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2012年4月27日 (金)

とても面白かった七段目:演舞場千穐楽夜の部②

425日 四月大歌舞伎千秋楽夜の部(新橋演舞場)
前回の感想で一文字屋お才(亀鶴)と判人源六(薪車)について触れなかった。世慣れたお才といかにもそういう商売な感じの源六のやりとりは面白かった。亀鶴さんの女形を初めて見たのは浅草歌舞伎の若葉の内侍だったと思う。その時はいまひとつピンとこなかったのだが、このお才は雰囲気が感じられてよかった(お才という人はいつもうまく摑めない。しかし今回、なんとなく少しわかってきたような…)。亀鶴さんにしても薪車さんにしても、芸の幅が広く、度の役でも達者だなあと感心する。
「七段目・十一段目」
全体にとても面白くて一気に見てしまった、という感じ。けっこう泣かされもした。若手の芝居は、わかりやすいのだろうか。
福助さんのおかるが素晴らしくよかった。私が福助さんを苦手なのは、時々変顔をしたり、過剰な演技をして品を落すからであって、今回もおかるの配役がね~という気持ちだったのだ。ところが、六段目で化粧鏡に向かっているおかるにはっとさせられ、七段目ではその憂いを含んだ美しさ、兄とのやりとりでの可愛らしさに惹きつけられたし、父親と勘平の死を知ってからのおかるには泣かされもした(父親の死に驚く福助さんに対し、客席の一部から笑いが漏れたような気がしたが…。気のせいだったら失礼)。オペラグラスを忘れたので細かい表情まではわからなかったが、変顔もしなかったんだろうと思う。おかるという女性の心を福助さんがしっとり、ほんのり色気を感じさせて表していた。
松緑さんの寺岡平右衛門は形がいかにも奴(奴凧の奴を思わせるような)らしくて、セリフはメロディー的に時々気になることもあるのだけれど、実直で気のいい平右衛門の性格にぴったりだと思った。遠目で見ると、正面の顔が二代目に似ているような気がした。千崎、竹森、矢間の暴走を止めて突き落とされ座敷から飛び降りる身軽さ、由良之助に布団をかけてやる仕草、その他諸々、松緑さんの身のこなしがきれいだった。おかるに勘平の無事を尋ねられて答えに窮し、「達者だ、大達者だ」と返さざるをえない心中には泣けた(ここも、窮状にある平右衛門に客席が笑っていたような…)。
突然おかるに斬りかかる平右衛門、恐怖に逃げ惑うおかる、ここからのやりとりは少し疲れることもあるのだが、今回は(自分の中での)中だるみもなく非常に面白かった。
酔った染五郎さんの大星ははじめは線の細さが気になったが、斧九太夫に対する悔しさ・怒りの爆発がこちらの胸にも響いて手に力が入り、泣けた。四段目の最後、判官が切腹した九寸五についた血を口にして泣いた由良之助が甦ってきて、本当にここは感情が高まった。いっぽうで酔った由良之助を見ていると染五郎さんって、清潔感もあるのに頽廃的な色気があるなあと思った。幸四郎さんのイメージだった四段目と違って、ここは吉右衛門さんのイメージがしたのがよかったかも。
千崎(亀寿)、竹森(萬太郎)、矢間(巳之助)の三人侍では、セリフの激しさ以上に亀寿さんの千崎に苛立ちが一番表れていたように思った。

猿弥さんの鷺坂伴内はうまい。体型からくるのだけでない剽軽さ、その中で武士であることも忘れていない。
仲居の歌江さんの若々しい軽妙さが嬉しかった。やはり仲居の芝のぶちゃん、セリフが福助さんの口調に似ていた。見立ては「そうめんごろごろ、そめごろう」と仲居(段之さん?)がそうめんを転がす。もう一つは太鼓持ち(茂之助さん? オペラグラスがないからよくわからなかった。違ってたらごめんなさい)たちによる人間スカイツリー。天辺の人が「千穐楽」の掛け軸を垂らす。

十一段目は討ち入りでめでたしめでたしというところ。
女物の着物をかぶった師直方武士が本舞台から花道を駆け抜けようとした時、「あっ、亀鶴さんだっ」と胸が高鳴った。結局そこで塩冶方に見とがめられ、戦わざるをえなくなる。かぶった着物をはずし腰のところから引きずる亀鶴さん(小林平八郎)のカッコいいこと!! 萬太郎クン(竹森喜多八)との立ち回りはワクワクして、こっちも体を動かしそうになった(この立ち回りは中村屋兄弟の迫力を思い出す)。もうダメだと悟って浪士の槍を自らわき腹に刺した時もなんとなく客席から笑いが聞こえたような気がしたけれど、気のせいかな。
見事、師直の首を判官の位牌の前に供えた浪士たち。菊之助・判官の無念そうな顔がきっと綻んだであろう。そして勘平の武士の一分も通ったのだと、この場面まで演じられたことの意味を思うのであった。
<上演時間>「五・六段目」94分(16301804)、幕間30分、「七段目」101分(18342015)、幕間10分、「十一段目」20分(20252045

 

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