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2012年3月20日 (火)

遅ればせながら国立劇場「一谷嫩軍記」

315日 「一谷嫩軍記」(国立劇場大劇場)
「陣門」「組討」は見たことがあるが、「堀川御所」「兎原里林住家の場」は初めてと思ったら道理、前者は98年ぶり、後者は37年ぶりの上演という。それなのに、私としては今一つ盛り上がりに欠けて、序幕「堀川御所」(合戦前の緊張感というよりは貴族風のゆったりした時の流れを感じた)はところどころ、二幕目「兎原里林住家の場」は大半寝てしまった。3階最後列は狭くて暑くて…というのを言い訳に。何十年も上演されていない演目だからもったいないことをしたのか、何十年も上演されていないのにはそれだけの理由があるのか、ミーハー観客である私にはよくわからない。
「陣屋」はいつもは明らかにされていない部分がいくつか演じられて、そのおかげで全体にわかりやすくて面白かった。逆に堀川御所の場があるためか、今回は制札の前で農民たちが騒いでいる場面(花ほめ?)がない。
團十郎さんの熊谷は「陣屋」では初めて。骨太でカッコよかった。敦盛を討った次第を藤の方に聞かせる件では、奥の梶原を意識している様がありありとわかって(吉右衛門さんなら肚でわからせるんだろう)、ドラマチックに盛り上がった気がした。また、ラスト、出家を決めたのに合戦の音が聞こえてくると、はっとするのは武士への未練を思わせる。團十郎さんは確かに不器用な役者さんかもしれない、しかしその不器用さが逆に團十郎さんの持ち味と相俟って、いい熊谷だなあと思うのである。
三津五郎さんの義経が品よく、大きさもあった。
巳之助クンの堤軍次は丁寧で基本に忠実なのが(と言って、軍次の基本なんて知らないのだが、そういう印象だったのだ)好感がもてた。
そして女性2人がとてもよかった。いつもは「敦盛を討った」という熊谷の話に藤の方が突然斬りかかってくるのだが、今回はその前がある。相模の後に藤の方も陣屋にやってきて、2人は何年ぶりかで再会する。すでに熊谷が敦盛を討ったことを知っていた藤の方だが、敵が熊谷だとは、相模との積る話の中で初めて知るのである(熊谷は昔、佐竹次郎という名だった。熊谷になったことを藤の方は知らなかった)。昔の恩を持ち出して夫を討てと相模に迫るなど、話がわかりやすくなった。藤の方の東蔵さんは母の強さと悲しみを院の胤を産み落とすほどの位にある女性の「品のよさ」をもって見せていた。
相模の魁春さんには、相模がわざわざ陣屋に来たのはひょっとしたら小次郎の死を予感していたのではないか、と感じるようなものがあった。ひたすら夫に仕えている様子がいじらしいほどで、わが子を失った悲しみ・絶望も男社会、さらには藤の方への恩義の中で(女の宮仕えもつらい…)納得せざるを得ないとする気持ちは想像するに余りある。熊谷も出家して去り、相模を哀れと思うよりは、相模は今後の人生を思わず考えてしまったのは、もしかしたら相模に芯の強さを見出したからかもしれない。
市蔵さんの梶原、彌十郎さんの弥陀六もよかった。
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時間50分と長丁場だが、ほとんど退屈しなかった。
<上演時間>序幕30分(12001230)、幕間35分、二幕目60分(13051405)、幕間20分、三幕目110分(14251615
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↑熊谷名物、五家宝のほかに、これも熊谷らしい「ラガーマン」というお菓子を買いました(2個+3個の5個入り)。まだいただいていませんが、中身はラグビーボールの形をしていて、ラムレーズン入りの黄身餡の入ったカステラをホワイトチョコでコーティングしてあるそうです。ちなみに7年後の2019年はラグビーのワールドカップが日本で行われます。

 

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コメント

国立はほぼ同じ感想です。
「熊谷陣屋」は3回に1回位は今回のように入り込みを丁寧に付けて欲しいですね。松竹でもできることかと思います。これでも1時間50分ですから「盛綱陣屋」と比較しても短いですし。

今回、熊谷のセリフに「敵と目指すは、安徳天皇・・・」と天皇が入っていたのは良かったですね。

表向きは安徳天皇が敵でありながら、その命は救いたい。
義経はそのことに心を砕くのでしょうが、もしもの事があった時には、その後継として院の胤である敦盛卿の命も救う(天皇の世継として)のが保険(作戦)であったと理解しています。
まぁこの理解は間違っているかもしれませんけど。

全然関係ないですが、今年の子供のためのシェイクスピアは「ヘンリー6世Ⅲ」と「リチャード3世」の2本相互上演ですね。
2つ観る楽しさはありますが演じる役者さんは大変ですね。佐藤誓さんに会えるのが楽しみ。
通しで観るなら7/21(土)ですかね。トークもあるし、時代順に上演されるし。

投稿: うかれ坊主 | 2012年3月20日 (火) 21時10分

うかれ坊主様
こんばんは。コメントありがとうございます。
「熊谷陣屋」をこういう形で見たのは初めてでしたが、毎回が無理でも時々はやってほしいと思いました。面白ければ、1時間50分でも長く感じることなく見られるのですから。
安徳帝の命は「大物浦」では義経に救われますね。そんなことを思いつつ、うかれ坊主様のご解釈をなるほどと拝読しました。

シェイクスピア、私は多分通しは無理ですし、なるべく昼の部で、と考えておりますので日程選びに苦慮しております。明日までもう少し悩んで申込みます。しかし2本見られるのは楽しみですねえ!!

投稿: SwingingFujisan | 2012年3月20日 (火) 22時18分

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