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2012年4月23日 (月)

国立劇場研修発表会:座談会

418日 伝統歌舞伎保存会研修発表会座談会
時蔵、秀太郎、仁左衛門、左團次、孝太郎、愛之助(下手側からの並び順)という豪華なメンバーによる座談会。織田紘二さんの司会による座談会は、左團次さんの「らしい」アウトロー(?)ぶり、秀太郎さんのやんわりとした話しぶりに、客席も笑い感心し、和やかな雰囲気が流れ、稽古や芸の継承に関する非常に興味深いお話を聞くことができた。
今回の石切梶原はやはり松嶋屋型で仁左様はすべての稽古に立ち会ったそうである。「11人のレベルでよくやった。客席のあたたかい応援がありがたかった」と仁左様。以下、話がちゃんとつながっていなくて唐突になってしまうところもあるかと思うけれど、ざっと話の内容を。
織田:歌舞伎はどういう時代にあっても多くの後継者を生んでいる。歌舞伎は不滅である。歌舞伎の継承はビデオがあった時代と、ビデオがなくて実際に見るしかなかった時代に分かれるが、ビデオがなかった時代の高島屋さん、どういう修業をされましたか?
左團次:自分は修業らしい修業はしていない。どうでもいいやで長年やってきた。今回の「石切梶原」は、夜寝られないので昼間稽古に付き合って寝ていた。たまに目を覚まして「いいよ」と言う程度。みんな初めての大役だろう。自分も分不相応の役をたくさんして、先輩方の寿命を縮めたと思う。
ある噺家が先輩のところにカセットテープをもって稽古に行ったら「もう来なくてよい」と言われた。歌舞伎も同じようなものです。
織田:同じような時代の秀太郎さん。
秀太郎:ビデオはなかった。関西歌舞伎はとくに修業はない。雀右衛門さんが友右衛門時代に手取り足取り教えてくれた。それが大変役に立った。
織田:真ん中あたりに立つのではないか(というところで、時様が自分かと腰を浮かしかけたが)ということで松嶋屋さんは?
仁左衛門:若いときはビデオはなかった。マンツーマンで稽古。父に吉田屋を厳しく教わった。浴衣姿なんだが、まさにそこに伊左衛門がいる。それだけで圧倒される。様々な先輩の型を教わった。最後に教わったのは沼津の十兵衛。その頃には「はい、わかるでしょ、そこはこう」という感じ。ビデオは深みがない。(この話の時、仁左様は「おとうさま」「教えてくださった」などと敬語を使っていて「おや?」と気になったが、それだけ父親を尊敬し、また役者としては父子ではなくて先輩後輩という気持ちでいるのだろうと感銘を受けた)
織田:もう少し若い時蔵さんは?

時蔵:色々な人に教わる。梢は又五郎さんに教わった。又五郎さんは全部のセリフを言って教える。一番怖かったのは成駒屋のおじさん。
女形は相手役なので、相手の役者さんに誰に教わったらいいかを聞いてその人のところへ行く。(今回は言わなかったが、時様は前に、ビデオでは形だけ、心が入らない、また収録の日がいいとは限らないと言っていた。)
孝太郎:沼津のお米は伯父のところへ行った。「教えることないんだよね~」と言われた。芝翫さんは相手役によって違うから今回の相手は誰?ときいて、その人の映像を見ながら教えてくれた。
織田:国立劇場には全作品の映像記録が残っている。俳優はいつでも見られる。
愛之助:映像は「どうしてここで止まっているのか」とか、カメラが別の角度に飛ぶから肝心のところがわからない。今回は指導者として名を連ねているが、自分も勉強になった。
織田:稽古場は勉強の場。
時蔵:指導する稽古場は(自分が稽古する稽古場とは)違う。

秀太郎:若い頃には文楽の太夫にも教わった。
織田13代目は自分も義太夫を語った。左團次さん、お父様には?
左團次:父は役柄も違うし、何も言わなかった。役者はみんなそうだろうが、自分の父親が一番うまいと思っている。(一瞬、劇場全体にちょっとドキッとした空気が流れたような…)
一番うまい人に教わったら何も言えないから、あちこちへ行かされる。おかげで自分はどんな人の言葉も「そうですか」と聞ける。

仁左衛門:私たちも同じ。父として教える立場、叱る立場になるのは不安。自分の教えている姿を、諸先輩が天から「俺はそんなこと教えてないよ。俺から教わったなどと言わないでくれよ」と言っているにちがいない。
秀太郎:教わる者は訊き返せない。だから教えるほうもそこに気を付けてわかりやすく教えるように心がけている。
織田:芸に関する社会は礼儀から始まる。息子さんに対してどう教えているか?
時蔵:若い時に教わった役は自分の中で少しずつ変えていることもある。梅枝に教えるときは原点に立つようにしている。萬太郎は立役なので他へ行けと。
孝太郎:映像を見て千之助が「パパ、へただね」と言う。
仁左衛門:孫といっても先輩後輩。まだ子役だが厳しく指導している。
織田:新しい役のプレッシャーについて。
愛之助:勉強する時間を作ってはいるが、どんくさいもので…。
時蔵:今回の梶原は愛之助さんにと提案したが、仁左衛門さんが「弟子だけで」ということだったので。(ラブリンに向かって)役1つ損したね。
仁左衛門:愛之助はいつでもやれる。
織田20期生は今月が初舞台。
時蔵:スタートラインに立たせるための教育をしている。(時様は国立劇場で研修生の指導をしているが、別の時に「研修所の卒業がスタートラインではない。卒業して誰かの弟子になる、そこがスタートライン。そこに立てるようにするのが講師の務めである」と語っていた)
織田:第21期生が来年始まる。今日の舞台は国立研修生のほかに上方歌舞伎塾の人たちも出ている。これからの若い人へ言葉を。
秀太郎:形も大事だが、心を学んでほしい。目の前にあることだけじゃない。
仁左衛門:そういうことです。
時蔵:歌舞伎を好きになってほしい。歌舞伎は深いから。
左團次:もう少しお給料を上げて。
孝太郎:体を壊さなければ一生できる。
愛之助:歌舞伎を愛していただきたい。
仁左衛門:歌舞伎を全然知らずに応募した人も多い。それでここまでやっている。乞食と役者は3日やったらやめられないと言うが、飛び込んできてほしい。つらいけれど、面白い。(ただ、正座ができないのは致命的だそうですよ)
秀太郎:男性に限ります。
仁左衛門:僕は女性でも…
さて、私に孫がいたとしてそれが男の子だったら…どうするかなあ。もちろん私に孫の将来を決める権利なんてないけれど、勧めるかなあ。演じるより見る側にいるほうが楽だものねえ。
<上演時間>「石切梶原」85分(18001925)、休憩15分、座談会30分(19402010

 

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