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2012年4月12日 (木)

お家騒動ものは面白い:中村座「小笠原騒動」

45日 四月大歌舞伎「小笠原騒動」(平成中村座)
12041201nakamuraza 初めて見るので楽しみにしていた。今回も桜席。題名からお家騒動ものであるとわかるが、予備知識はなし。
まずは序幕で(ネタバレしますが)小笠原豊前守の側室お大の方(七之助)にビックリさせられた。可憐できれいだし、養父佐兵衛(勘之丞)の話を聞いて想像した女性とは大違い。深い仲の犬神兵部(勘九郎)と謀って小笠原家を乗っ取ろうとしているのはいいとして、養父の首を平気で絞めて殺してしまう。なんと恐ろしい女だ。佐兵衛の首に巻きつけられた赤い布が非常に印象的。この布をぐっと引っ張るお大の冷酷な表情にはさっきの可憐さにかわって美しさが際立つ。ここは七之助さんが悪女の美しさをよく研究しているのではないかと思った。
七之助さんのもう一役は善人派のお早。こちらは頼り甲斐がありそうに見えたが案外そうでもなく、あっけなく殺されてしまう。雷を怖がるところがもどかしく可愛い。
お大の方と組む悪役・犬神兵部の勘九郎さんが大きくてカッコいい。もちろん見ているこちらは善人派に肩入れするのだが、悪役が魅力的だからこそ善人側も光るのだと思った。大詰、花道でハシゴを使った兵部と捕手たちとの大立ち回りがある。ハシゴの天辺で手放しで逆さになったのは彌風さん。勘九郎さんは口に太刀を咥え、助走をつけて手を使わずハシゴ途中まで駆け登る。そして後ろ向きに飛び降りる。彌風さんの勇気ある美技と勘九郎さんの豪快な大技に盛大な拍手を送った。
勘九郎さんも二役で、もう一役はお早の夫・小平次。兵部とは対照的なイキのいい善人で、せっかちな感じが小平次の一本気なところを表していた。橋之助さんとコサックダンス風立ち回りや水車小屋での本水ばしゃばしゃ立ち回りが激しく楽しい(勘九郎さんの後十字靭帯、切れたままなんだから…)。千穐楽にはヒートアップするんだろうな。
橋之助さんは最初悪役で返り忠の足軽・岡田良助。最初は善人そうに見せて豹変する(お早をかばうところなんて、色気もあったし素敵だったのに)。ずっとテンションが高くて少し疲れたけれど、その熱演で良助の事情、心境の変化がわかる。できれば生きて自ら訴状を届けてほしかったが、人1人を殺した罪、また家族を悲劇に追い込んだ罪は大きいということだろう。
扇雀さんの立役・小笠原隼人(善人側)が理知的で素敵。もう一役の良助女房も生活感があってよかった。隼人が助けた狐の化身である奴・菊平も扇雀さん。ただし、序幕の花道での引っこみは桜席からは見えず(席を移動してもいいし、そのまま舞台転換をお楽しみくださってもいい、という事前の説明で、私たちは舞台転換のほうを選んでしまった。狐の恩返しは小笠原家の狐伝説に基づくそうだが、袖に飛び込む、狐の魔力で悪者たちの動きを操る、舞台上手の木(何の木だったっけ?)に登って成り行きを見守るで、狐忠信のパロディ?
良助の娘役の子役ちゃんが健気で可愛くて客席の人気をさらっていた。その子供にほだされた借金取りたちが面白可笑しく微笑ましい。笹野高史さんの味、うまさが光る。國矢さん、山左衛門さんも軽味を出して、この人たちがいい人たちでよかった、と和ませた。しかし痛ましい愁嘆場はやや長いような気がした。テンポよく運んできた芝居がここだけ義太夫の時代世話となるからだろうか。
四幕目第二場、大詰第二場で勘三郎さんが登場。わずかの出番ながら、やはり存在感の大きさは格別なものがあると思った。
最後は勘九郎さんが勘三郎さんに向かって「大」、扇雀さんに向かって「入」の文字を刀で書き、二段にのぼっての見得で終わり。楽しかった。
<上演時間>序幕・二幕目65分(15301635)、幕間25分、三幕目53分(17001753)、幕間20分、四幕目28分(18131841)、幕間15分、大詰34分(18561930
12041202nakamuraza

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisan様
 お早うございます。平成中村座、昼夜ともに面白いと評判ですね。
 ところで、私は、昨日、演舞場夜の部でした。六段目は上方風演出(私は藤十郎が数十年前にやったのを一度みています)、三人侍の入り込みから上演した七段目とまずまずの充実ぶりでした。亀治郎、気迫あふれる勘平で満場の視線を引きつけていました。この優、同年代の俳優のなかでも、義太夫のセリフ術が優れているので、リアルさを追求した上方演出でも無理なく見ていられました。また、上方由来の三人の役者が、熱演の亀治郎を見事に支えていました。
 七段目は、やはり松緑がはまり役です。ニンでないと酷評が多い染五郎、素直に演じているので、過大な期待をしなければ見ていられます。で、感じたのは、この優、今後年齢を重ねるに従い、幸四郎系ではなく、吉右衛門系の役柄を深めていくべきなのではないかと思いました。
 

投稿: レオン・パパ | 2012年4月15日 (日) 08時02分

レオン・パパ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
中村座は夜の部観劇が先になりましたが、あの狭い空間で立ち回りも迫力ありましたし、展開もテンポよく面白かったです。
演舞場夜の部、亀治郎さんが好評のようで嬉しいですについてのご感想、同感です。確かにニンではないと思いますが、好感がもてますし、私は昼の部の城明け渡しでぐぐっと胸に迫るものを覚えました。吉右衛門系の役柄を深めていくべきとのお考えにも賛成です。今回の大星は幸四郎さんの影響が感じられました。

投稿: SwingingFujisan | 2012年4月15日 (日) 17時36分

SwingingFujisan様
 お早うございます。昨日、家人とともに、中村座の夜の部みてきました。橋之助以下、熱演でとても楽しめました。いかにも関西でできたお家騒動狂言、こういった作品から、日本映画のちゃんばら娯楽時代劇につながっていくような作品ですね。
 勘九郎の姿形が仁左衛門に似ており、七之助はセリフ術を含めいろいろな演技が玉三郎に似ているなと思いました。
私は「小笠原騒動」2度目なのですが、その時は、狐たちの籠のお迎えと水車の立ち回りが印象に残っています。なんと、その時の犬神が孝夫ちゃんでした。

投稿: レオン・パパ | 2012年4月21日 (土) 07時15分

レオン・パパ様
おはようございます(7:15!! 昨夜遅かったこともあって、まだ夢の中でした)。
昨日、夜の部をご覧でしたか(私は昼の部でした)。
私は初見ですので比較はできませんが、中村座のような小屋でのこういうお芝居は独特の雰囲気があっていいですね。お家騒動モノを見た!という気持ちになりました。
孝夫ちゃんの犬神、さぞカッコよかったでしょうね。ご覧になったのが羨ましいです。国立の悪役も素敵だし、近い将来、仁左様で小笠原騒動をやっていただけたらなあと思います。
若い役者さんが色々な先輩役者さんの芸を吸収するのはいいことですね。こちらも、その役者さんの影響を見る楽しみがありますし(^_^.)

投稿: SwingingFujisan | 2012年4月21日 (土) 10時18分

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