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2012年3月19日 (月)

遅ればせながら平成中村座昼の部

313日 三月大歌舞伎昼の部(平成中村座)
観劇から1週間も経ってしまった。
「暫」
桜席に入ると中村屋の家紋の入った提灯と成田屋の家紋の入った提灯が並んでいた。
勇ましい太鼓の音が席の真下から響き、大薩摩を正面に聞き、迫力たっぷり。
清原武衡の我當さんは顔は意外と優しく見えたが、冷酷さを含んだセリフに堂々たる公家悪ぶりが窺える。赤っ腹はみんな力強く、とくに功一さんにリキ入っていて、こちらも力が入った。
「しばら~く」の声で海老ちゃんが登場したが、声のせいだろうか、意外とオーラを感じなかった。高音が開放音になるせいか、どうもおさまりが悪いというか、力が抜けるというか、そんな気がするのだ。それでもやっぱり海老ちゃんは客を引き付ける。権五郎が本舞台に移ると、4人がかりで衣裳を直していた。敵に対しては凄みをきかせていた海老蔵権五郎、源氏の重宝2品を義綱に渡し「めでたく妹背の誓いを」どうたらと言ったときの顔がとてもとても優しかったのが素敵だった。仕丁たちの首を一気に斬るところはタイミング的にややスムーズさが足りなかったような気がした。もっと面白く見せられただろうにと残念。
権五郎に茶後見の子役ちゃん(秋山悠介クンか上野結菜ちゃんか)が背伸びして権五郎の口に茶碗を当てていたのが可愛かった。客席からも微笑ましいという笑いが起こり、茶後見引っこみの際には拍手が湧いた。
友切丸をもってきた小金丸行綱役の梅丸クンが清々しい凛々しさを見せて、ああ梅丸クンのこんな役もいいなあと思った。
猿弥さんの鯰、七之助さんの女鯰が品よくユーモラスでよかった。七之助さん花道の引っこみは足元が視野の外だったが(下手側前列のいい席だったけれど)、そのせいかまるで花道を滑っているように見えて不思議な気持ちがした(一瞬前かがみになって足元を見たらちゃんと歩いていた。当たり前だけど)。
大仰で荒唐無稽な祝祭劇だから、理屈抜きに楽しんだ。
「一條大蔵譚」
開幕5分くらい前から、茶屋亭主の松之助さんが床几に茶碗を置いて準備していた。松之助さんはいかにもな感じ(その時代やその人物の雰囲気)でうまい。
小山三さんの鳴瀬がしっかりした演技で、先月「鏡獅子」の時には小山三さんは飛鳥井もいいけれど娘役のほうが好きだと思ったけれど、この鳴瀬はとてもよかった。亀蔵さんの勘解由が悪役ながら憎めない面もあり、金に執着する人間の悲しさみたいなものを感じた。
扇雀さんの常盤御前は、翻弄される運命に耐えながら時機を待つ女性の強さをしっとりと見せていた。
勘九郎さんはふっくら感や柔らかさを出すタイプではないので作り阿呆の部分に難しさを感じたけれど、本来の知的できりっとした姿との演じ分けにメリハリがあったと思う。
七之助さんのお京が任務を持つ女性の落ち着きを見せていた。常盤御前への思いは厳しい鬼次郎とは少し違う、女性ならではの感情が込められているような気がした。
仁左様の鬼次郎は常盤に対する悔しさが直情的に出て、真実を知っているこちらまでその悔しさに同調してしまう。あの動きの激しい鬼次郎を若々しく演じている仁左様に感動してしまった。
幕が閉まった後、引っこむ際に勘九郎さんが桜席に挨拶してくれた。

「舞鶴雪月花」
上の巻・さくらは七之助さんの桜の精。清楚で艶やか、愛らしい。春にぴったりで明るい気持ちになった。途中の引き抜きが少しモタついたけれど、ピンクの衣裳の下から表れた明るい空色の衣裳がまた素敵。
中の巻・松虫は千之助クンの虫の精がまず登場。あどけないながらしっかりした踊りである。やがてスッポンから親の松虫・仁左様が表れる。連獅子を思い出す2人の踊りは微笑ましく、しかし寂しげで秋の終わりの風情を醸し出していた。
下の巻・雪達磨は打って変ったユーモラスな踊り。作り物の雪達磨の後ろに勘三郎さんの雪達磨(炭団のように丸く黒く塗った目、口は四角い炭形に塗っている)が手だけ出して隠れている。しばらくすると勘三郎さんの全身が現れ、作り物のほうはセリ下がり。ひとしきり踊ると朝日がさし、勘三郎さんは融け始める。慌てて自分で雪をぺたぺた体に貼り付ける(?)仕草が愛敬たっぷり。結局はどんどん融けてセリ下がり。ラスト、舞台奥が開いて、そこにも雪景色の家々が並んでいるという趣向。そして勘三郎さんの来ていた衣裳、縄の帯だけがセリ上がってきて、雪達磨が完全に融けてしまったことを知る。楽しい踊りだった。
<上演時間>「暫」50分(11001150)、幕間25分、「一條大蔵譚」90分(12151345)、幕間20分、「舞鶴雪月花」30分(14051435

 

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コメント

3/18(日)は緑屋さんお休みでした
たいしたことがなけいればよいですが・・・

舞鶴雪月花の「雪」は最後にスカイツリーが現れるなど
楽しい舞踊でしたね。

プログラムの梅丸君の写真が更新していて大人ぽくなっていました。
(「先物買い」で数年前から応援しています)
声変わりの時期で役がつかなくなる時期に入るのかもしれませんが応援したい役者さんです!


投稿: うかれ坊主 | 2012年3月19日 (月) 22時49分

うかれ坊主様
おはようございます。いつもコメントありがとうございます。

「雪」は愛敬といい観客サービスといい、勘三郎さんらしい踊りで楽しめました。

梅丸クンは私も梅玉さんの部屋子になった頃から注目しています。顔も品もよく、踊りも上手ですし、演技もいいですね(太刀持ちもしっかりしていますし、何より「人間豹」の人形役は忘れられません)。セリフのない舞踊などで舞台出演が続けられるといいなあと思います。

松之助さん、休演でしたか。心配です。お病気でしたら早く回復されますよう!!
(松之助さん、てっきり松嶋屋だと思っていました。嶋之亟さんが桜喜屋--正しい「き」の字が出てこないので「喜」で代用しました--ということも昨日の試演会で初めて知りました。松之助さんについては以前に「みどりやっ」という掛け声を聞いた記憶があるのにいつの間にか自分の中では松嶋屋に戻っていました。思い込みですねえ。迂闊でした。お恥ずかしいcoldsweats02

投稿: SwingingFujisan | 2012年3月20日 (火) 09時39分

こんにちは。

本日、桜席にて昼の部見てまいりました。

実は今月は夜の部だけにしようかなぁと最初は思っていたのです。でも「暫」に吉弥さんがご出演とあって、これは是が非でも見なくては、と。最近功一さんの立ち姿に惚れてしまったので、それも楽しみでした(^-^)。行ってよかったぁ。

七之助さん、昼の部は3演目出ずっぱりの大活躍でどれも皆素敵でしたが、女鯰がとても可愛らしくて個人的には好みでした。試演会で「今月はとにかくそれが一番嬉しい。」と言っていらした仁左様演じる鬼次郎女房のお京。(兄の勘九郎襲名よりも何よりも今月はそれが一番!という意味に私には聞こえました)そう思って見るせいか、本当にとても嬉しそうで、楽しそうでした。

松之助さん、元気にご出演でホッとしました。あと舞台袖に入られる前、勘九郎さんだけでなく扇雀さんも桜席にご挨拶してくださいました。

さ、これから「徹子の部屋」♪のからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2012年3月22日 (木) 17時28分

からつぎ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
「暫」は楽しいですよねえ。小屋で見るとまた格別な楽しさでした。功一さんは美形ですし柄も大きく、素敵な赤っ腹でした。
七之助さんはちょっとユーモラスな女鯰と落ち着いた女スパイと可憐な桜の精と、それぞれ違うタイプの女性がどれもしっくり似合ってますますの飛躍を感じました。はは、兄の襲名より仁左様の女房が嬉しい、って気持ちわかりますね!!
松之助さん、戻られましたか。よかったぁ。
役者さんが上を見上げて挨拶してくださると、こちらの応援する気持ち、拍手が役者さんにも伝わったような気がして「ああ桜席で見てよかった」と思います。

「徹子の部屋」、私にしては珍しくその日のうちに録画を見てしまいましたhappy01 25日のBS朝日がすっごく楽しみです。

投稿: SwingingFujisan | 2012年3月22日 (木) 22時48分

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