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2012年5月 5日 (土)

5月演舞場花形歌舞伎②:「紅葉狩」「女殺油地獄」

51日 五月花形歌舞伎昼の部初日(新橋演舞場)
「紅葉狩」
獅童さんが前の幕から一変して貴公子役。きりりとかっこよい。局・田毎の高麗蔵さんがきれいだった。腰元・岩橋が吉之助さんだとはわからなかったぁ。平成5年生まれの隼人、種之助、児太郎の3人が舞台上で揃ったのを見て、時代が動いていることを感じた。しかし残念ながら更科姫の踊りは食後のこともありところどころzzzz。
山神の愛之助さんは、私が見た構えが低く、体の柔らかさと勢いがうまくミックスして、リズム感もよく、踊りを十分楽しませてもらった。
長唄、竹本、常盤津の掛け合いが豪華。鬼の登場が待たれる。あら、鬼は1人だけ? ああそうか、これは「鬼揃」のつかない「紅葉狩」だったのね、と今頃になって気づいた次第。
福助さんの更科姫が本性を現す時、また過剰演技をするんじゃないかと心配したが、杞憂に終わった。鬼の化粧はあまりきれいだと思わなかったが、獅童さんとの立ち回りは2人とも勢いがあって楽しいし、福助さんの毛振りはとてもきれいだった。山神は神刀を授けず、維茂は自分のもつ名刀・小烏丸で戦っていた。
ラストは鬼が松の大木に登り、腕をあげるにつれ松の枝もあがっていく。
「女殺油地獄」
「徳庵堤」の場は非常に面白かった。愛之助・薪車・宗之助(後の2人、「刷毛の弥五郎」「皆朱の善兵衛」という名前だったのね。何回も見ているのに初めて名前に注意がいった)の3人がいかにも不良少年で、いつの時代にも不良少年はいるのだなあと思いつつ、あの時代の大坂へタイムスリップ。
芸妓の松也クンがここでも色っぽくてきれい。田舎大尽(このお大尽、意外とケンカに強いというか粘り強くい。あるいは与兵衛が見かけ倒しなのか)との付き合いは金、与兵衛には本当に惚れているんだか、これも商売なのか。声は普通になっていた。愛之助さんと並ぶと体の大きさがわかるが(それでも「おおっ」というほどは目立たない)、1人でいるときは気にならない。
歌江さんが今月も元気な姿を見せて嬉しい。
客席からは見えない舟客と土手上の通行人とのやりとりなど、野崎参りの浮き浮き感がこちらにも伝わる。
愛之助さんの与兵衛は随所に仁左様がみられる(とくにダダをこねるところが激似、と思った)が、以前に感じたミニ仁左衛門といった印象は薄れ、仁左様の教えをもとに愛之助さん独自の与兵衛像を作り出しているように思った。
福助さんのお吉(初演とは驚き)はなんか余計なことをして笑いを取りに走るんじゃないかと心配したが、ちゃんと控えめに真面目につとめていて、とてもよかった。どうも福助さんというと、過剰演技、変顔でわざわざ品を落すという印象が強くて好きじゃなかったのだが、先月のおかるから変化がみられ、ちゃんとやればこんなにいいんじゃないの、と認識させられる。新しい歌舞伎座での襲名1号になるかもしれない(歌右衛門? 芝翫?)という予感さえしてくる。
さて、このお吉、愛之助・与兵衛との年齢差が程よくて、姉がやんちゃな弟につい口出しして世話を焼くという心持が伝わってくる。きれいでおっとりしたところと、油屋の女房らしい面とがいい感じでまじりあっている。テンポもいい。
翫雀さんの豊嶋屋七左衛門には意外とキツさがみられた。お吉と与兵衛のことを「ばかばかしい」と大きく構えて「男女のことだ、気をつけろよ」というよりは、本当にカチンときているように見えた。

120505seat 「河内屋内」は、私のテンションとしてはややダウン。亀鶴さんの実直な兄・太兵衛はテアトル銀座に続いて2度目だが、こういう兄がいては与兵衛も安心してグレられるなと思った。
癒しの米ちゃん(ほんと、かわいいよねえ)はおかちの心根をよく摑んでいた。先代の霊が乗り移った振りをするところがうまかった。
母親に勘当を言い渡された与兵衛が強がりを言って家を飛び出したものの、困ったことになったと外で思い悩んでいると、家の中からそっと徳兵衛がこちらを見ている。これに気づいた与兵衛が「ふんっ」とばかりに身を反らし、強がって花道を引っこむ姿が仁左様そっくり。本当は甘ったれで心の弱い与兵衛という人間がよくあらわれていた。
「豊嶋屋」で再びテンションが上がる。母おさわ(秀太郎)と父徳兵衛(歌六)は、河内屋の場でもそうだが、どうしてこんな手に負えない子になってしまったんだろうとの嘆きとそれでも可愛いわが子への愛情が切ない。ただ、いつもは芝居の中に入り込んで同調する私が今回はどういうわけか客観的に眺めていて、この親の感情に入り損ねてしまった。そのかわり、どういう展開になるのかと息を詰めて見守った。
福助さんはここでもきれいで、演技過剰にならずに好感がもてる。「おみつ」「おみつ」と娘の名を必死に呼ぶ姿が悲しかった。
太棹が陰惨な場面を美しく盛り上げる。
自分の心に追い詰められていく与兵衛。ついに刀を!! そう、なんだか与兵衛は1人相撲を取って負けてしまったような気がした。油まみれで必死に追う者と追われる者。2人が油ですべるとやっぱり客席が笑うんだよねえ。
ラスト、与兵衛がよろよろと逃げる時の表情は、仁左様には怖いものを感じるようだったが、愛之助さんには思いがけず大変なことをして戸惑っているような印象を受けた。
<上演時間>「西郷と豚姫」67分(11001207)、幕間30分、「紅葉狩」65分(12371342)、幕間25分、「女殺油地獄」107分(14071554

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コメント

SwingingFujisan様
 おはようございます。演舞場 夜の部昨日見てきました。Fujisanさんはまだでしょうか。三島歌舞伎は独特の世界ですね。私は三島歌舞伎の中では舞踊劇「熊野」が一番好きです。先年、玉三郎がやったものとは別物です。ついでに言うと、「鹿鳴館」は日本の戯曲史上の傑作だと思います。
 「弓張月」、確かに三島歌舞伎の集大成的な物なのでしょうが、今回の上演は冗長さが気になりました。ノーカットが売りのようですが、少しは刈り込んだ方が観客に親切な気がします。また、今回は大詰めが宙乗りで無いのはやはり残念です。宙乗りというのは、観客にとって、長い芝居のあとのカタルシスのような気がします。
 出演俳優は若手中心なので、皆真面目によくやっています。ただ、染五郎、悪くはないのですが、「為朝」ではなく、「義経」に、どうしても見えてしまいます。
 Fujisanさんの感想のとおり、福助がここでも神妙ですし、松也が男と女の行き来を不思議な感覚で演じて眼を引きました。
 

投稿: レオン・パパ | 2012年5月 5日 (土) 08時59分

レオン・パパ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
夜の部は私はまだで、とても楽しみにしているのですが、上演時間が5時間近いんですものねえ…。「弓張月」は本来(といっていいかどうか)宙乗りがあるのですか。これだけ長いのですから、確かに客にとってのカタルシスは必要ですよね。
福助さんは、ずいぶん変わりましたよね。芝翫さんが亡くなって考えを変えたのかもしれませんね。こんなにいい役者さんだったのかとびっくりしています。
玉三郎さんの「熊野」は大半寝てしまったような記憶があります。三島の「熊野」はそれとは別なのですね。「鹿鳴館」は團十郎さん×新派で見ました。私にはそこまでの鑑賞眼はないのですが、大変感銘を受けたのを覚えています。
夜の部は長丁場に耐えられるよう、体調を整えておかなくては(^-^;

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月 5日 (土) 14時20分

今晩は。追加です。今月の演劇界に出ていましたが、大詰め幕切れも、高麗屋系は宙乗りではなく花道で入る型で、猿之助だけが宙乗りです。
ところで、今日は昼の部観てきました。「紅葉狩」の福助の踊りは、真女形らしい繊細さがあり結構です。お父さんのカッチリとした楷書の芸とは異なりますが、決して悪くはありません。
 「油地獄」愛之助、やはり仁左衛門に似ているようで、違うところ(わりあい骨太感がありますよね)があり面白いです。福助、ここでも従来よりは抑えた演技でした。そして、葵太夫の竹本が傑出していました。

投稿: レオン・パパ | 2012年5月 5日 (土) 20時37分

レオン・パパ様
こんばんは。再びありがとうございます。
2日続きでお疲れ様でした。
「紅葉狩」、私は肝心のところでダウン。もったいないことをしました。
「演劇界」、早速読んでみました。なるほど、高麗屋には高麗屋の意地があったということですね。
「油地獄」の与兵衛は確実に愛之助さんが手に入れたという感じでしたね。仁左衛門さんに似ていながら独自の与兵衛であるというのが見事だと思います。福助さんも今までなら余計なことをしそうな気配でしたが、先月といい今月といい、抑えたところがいいですね。
竹本、すばらしかったです!!

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月 5日 (土) 21時17分

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