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2012年4月29日 (日)

時間たちすぎ…「法界坊」

420日 「法界坊」(平成中村座)
観劇から時間経ち過ぎ…。

「とざいと~ざい」でナレーションが登場人物を紹介しつつ、黒衣を使って面白おかしく手短にここまでの話をまとめる。黒衣さんもノって舞台を盛り上げる。そして芸者2人が「○○(地名)の××様」とお大尽席のお客の名を挙げる。たまたまこの日のお大尽席は女性ばかりで、「女4人の女子会だわ~」。
そこへしのぶ売りに身をやつした野分姫(七之助:可憐!!)が登場。そのあまりにおっとりした物言いに芸者2人はズコッ。このおっとりには後でも笑わされる。
ゾッコン惚れたお組(扇雀)を見る山崎屋勘十郎(笹野高史)の表情が可笑しくて可笑しくて。お組がそばにいるという喜びでなんと、笹野さん側転しちゃった。その身軽さに客席ビックリ、そしてやんやの大拍手。
お組、その父・永楽屋権左衛門(彌十郎)と勘十郎が祝言のことでごちゃごちゃ揉めているうちに法界坊がやってくる。浅草龍泉寺の釣鐘建立を呼びかける声が鳥屋から聞こえてきた時、一瞬勘九郎さんの声かと思った(ふだんは勘九郎の声が勘三郎に似ていると思うのに、この時は逆)。法界坊もお組に惚れていて、ここでまたひと騒動。お組はようよう料亭宮本の中へ逃げこむ。お組の扇雀さんは、以前は4人の男(要助、勘十郎、法界坊、正八)に惚れられるほどの美形かぁ?などと思ったが、今回はきれいで年齢的にもそんなに違和感なく愛らしかった。
そこへ悪代官がやってきて、かねて法界坊に命じておいた吉田松若の行方と吉田家が紛失した「鯉魚の一軸」の詮議を確認する。金になる仕事だとウキウキする法界坊、それを窺っていた永楽屋の番頭正八(亀蔵)。2人は体を揺らし、リズムに乗りながら宮本の中へ入っていく。暖簾をくぐって客席から見えなくなっても2人がリズムに乗った動きを続けているのが桜席から見えた。
宮本の座敷では永楽屋の手代要助、実は吉田松若(勘九郎)とお組がイチャイチャしながらの痴話げんか。その後ろでせっかく要助の手に入った一軸を法界坊が釣鐘の幟とすり替え、さらに勘十郎が幟と掛け軸をすり替えるというはちゃめちゃな場面がある。これまで2回見た「法界坊」では、この場面はめちゃくちゃ面白いもののやや冗長な気もして、今回「法界坊」はパスしようかとちょっと考えないでもなかったのは、この場面のせい。ところが、今回のこの場面はちっとも長くなかった。とにかく笑って笑って笑っているうちに終わっていた。勘三郎さんと笹野さんが客を笑わせている間、それに気づかない演技をしている勘九郎さんと扇雀さんはかなり苦しいだろうなと思う。
さて、可笑しな2人がいなくなると今度は番頭正八の番。一軸を買い取るための百両を貸すと言って要助に証文を書かせる。この時にも黒衣さんが大活躍。要助に硯を渡し、なかなか仕事のはかどらない本人にかわって墨をすり、挙句に既に書きあがっている証文を渡してやる。
要助が席をはずすと正八と再び現れた法界坊がお組に言い寄る。番頭は番頭で軟体動物のようにねと~っとお組に迫る。その可笑しさ。
法界坊、番頭、勘十郎、権左衛門が入り乱れてのぽかすか殴り合いの場面でもまた黒衣さんが活躍。2人で襖を両側から合わせて、殴り合いを隠す(もちろん桜席からは丸見え。殴り合いはさほどどうってことはない)。
ここへ割って入った道具屋甚三郎(橋之助)。勘三郎さんが楽屋オチで色々チャチャを入れる。「(自分は)要助とお組のちちくり合いを見た見た見た~、みたひろこ」。甚三郎に証拠はあるのかと責め立てられて「まだ病み上がりだから」とひっくり返ったり、証拠の手紙をお大尽席に見せに行ったりまるで子供な勘三郎・法界坊(手紙ははじめ一番近い桜席に見せようとしたのが、ここは貧乏席だから見せる価値なしってことで、急遽お大尽席のほうへ走っていったのだ)。勘九郎さんに対しては「名前を変えたからって威張るな。だいたいお前は臆病なんだ。小さいときお化け屋敷に入れなかった」。等々。
最後は甚三郎にこてんぱんにやりこめられた法界坊がかっぽれでひっこむ。客席からは手拍子が起こる。橋之助さん、「元気になったらよく喋る」と一言。
こういう、場を収める橋之助さんは実にカッコいい。
ここまででまだ序幕第一場。ふ~っ。

第二場「八幡裏手の場」は私にとって「しめこのう~さうさ」の場。平成178月、道具屋市兵衛役の今は亡き四郎五郎さんが楽しそうに歌っていたのが忘れられない。その時の記憶は四郎五郎さんしかないのだが、今回3人揃って歌っていたところをみると、当時もそうだったのだろう。
この場面だったか、第一場だったか忘れたけれど、亀蔵さんと笹野さんのカンツォーネ風というのかオペラ風というのかデュエットがウケた。
二幕目「三囲土手の場」に入る前にしのぶ売りの國矢さんといてうさんが客席に降りて客いじりをするのだけど、それは見えなかった。その間に舞台転換がある。通路を通って舞台に上がる彌十郎・勘九郎・扇雀・七之助の4人も見えなかった。桜席にそういう不具合があるのは先刻承知。
法界坊が落とし穴を掘る場面では、本当の土を穴の中からスタッフが放り投げていて客席大笑い。
要助・お組に恨みを残して法界坊に殺された野分姫の亡霊(法界坊がウソを言って殺したりするから)が出てきてからは笑いの要素が少なくなる。とはいえ、ここまで喜劇できて、笑いの連続、破戒僧・法界坊は愛敬たっぷり、そうなると野分姫殺し、権左衛門殺しは残虐性というよりは刹那的な狂気に捉われたということだろうか。法界坊に残虐性があるとすれば前半の愛敬の中にも感じられるべきだと思うが、私は無理やり結びつければそういう面もあったかなあという程度。
大喜利は桜席の前にも黒幕が下りて、舞台は見えない。定式幕があくと同時に黒幕も上がる。桜席で控えていた大道具さんが浅葱幕を振り落す。勘三郎さんの野分姫がスッポンから現れる。黒衣のもつ面明かり、蝋燭のフットライトが幻想的(けっこう蝋燭の火のにおいがきつかった)。勘三郎さんが本舞台に出ると、七之助さんが黒衣で後ろに立ち、野分姫のアテレコをする。七之助さんが姿も声もとてもきれいだった。野分姫=常盤津、法界坊=義太夫の掛け合いの趣向が面白い。
立ち回りは、隅田川の背景が描かれたパネルの1枚に勘三郎さんが乗って花四天相手の大暴れ。橋之助さんもパネルに上がって勘三郎さんとの立ち回り。奥の扉が開き、背景ごと全体が後方へ下がると双面の亡霊は途中で吹き替えに交代して(吹き替えの役者さんもはっきり顔が見えたがどなただったかまではわからなかった)、ラストは勘三郎さんが法界坊の姿で再び現れる。桜吹雪!! 舞台上からも桜が降り、外の送風機からもモーレツに花びらが散る。それだけではない、外の倉庫にも桜の花房がかけられ、雰囲気を出していた。
カーテンコールでは花四天たちも前に出て拍手を受けていたのが嬉しかった。
<上演時間>序幕・二幕目
115分(11001255)、幕間30分、大喜利25分(13251350
これくらい早く終わってくれると楽。この後、目の前にありながら機会がなくて素通りしていた待乳山昇天にお参りしてきました。
12042901matutiyama

 

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんにちは♪
怒涛の舞台でしたねー。

私が見た日は、舞台上の左右脇にもお客さんが座っていて、時々いじられていました。^^
最後のところでは義太夫と常盤津の前に座ってました。どういう聞こえ方がするんだろうと思いました。あれはどういう料金の席だったのか…

しのぶ売りの國矢さんといてうさんは、お客さんをお地蔵さんにみたてて、なにかお供えしていました。w
双面の亡霊の吹き替えには気が付きませんでした!

しめこのうさうさは、歌舞伎座でやったときは順番におうむでやってたと思います。

試演会の座談会で言ってたんですが、小さいとき入れなかったお化け屋敷は、なんでもアメリカに以前あったお化け屋敷で、けが人が続出して今はないんだそうです。
勘太郎くんは最初から泣いて入るのをいやがって、七之助くんは真ん中ぐらいで帰りたいって泣いたそうです(でも最後にジェイソンに頭を撫でてもらったとか)。

投稿: urasimaru | 2012年4月29日 (日) 09時27分

SwingingFujisan様
 おはようございます。「法界坊」の感想、思い出しながら拝読しました。これだけ、スピーディーで笑いが凝縮された演出、そして、大詰め幕切れの猿之助ばりのサービス過剰演出をみると従来のやり方ではお客が満足しなくなりますね。
 ところで、今回、私は桜席で見たのですが、桜の花びらの降り注ぐ演出の装置を間近にみたのが、眼から鱗でした(以前、演劇界で写真は見た覚えがあるのですが)。別の出し物(例えば、「じいさんばあさん」で数枚の花弁がゆっくり落ちてくるのは、この装置の花びらの量と速度を調整するんですかね。
 私が見た日は、新 中車と団子が観劇していて中村屋にいじられていました。(昨年の日生の勧進帳も遭遇しました)
 ところで、桜席右側は男性私一人だったのですが、何度かお顔を見た女性の方が数名いらして、いつもFujisanさんのブログに来られる方たちかなと、内心、戦々恐々でした。また、この前日は家内といっしょでもあり、張り込んで松席でみたのですが、大向うが寂しく、しようが無いので(?)ルール違反とは思いながら、一階から声をかけました。

投稿: レオン・パパ | 2012年4月29日 (日) 10時27分

ご無沙汰しています。「法界坊」レポ、ありがとうございます。昼の部は、当日朝の突発的な所用で一幕の半分以上を見損ね、軟体動物の亀蔵さんの終わりあたりで滑り込んだので、それまでの詳しいレポ、Swing劇場でとても楽しく読ませていただきました!これまで何度か観ていましたが、断片的に忘れており、おかげさまでいろいろな場面を鮮明に思い浮かべ、時間を取り戻したように楽しめました、ありがとうございましたhappy01

私も桜の右席からの観劇でした。二幕目で、すぐ横の梯子から降りるときに、直前まで気配を感じなかったので、びっくりしました!あと、この日は香川さん親子もいらしていて、証拠の手紙をお大尽席に見せたあと、上手の通路(客席の中ではなく、廊下?平場と椅子席の間あたり)でパイプ椅子でご観劇の親子のところに行って、政明/団子さんに見せ「未来の名優にお墨付をもらったんだよ」と客席を沸かせました。この場面自体は、桜の右からは見えなかったのですが、大詰めは友人と交代して左席から観劇しまして、熱心に舞台に見入る香川さんの姿も拝見できたことも嬉しかったです。カーテンコールのときにも、勘三郎さんが「六月の襲名興行をよろしく」と一言添えられ、正面後ろで団子さんを抱っこした香川さんが、客席の大きな拍手に包まれていました。こういうところも、勘三郎さんのやさしさですねwink

投稿: よこ奴 | 2012年4月29日 (日) 10時36分

urasimaru様
こんにちは。コメントありがとうございます。私の見えなかったところの情報もありがとうございます。
勘三郎さんはじめ皆さん、客のツボを心得た面白い舞台でしたね。

舞台にお客を上げるって、勘三郎さんらしいし、中村座なればこそですね。しかし客席全部の視線を受けてお客さんも緊張されたでしょうね。どんな方がどういう方法でその席に座られたんでしょうね。

お化け屋敷の話は試演会からのネタだったんですねsmile 幼い勘太郎・七之助兄弟の泣き顔が目に浮かぶようです。しかしけが人続出のお化け屋敷って…子供でなくても怖い。

しめこのうさうさ、歌舞伎座ではオウムでしたか。いつも聞くたび当分の間、頭の中でリフレインしていますcoldsweats01

投稿: SwingingFujisan | 2012年4月29日 (日) 15時44分

レオン・パパ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
ほんと、おっしゃるとおり、これだけのサービス舞台を見てしまうと、普通の「法界坊」では物足りなくなってしまうかもしれません。
桜を降らせる方法については以前、梅之さんが書いていらっしゃって、おおそういうことだったのかと感心したものです(梅之芝居日記2005年9月9日)。
香川さん父子がいらしていたということは、レオン・パパ様とよこ奴様は同じ日にご覧になったのですね。いいなあ、私も遭遇したかったですわ。

これだけ歌舞伎を見ていると、時々見覚えのあるお顔に出会うことがありますね。直接存じ上げなくても、「ああこの方も相当に歌舞伎がお好きなんだな」と共感を覚えます。
男性は声をかけられていいですね~。私は仕方ないので心の中でかけています。

投稿: SwingingFujisan | 2012年4月29日 (日) 16時06分

よこ奴様
こんにちは。コメントありがとうございます。
前半ご覧になれなかったのは残念ですが、このレポが少しでもお役にたてたのであれば嬉しいです。お芝居ってその時はしっかり目に焼き付けたつもりでも時間が経つとところどころ忘れるものですねえ。私も今回見て、あらためて色々な場面を思い出しました。

そうそう、勘三郎さん、桜席右側から舞台へ降りていらっしゃる場面がありましたね。いつの間に現れたんでしょうね。私も左側から見ていたのに全然気づきませんでした。
香川さん父子について、勘三郎さんがちゃんと心遣いをされたことを伺い、大変うれしく存じました。というのも、先月中村座に挨拶に行ったという香川さんとのことで心無い噂を聞き胸を痛めておりましたので。そんな噂を吹き飛ばすお話で気持ちが明るくなりました。ありがとうございます。香川さん父子の初舞台まであと1カ月と少しですね。

投稿: SwingingFujisan | 2012年4月29日 (日) 16時15分

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