが、最後はスピードも形も持ち直したようだった。幕が閉まる寸前、片足を上げた姿勢がややぐらついたのが残念。
しかし、襲名披露の初日というのはその場の観客だけでなく報道の目も全部集中するからさぞや緊張して大変だろうなあ。
「ぢいさんばあさん」
ぢいさんは仁左様で2度、ばあさんは菊五郎さん、玉三郎さんで。3度目の今回にしてはじめて仁左様以外のぢいさんを見る。
扇雀さんの久右衛門に弟らしさ、福助さんのるんに姉らしさが見られてとても好もしかった。仲睦まじい姉夫婦にアテられる扇雀さんも微笑ましい。福助さんの夫に対する甘え方は武家の妻としてちょっとやり過ぎな気もしないでもないが、イヤな感じはしなかった。ただ、赤ん坊に「1年間お別れだからおとなしく待ちましょう」と語りかけるセリフがちょっとぶりっこ過ぎたかなあ。悲しみを堪える表情は美しいのに…。
橋之助さんの下嶋甚右衛門は本当に嫌味な男で、むかつく。しかし、段々下嶋の屈折した心理が見えるような気がして、気の毒にもなった。伊織もきっと下嶋のそういうところを理解していたんだろうなあ。
若夫婦の巳之助・新悟。新悟クンの眉を落した顔にはこちらがまだ慣れないが、若妻らしさもあり品もよく、何より情がこもっていてよかった。巳之助クンにも伯父夫婦への敬愛が感じられた。初々しい若夫婦は好もしかった。 

三津五郎さんの伊織は大らかで愛敬があり、それだけに思わず下嶋を斬ってしまう悲劇性が浮かび上がる。キーポイントの鼻に手をやる癖がもうちょっと自然に見えるといいなあと思った(決して不自然とかわざとらしいとかいうのではなくて、鼻を覆う面積がほんの少しだけ大きすぎるような気が…)。37年後、「おれのうちだ、おれのうちだ」と言って家を一回りする姿に、これまでの37年の伊織の人生を感じて胸が詰まった。
 
一方の37年後のるん。沓脱石や縁側に上がるとき、あんなに膝と体をがくがくさせては、まるでお笑いのコントだ。立ち上がるのにもヨタヨタし過ぎ。だってるんはついこの間までキャリアウーマンとして働いていたわけでしょう。せっかくうるうるしていたのに急に冷める(そんなことで笑いを取る必要はまったくないと思う)。口を年寄っぽくもぐもぐさせるのもセリフの老けさせすぎも、三津五郎さんの伊織が自然なのに比べて興醒め。
 
そういう不満はあったものの、それでもやっぱり泣けた。とくに福助さんが泣きながら喋ってセリフが普通になると、すご~くよくて、一緒になって泣いてしまう。どうしてこの線で貫かないんだろうと残念で仕方ない。小細工なんかしなくたって十分2人の間に流れた歳月はわかるんだもの。
 
今月は夜も昼も1回きり。でももう一度見たくなってきた。
 
<上演時間>「鈴ヶ森」38分(16301738)、幕間20分、「口上」20分(17281748)、幕間30分、「鏡獅子」57分(18181915)、幕間15分、「ぢいさんばあさん」84分(19302054
 
初日は開演も3分遅れたし、全体に遅れ気味で終演は2100を過ぎ。

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コメント

こんにちは。

初日レポ、ありがとうございました。今月は予定が見えず、昼の部しかとっていなかったのでSwing様のレポをいつにも増して楽しみにしておりました。そして、やっぱり見たくなってきました(笑)。3階の戻りが出ればなぁ(昨日だったか1枚だけ戻っていたのですが、あいにく東京にいない日だったのですわ(涙))。

今日は暦どおりに暖かでちょっとうれしいからつぎでした(^-^)。

投稿: からつぎ | 2012年2月 4日 (土) 12時10分

からつぎ様
コメントありがとうございます。
夜の部はまだお取りになっていらっしゃらなかったんですのね。初日に通しでご覧かと思っておりました。

3階の戻りはなかなか出ませんねえ(2等席も今のところ全部×ですね)。私も初日だけというのはあんまり寂しくて…でもこれ以上散財できませんし…。
からつぎ様のご都合に合う日のチケットが戻るよう、願っております。

穏やかな陽の光、ありがたいですね(今朝はブルブルでしたわ)。

投稿: SwingingFujisan | 2012年2月 4日 (土) 13時22分

Swinging  Fujisan様
 今晩は。毎日寒くて大変ですね。風邪もはやっているようで、ハードスケジュール気を付けてくださいね。私は、昨日、演舞場夜の部見てきました。「鈴が森」、久しぶりの勘三郎、吉右衛門の競演楽しみました。まさしく大歌舞伎。中村屋が先代に似ていて、ひわ色の衣裳がよく似合っていました。播磨屋、貫録です。雲助、橋之助ではなく、錦之助ですよね。
 「鏡獅子」、新 勘九郎、前シテ、女形の舞踊、今一歩ですかね。七之助と同様に、振り・動作が大きくやや雑に見えます。そして、間合いがほんの少し短いため、せせこましく感じられ、お父さんの踊るようなタップリとした豊穣な感覚がないようです。今後、再演を重ねれば良くなるでしょう。海老蔵も再演で随分、弥生の舞踊が滑らかになりましたから。
 

投稿: レオン・パパ | 2012年2月 5日 (日) 21時03分

レオン・パパ様
こんばんは。
レオン・パパ様はきっとこの週末にいらしているだろうなと思っておりました。
「鈴ヶ森」、よかったですね。短い演目ですが、2人の芸を堪能しました。雲助は錦之介さんでしたか。てっきり橋之助さんだと思って見ていましたcoldsweats02
勘三郎さんの弥生の「タップリとした豊穣な感覚」--ああ、本当にぴったりの表現ですね。こういう味わいに経験の差というか、年輪を感じます。いずれにしても今後への期待がもてますね。

体調へのお心づかい、ありがとうございます。今週の観劇予定は1本だけ。比較的おとなしく家にいて仕事をしようかなと思っております。
レオン・パパ様もどうぞお体にお気をつけてくださいませ。

投稿: SwingingFujisan | 2012年2月 5日 (日) 21時28分

SwingingFujisan様
 こんにちは。再び襲名披露公演にコメントさせてください。先週、日曜日、昼の部みました。勘九郎の披露狂言としては、「鏡獅子」よりも「土蜘蛛」のほうが充実していました。前シテの不気味さをこの年齢で出せるのはたいしたものです。若いころの吉右衛門がこの狂言を得意にして評判をとりましたが、その折にみた演技に勝るとも劣らない気がします。
 そして、間狂言の楽しいこと。播磨屋、松嶋屋、中村屋と揃う超豪華版、本当に襲名披露ならではですね。三人ひっくり返って足ばたばた、面白いですね。
 ところで、お聞きかもしれませんがちょっとしたハプニングがありました。勘九郎が、前シテの舞踊見せどころの只中、異様な音がしました。小鼓奏者が前につんのめって顔から倒れたのです。後見連中が駆け寄りましたが、当該奏者の方は何か喋って、そのまま床几からおりて正座し、演奏はせずに幕切れまで座ったままでした。このような経験はさすがに初めてで、実をいうと、見物中もそちらが気になってしょうがありませんでした。

投稿: レオン・パパ | 2012年2月11日 (土) 13時31分

レオン・パパ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
「土蜘」は大好評ですね。私が見るのはまだ先ですが、評判を聞くにつけ、もっと早く取ればよかったかなあとウズウズしています。間狂言も二度と見られないようなすっごい御馳走ですものね。

小鼓のハプニングのことは全然存じませんでした。ビックリですねえ。貧血でも起こされたのでしょうか。大事に至らずその後無事に復帰されていらっしゃればいいのですが。舞台はなまもの、そういうこともあるものなんですね。

投稿: SwingingFujisan | 2012年2月11日 (土) 18時14分

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