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2012年4月24日 (火)

終わって寂しい「絵本合法衢」①

418日・23日「絵本合法衢」(国立劇場大劇場)
18
日が2回目、そして23日千穐楽に3回目の観劇。18日は初日に比べ進行がずいぶんスムーズになっているようだった。
そういえば初日と千穐楽は雨だったなあ。
幕が開くと殺人現場、そんな衝撃的な幕開きで始まり、チラシに写真の出ている出演者11人のうち殺されないのは1人だけ(誰でしょう、わかりますか?)というキョーレツな殺人物語、何度見ても面白くハラハラドキドキする。その主役のあの極悪人にもう会えないのかと思うと寂しい。
<嬉しそうな極悪人・大学之助>
18
日は1階後方、花道近くの席(ネットでそこしか出てこなかったんだけど、実際には最後列が空席で、できたら移動したかったわ)、23日は最前列センター。やっぱり最前列はいいわねえ。序幕・水門口の前で仁左様の顔が深編笠の下から見える。
下郎を殺して立ち去ろうとするところへ高橋瀬左衛門がやってくるのが見え、隠れる大学之助。高橋の中間のもつ提灯を叩き落として花道へ。瀬左衛門が見とがめると、小柄を投げつける。本舞台で瀬左衛門が怪しむまま定式幕が閉まる。花道に残った大学之助は笠を取り、にまっと不敵な笑いをもらす。ああ、何と大きくて魅力的。暗い夜に咲いた悪の華。
大学之助が引っこむ間に、本舞台はひっそりと2人が殺された闇夜の水門口前から明るい昼の土手道に変わり、農民たちが一休みしている。この場面転換が見事だなあとふと思った。背景の絵にある畦道が平面なんだろうに盛り上がって見えた。
闇でも昼でも大学之助の悪は止まらない。大学之助が大切にしている鷹が逃げ出し、探し回っているお鷹番の松浦玄蕃(男女蔵)は花道をこちらへやってくる大学之助を本舞台で手をついて待つ間、恐怖のあまり震えていた。恐怖政治(便宜的にこの言葉を使う)の怖さは側近がよく知る。土手でどっかと床几に腰かけた仁左衛門・大学之助の大きさに圧倒される。
その大学之助が一目惚れしたお亀(孝太郎さんは千穐楽が一番きれいだった。愛之助さんに寄り添う姿が可愛い)と夫・与兵衛は危ういところを瀬左衛門に助けられる。その時の大学之助、全身に力を込めて怒りにわなわなと震えていた。その間にも悪巧みを考えている様子の大学之助、瀬左衛門殺害を思い立った時の嬉しそうな顔。だいたい、大学之助という男は人を殺すのが嬉しくてしょうがない、といった感じなのだ。
そして何ともむごい子供殺し。さすがに側近たちもこれはまずいと諌めようとしたが、大学之助の勝手な理屈を呑み込まざるを得ない。恐怖政治の下では自分もそっちにつくのが生き延びる知恵というものだということだ。ヘタに諫言したりしたら瀬左衛門のように殺されてしまう。
一見のどかな田園風景も血にまみれ、舞台が回るとそこは瀬左衛門の家。
子の遺骸を前にした大学之助、瀬左衛門、殺された子の両親の緊迫した場面。母親の身をよじっての嘆き悲しみは身につまされる。嶋之亟さんが全身で悲しみ・空しい抗議を表していた。身分制度の不条理はどうしようもない。
百姓夫婦はお殿様に丸め込まれ、だまされた瀬左衛門(弟・与兵衛の許嫁であるお亀を見る目がとても優しい)はあえない最期を遂げる。瀬左衛門の弟・弥十郎に対する大学之助の都合のいい言い訳に、思わず客席から失笑が漏れる。
扇で半分顔を隠した大学之助、ぺろっと赤い舌を出したところで幕。なんという愛敬。

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