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2012年2月13日 (月)

楽しい展覧会:フェルメールからのラブレター展

211日 「フェルメールからのラブレター展」(Bunkamura ザ・ミュージアム)
やっと行ってきました。1月に娘と行くつもりでいたのだけれど、滞在期間のうち半分は様々な友人と会うので外出していた娘(「あたしなんか、少ない方。みんな、帰国するたび毎日出かけてるよ~」。ま、友人が多いのはありがたいことです)の都合がつかず、今頃になってしまった。それも渋谷というのがネックで、いくらフェルメールでも単独ではなかなか足を向けづらく、DNPとの抱き合わせ日程にしてやっと、というわけ。
当日券でちょっと並んだわりには意外とちゃんと見ることができた(もちろん、それなりに混んでいたのだけれどね)。展示は第1章「人々のやりとり――しぐさ、視線、表情」、第2章「家族の絆、家族の空間」、第3章「職業上の、あるいは学術的コミュニケーション」、第4章「手紙を通したコミュニケーション」に分かれており、絵(というか、絵の中の人物の心理)を読み解くという遊びを自分の中でやったりして、非常に面白かった。また風俗画であるから敷居が高いこともなく、当時のオランダの文化や生活ぶりが見て取れるのも興味深かった(オランダは非常に識字率が高かったそうで、だからこそ「手紙」が重要なポジションにいるわけだ。楽器が恋愛の象徴として描かれているなんていうのも読み解きのヒントになる)。
1では「牡蠣を食べる」「トリック・トラック遊び」「眠る兵士とワインを飲む女」「生徒にお仕置きをする教師」などが、1枚の絵にドラマが見えるみたいで面白い。
2では「テーブルに集うファン・ボホーフェンの家族」は強烈な印象を残す。画家自身も含む大人から子供まで11人の一家が様々な体の向きのまま全員こちらに視線を向けている。それはいいのだが、全員が白い襞襟をつけていて、う~んなんかちょっと異様な感じ。
この章では私は家族の姿というよりは室内そのものに興味を覚えた。2色のタイルが市松模様にみたいになっている床、開いているドアの先に見える部屋(扉のところに誰かがいることもあるし、いなくても人の存在を感じる)、一段高くなった木製の段の上に置かれた椅子(タイルとか大理石の床は冷えるから)、壁に掛けられた絵、赤いタペストリーの掛けられたテーブル等々。DNPでかつて見たファン・ホーホストラーテンの「部屋履き」が甦る(そういえば、彼の絵は今回なかった)。
3は専門職の人物画で、これは11人の顔を見るのが面白い。「羽根ペンを削る学者」が私のお気に入り。この絵が含むところはともかくとして、この学者が本当にそのあたりにいそうな気がする。

さて、いよいよ手紙にまつわるフェルメールの3点(「手紙を書く女」「手紙を書く女と召使」「手紙を読む青衣の女」。そのうち「手紙を読む青衣の女」だけが日本初公開である)が展示されている4
それぞれにいい絵画ではあるが、やっぱりフェルメールは別格。どこがどうで別格なんだか理論はわからないが、受ける感じが全然違う。
「青衣の女」は2010年から2011年にかけて修復されており、①それまで同じ色に見えていた衣裳と椅子の青色が全然違うものだとわかったり、②椅子に打たれた真鍮の釘が明らかになったり、③テーブルの上の4つの黄色い点とテーブルに置かれた本の上の点が真珠の首飾りとして後に加えられたものであることがわかったり、④椅子の脚が上は細く下は太くなっていたことからフェルメールの意図通りに再現されたりしたそうだ。修復後、本国アムステルダム国立美術館で公開されるより先に日本で公開されたのはなぜだかわからないが、嬉しいことである(アムステルダム美術館の改修は終わったんだろうか。来年オープンという噂を聞いたが)。
修復というのが大変難しい作業であることは想像に難くないが、時として補修者が画家の意図以上に手を加えることがあるらしい。「青衣の女」でも、かつての補修者が本来の白い点を真珠の首飾りとして描き加えたもののようだ。補修者の手によって本来の絵が違う姿になることもあるのだとは知らなかった。最近はそういうこともなくなったようだが、以前は案外多かったそうだ。
「手紙を書く女と召使」も修復によってフェルメール本来の光より鋭い光になってしまっているとのことだ。確かに他の2点に比べてこの絵はくっきりした印象を与える。
「手紙を書く女」の、ふと手を止めてこちらを見ている視線、表情は何を語っているのだろうか。1人静かに絵の前にじっと佇んでいればそれがわかったかもしれないが、手紙を書いているところを邪魔されたにもかかわらず親密な視線のように私には感じられた(ちょっとテレも含んだような…)。彼女が身に着けている白貂の毛皮つきのコートは当時流行だったようで、今回も何人か見られる。フェルメールはこの毛皮つきの黄色のコートがお気に入りだったようだ。「真珠の首飾りの女」「ギターを弾く女」「恋文」「リュートを調弦する女」「女と召使」にも使われていることからもそれがわかる。
会場には男性からの恋文とそれに対する女性の返事のお手本が展示されていて(当時のマニュアル本の一部)、そんなのを読むのも面白い。
単なる絵画鑑賞にとどまらない、とても楽しい展覧会だった。

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