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2012年5月23日 (水)

中村座5月試演会②:「供奴」とトーク

521日 平成中村座試演会(平成中村座)
「供奴」
たぬき会による「供奴」。たぬき会とは、歌舞伎役者さんたちのお勉強会らしいが、私は初めての拝聴というか拝見というか。
雛壇は上段上手から扇雀、梅之、萬太郎、杵屋栄津三郎、萬次郎(ここまでが三味線)、梅玉、彦三郎、錦之助、左字郎、亀蔵、男女蔵、橋之助(以上、唄)。下段は同じく上手から田中傳十郎(笛)、梅丸、虎之介、新悟(以上、小鼓)、勘三郎(立鼓)、千次郎(大鼓)、勘九郎(太鼓)。全員浴衣姿。
三味線にはプロの栄津三郎さんが入り(立三味線は萬次郎さん)、笛を吹く役者さんはいないのか、やはりプロの傳十郎さんが担当。唄の役者さんの後ろには文五郎さんが控えていた。
目を引かれたのは梅丸クンで、端正な居住まいがリンとして美しい。鼓もとても上手。萬太郎(元年)、新悟(2年)、梅丸(8年)、虎之介(10年)と平成生まれの若い男の子たちが和楽器を真剣に演奏する姿を見るのは客としては大きな喜びであった
唄はそれぞれがソロで少しずつ歌ったが、錦之助さんが音程をはずし、客席は笑うし、錦之助さん自身も「あれっ」というような表情でテレ笑いを浮かべながら、何とか乗り切り。幕が閉まったあとで「一番練習したのに一番ダメだった」と言っていた錦之助さんに対し勘三郎さんが「いやいや」というふうに手を振っていた。錦之助さんは真面目でお堅い印象をもっていたから、こういう姿を見るととても親しみが湧く。私にはもう1人「あれ?」という感じに聞こえた役者さんがいたけど、確信がもてないからお名前は出さないでおこう。彦三郎さんはやっぱりいい声をしている。でも役者さんは楽器の練習はするようだけれど、唄はあまりやらないのかもしれないなあ。
演奏そのものは、本来そういう曲なのかどうかわからないけれど、だんだん早くなっていったような気がした。「趣向の華」でも役者さんの演奏ってどんどんアップテンポになるから、プロでないとそういうものなのかもしれない。
でも、とっても楽しく聞けたし役者さんたちのこんな姿はふだんなかなか見られないから貴重な機会であった。

「ご挨拶」
いつものように今回もフジTVの吉崎アナが司会。居並んだのは上手から萬太郎、男女蔵、錦之助、萬次郎、彦三郎、梅玉、勘三郎、扇雀、橋之助、勘九郎、亀蔵、新悟、虎之介の13人。予定されている20分で大丈夫なのか?と思ったら、やはり20分ほど時間をオーバーした。
勘三郎:即日完売でありがたい。12年前は中村屋、大和屋、成駒屋、松嶋屋だったが、だんだん屋号が増えていって、今ないのは播磨屋くらい(次回の中村座には播磨屋の参加が期待できるのかな)。中村座は3年後に又浅草でやる(来年は大阪だそう。また来年7月にNY公演がある模様)。
梅玉:今回初参加である。今日はあたたかいお客様の中で、いい勉強になっただろう。自分も楽しい。
彦三郎:江戸時代に先祖の彦三郎が座頭として浅草で上演した(というようなことだったと思う。よく聞き取れなかった。間違っていたらごめんなさい)。
萬次郎:ある天文学者(だったかな?)が言っていた。隅田川くらい芝居心のある川はない。南北に流れているから月が出る。セーヌは東西なので月が出ない(だから、中村座のロケーションはこの上ない、ということだったと思います)。
錦之助:初参加であがってしまい、ああいうふうになった(長唄のこと)。次回の中村座にも声かけてください。
男女蔵3年後にも出してほしい。
萬太郎:勉強になる。又参加したい。
扇雀:今月で終わるのは残念。試演会は教えるほうも勉強になる。演舞場との掛け持ちでたぬき会に出られない七之助が音だけ聞いて「歌舞伎役者ってすごいですね」と言っていた。自分は弾いてる振りをしていただけ(笑)。
橋之助:一門の3人(?)が大役をいただいた。自分の弟子ながら胸がいっぱいになった。
勘九郎:中村座にはいつも思い出がある。今回は襲名公演もやったし三社祭で踊りを奉納したし、とくに思い出深い。
亀蔵12月から5カ月間で18役やらせてもらった。新しい役もやった。これらが血となり肉となる。
新悟:父・彌十郎がこの場にいないのは来月の稽古のため。
虎之介:先輩方の面白い話、真剣な話で僕は何も言うことない。
勘三郎:今月は世話物を2つ出しているが、黙阿弥はこういう小屋のために芝居を書いたんだと思う。たとえば新三が忠七にお熊を連れて逃げるよう唆す場面は、小屋なら囁いても聞こえるが、歌舞伎座のような大きな劇場では声も大きく出さざるを得ない。そうすると作品が少しずつ変わっていく。
ちなみに「め組」を勘三郎さんに勧めたのは橘太郎さんだそう。
この後、質問コーナーがあって、やっぱり質問は勘三郎さんに集中した。取手からいらした方が「一本刀」をぜひ取手でやってほしいと要望を出されたが、この方のお父様が勘三郎さんに取手案内をされたことがあるそうで、その時に実際にトンビが空を舞っていたのだとか。これは奇跡に近いことで、勘三郎さんは茂兵衛を演じるたび、その時のトンビを思い出すと言っていた。
この後、試演会の出演者全員が登場して一言ずつ挨拶をしたが、最後のほうは時間がなくなって、名前紹介だけになってしまった。
トークショーでは時間の割に人数が多くて一言ずつが精いっぱいだったのはやむを得ないが、梅玉さん、彦三郎さん、萬次郎さん、錦之助さんといった初出演の方々のお話をもっと聞きたかった。でも「哲明さんがいるから中村座がある。年下だけど尊敬している」との梅玉さんの締めの言葉に、勘九郎さんが「本当に中村座を実現させた」父親を尊敬していると以前語った言葉が重なり、中村座の意義の大きさをあらためて噛み締め、感動のうちに中村座を後にしたのでした。
<上演時間>「十種香」55分(16451740)、幕間15分、「毛抜」55分(17551850)、幕間15分、「供奴」15分(19051920)、「ご挨拶」20分(19201940

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コメント

こんにちは。

試演会れぽ、ありがとうございました。

>役者さんの演奏ってどんどんアップテンポになるから、プロでないとそういうものなのかもしれない。
経験者として、よくわかります→どんどんアップテンポになる。
はやくなっているのは自分でもわかるんだけど、どうしようもないのです。そっか、やっぱりそうなんだ。

追加公演の桜席がとれて(^ ^)v、のからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2012年5月23日 (水) 14時14分

からつぎ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
おお、からつぎ様も三味線をお弾きですか。素敵!! 憧れるのがもっと早かったら私も三味線を習っていたかもしれません。もっとも若い頃ギターに手を出して、なんにも弾けぬまま放り出してしまいましたから、三味線はもっと自分の手に負えそうもありませんが。
三味線って、やはりテンポが早くなりがちなんでしょうか。とくに合奏になるとそうなのかもしれません。
「自分でもわかるけれどどうしようもない」--まさに経験者としての真に迫ったお言葉。でもなんだかわかるような気がします。

追加公演の桜席、よかったですね!! もしかしたらお近くかも…。

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月23日 (水) 16時56分

こんにちは。

再びお邪魔いたしますm(_ _)m

すみません。言葉が足りませんでした。私の舞台経験は三弦ではなく、筝曲です。合奏曲では三弦との共演もあります。で、邦楽の場合はコンダクターがいないので、早くなりがちなのかもしれません(もちろん私が未熟者だからですが)。

お三弦を弾きたくてはじめた筝曲ですが、腱鞘炎やら腰痛やらでそこにいきつけないままとなっております(^_^;
かじるだけはかじったんですけどね>三弦。

あの藤原道山さんとも同じ板の上に乗ったことがある、からつぎでした。

投稿: からつぎ | 2012年5月23日 (水) 18時07分

からつぎ様
こちらこそ、早とちりで申し訳ありませんでした。
筝曲も素敵!! 女の子であれば幼い時から一度は憧れるのではないでしょうか。私も憧れるだけは憧れ、でもまったくご縁がありませんでした。
道山さんとご一緒の経験もおありとは、なんとすばらしい!! ご謙遜なさっていらっしゃいますが、からつぎ様の腕前の見事さが思われます。
からつぎ様は本当にご趣味の幅が広くていらっしゃいますのね。

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月23日 (水) 23時53分

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