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2012年5月10日 (木)

亀治郎の魅力すべてが詰まった亀博、最終日

59日 二代目市川亀治郎大博覧会(渋谷ヒカリエ9Fホール)
12051001kamehaku 演舞場や「海辺のカフカ」の感想の前に、後援会の更新も終えたところだし、アツいうちに亀博を。素晴らしい博覧会で、これを見逃がしていたら大損だったなと思った。
今日は1日外出しない予定…あっ、亀博、今日で終わりじゃないのshock 思い出してよかった。ということで急遽午後渋谷へ。
オープンしてから日もある程度経ったし、平日だし、ヒカリエは全然混んでいなかった。亀博はというと、それなりに盛況。入口には亀パパ・亀ママがいらっしゃいました。段四郎さんは病み上がりな感じもしないでもないけれど、まあまあお元気に見え、これなら襲名公演も大丈夫そうと思った。後には亀鶴さんの後ろ姿に遭遇。
会場に着いたのが1445過ぎ。「1455から映画が始まります」という声に、じゃあ、とまずは映画ホールへ。40分の上映時間か、長いなあ…とボヤいたのは最初だけ。ひとたび映画が始まると楽しくて楽しくて、あっという間の40分だった。
はじめに、初代からの猿之助の簡単な紹介。そして亀治郎の会をざっと追う。2010年の会で、澤瀉屋にとって重要な「四の切」をはじめて上演。この映画はその時の舞台裏(メイキングみたいなものかな)を追ったドキュメントである。
「四の切」の25分前まで亀治郎は「道行」を演じていた。鳥屋で大急ぎで本物の忠信に変身する。出の前に「人」の文字を手に書いて呑む。
静御前は芝雀さん。亀治郎初お目見えは昭和55年「義経千本桜」の安徳帝であった。この時の典侍の局が雀右衛門さんだった。その縁で芝雀さんに静を、ということだったそうだ。
義経の染五郎さんは、「本邦初演だから是非にと依頼された」。本邦初演と言うからには亀治郎さんの相当の覚悟を染五郎さんは感じたようだ。
駿河次郎の門之助さん「することは猿之助の通りだが、亀治郎の忠信であった」。
亀井六郎の亀鶴さん「芝居が好きでやっている。呼んでもらえるのはありがたい」。
本物の忠信が怪しまれて義経の詮議を受けるために亀井と駿河に導かれて引っこむ場面、私は亀治郎でも亀鶴でもない、門之助さんの演技に見とれてしまった。
亀ちゃん「核心を描かないでまわりから浮き上がらせる。それが日本の文化である」。
ここからはケレンの裏側。
まず、階段下からの出。舞台に見えているのは仮の階段で、亀治郎さんは仮階段と本階段の間に潜んでいる。鳥屋での「出があるよっ」の声とのタイミングを亀治郎さん自身がうまくはかって亀ちゃんの掛け声で裏方さん4人が本怪談を押し出す。仮の階段は糸を引いて、しまう。
海老反り。床下のロープを亀ちゃんが摑み、芝雀さんがロープを足で押さえてサポート。終わるとロープは即床下へ。海老反りに摑まる道具があるのは知っていたが、静御前のサポートがあるとは知らなんだ。サポートがあってもあの体の柔らかさはすごい。
狐の衣裳への早変わり。静の前にひれ伏している間に床下から裏方さんが袖の先端部分だけ引き抜いて準備。3秒かからないで狐に変身する。
欄干からの飛び降り。ここは音がしてはいけないのだそうだが、稽古のときに思いっきり激しい音がして、亀ちゃん大笑。大道具さんが、遠くへ飛べば音がしないとアドバイスするが、遠くへ飛ぶのはやはり大変なようだ。しかし本番ではさすが、音もなく飛んだ。
欄間抜け。宙乗りより危険だそうで、猿之助さんも一度鉄棒を摑み損ねて肩を脱臼したのだとか。しかし猿之助さんに言わせれば、本当に危険なのはそのあとの膝すべり。出しかにつつ~と舞台最先端まですべって危ない。稽古の時、亀ちゃん、摩擦熱に「アツっ」。膝すべりの後とか、窓からちょこっとだけ顔をのぞかせる本物の忠信とか、激しい動きによる呼吸の粗さを表さないようにしなくてはいけない。これは至難の業だ、と亀ちゃんは言っていた。
宙乗り。国立における個人の勉強会での宙乗りは前例がなく、澤瀉屋の芸をやるということで特別に許可がおりたそうだ。舞台稽古の前に神主さんが来て安全祈願をしていた。
寿猿さんが色々教えているのがチラっと写ったのが印象的だった。
飛鳥の吉弥さん「自分の会で神経を使い、我々にも気を遣いながらあれだけの芝居をする。精神が強くないとできない」。
亀鶴さん「一本刀のお蔦は初演とは思えなかった。10年前に芝翫さんのお蔦を毎日見ていたそうだ。芸というのは10年かかるものだと思った」。
染五郎さん「初日に宙乗りで上がっていくのを見て、ついに上がっていったと感動した。舞台の上でそれを見られたのが嬉しい」。
亀治郎さんが「四の切」にかける思いと、舞台を作る熱意、努力。この映画を見て、6月が待ち遠しく、また昼の部は完売だからリピートできないのが残念でならなくなった。でもひょっとしたら今年の最後の亀治郎の会でもう一度「四の切」やるんじゃないか、なんて期待したりして(それはさすがにないかな)。どっちにしても、今後四代目猿之助版「四の切」は私にとって大いなる楽しみの1つになったことは間違いない。

映画の後は展示を見て回ったが、なんというドジshock 「天竺徳兵衛」のガマを見逃してしまった。展示場所が映画のホールよりもっと奥だったため、気づかなかったのだ。ぐやじ~crying
展示品は陶器や浮世絵等の亀治郎コレクション。絵画、書。齋藤芳弘氏撮影の舞台写真の数々。亀治郎小学生時代の通知表や試験、大学時代のノート(几帳面な細かい字で丁寧に清書されている)、中国語の試験、立派に製本された卒論(私の卒論は残っていない。大学に預けっぱなしでいたらすでに失われてしまった)等々。また、緒方拳さんからの手紙(ダイナミックな味のある文字。間違えたところを消したり、挿入したり自在だが、心の温かさ、大きさを感じる)、美空ひばりさんからのお花に添えられたメッセージなども展示されていた。
12051002kamehaku 最大の目玉は「四の切」の舞台原寸再現。靴を脱いで上がり、欄干に乗ってみたり、窓から覗いてみたり。欄間はかなり高さがあって、これは怖いかもと思った。舞台前には原寸大の狐忠信が、白馬に跨った小栗判官と照手姫が宙を飛んでいる。ああ、素敵な世界でした!!
最後は楽屋再現で楽しむ(美空ひばりのメッセージは再現楽屋にあった)。なんと、4月の千穐楽後、亀ちゃんが楽屋に戻ると、黒リボンのかかった額縁に入った亀ちゃんの写真が用意されていて、出演者からの寄せ書きがあったんだとか。みんな過去形で亀治郎を送る言葉が書かれていた。おおかた染五郎さんあたりの発案ではないかと心の中でニヤニヤした私。この寄せ書き、いちいちメモるわけにいかないから写真撮りたかったなあ(写真は「四の切」の舞台のみ許可)。
最終日ということでグッズが30%値引きとかになっていたけれど、結局図録を500円(安っbleah)で買ったのみ。
亀治郎の魅力のすべてが詰まっていた亀博。又々駆け込みになってしまったけれど、楽しかった。素晴らしかった。

 

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コメント

出の前に掌に「人人人」と書くのはドキュメンタリーでやってましたが、この時は「猿翁」「三代目猿之助」と書いていたとトークで言ってました。そう知って見ると、指の動きは「助」と見えました。

楽屋の遺影は、最初の頃は幼少の亀ちゃんで、途中で10代の頃の写真に替わってました。最終日にはどうなっていたのでしょう?

図録が500円になってましたか。定価で買った人はショックですね。私はトークでのお土産で貰いましたけど(笑)。
それから、細かくてすみませんが、四代目が六代目になってます。

投稿: 亀ファン | 2012年5月10日 (木) 11時02分

こんにちは。

本筋とは関係ないレスで失礼しますm(_ _)m

>この寄せ書き、いちいちメモるわけにいかないから写真撮りたかったなあ
ふと思ったんですが、読み上げて(小さな声で)録音するって手はどうでしょうかね。やぱ、恥ずかしすぎるか。。。。

亀博、行きたかったよぉ~~~~のからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2012年5月10日 (木) 13時36分

亀ファン様
こんにちは。コメントありがとうございます。そして間違いのご指摘ありがとうございます!! 何を考えていたんでしょうね。なぜかこの時「6」という数字が意識から離れなかったんだと思います。早速訂正いたしました。

「人」ではなくて「助」でしたか。勝手な思い込みで「人」とばかり…。澤瀉屋としての亀治郎さんの意識が感じられますね。
遺影は多分10代の写真だったと思います。仲のいい楽屋うちだからこそ出来る微笑ましいアイディア--亀ちゃんがみんなに愛されている様子が窺えました。
亀ファン様はトークショー付きの日にもいらしたのですね。羨ましい!!
私もリピートしたかったのですが(とくに映画を)、一度でも見ることができて幸せだったと思うことにしました。

こういうイベントでは最終日近くになるとグッズが割引になるのはよくあることですよね。以前もある展覧会でずいぶんお得にグッズを購入したことがあります。でも今回、図録(ガイドブックでしたね)の元の値段を後で知ってびっくりしました。

ほんと、楽しい博覧会でしたね!!

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月10日 (木) 17時24分

からつぎ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
録音ねえ…あのオバサン、寄せ書きの前で何ぶつぶつ言ってるんだろ、って目でみんなに見られそう…はい、やっぱり恥ずかしいです。脳にしっかり刻みつけてくればいいのですが、最近記憶力の低下が激しくてcoldsweats02
からつぎ様にもぜひご覧いただきたい亀博でしたわ。残念。

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月10日 (木) 17時28分

短期間で終わってしまうのがもったいないくらい充実した博覧会でしたね。
そういえば 私も上映時間がせまっていたので「あそこにガマが・・・」とチラッと見て上映後はすっかり忘れてました(爆)

楽屋寄せ書きは傑作happy02でしたよね。あれは写真撮りたかったです。

投稿: あいらぶけろちゃん | 2012年5月11日 (金) 00時39分

あいらぶけろちゃん様
おはようございます。コメントありがとうございます。
やはりガマをお忘れでしたか。お互い、もったいないことをしましたねweep

ヒカリエのオープニングとして相応しい素晴らしい博覧会でしたね。あれだけの準備は大変でしょうが、東京へ来られない方のためにも地方でも開催されるといいなあと思います。
映画は他の機会にも上映してほしいです。大勢の方にご覧いただきたいし、私ももう一度見たいし。

寄せ書き、ウケますよねえsmile 重厚な「仮名手本」の後のあの茶目っ気。ほんと、写真撮りたかったですねえ。

今日は浅草でお練りですね。

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月11日 (金) 08時11分

ここにも蝦蟇を見忘れた人が(とほほ)。ドキュメンタリ映画の時間に合わせたのに、バスが予定外に早く着いて、どうしようと思ってたら、「間もなく始まります」と案内があって、アレ?と思いつつ、入ってました。出るときは、別の出口から誘導されて、見忘れたことに気付いたのは家に戻ってから。あの会場レイアウトでは、導線にないものね。残念でした。

投稿: とくべい | 2012年5月11日 (金) 17時34分

とくべい様
こんばんは。コメントありがとうございます。
とくべい様も蝦蟇を見逃されましたかdespair そうそう、あのレイアウトでは、ましてや映画にすっかり感動した後では蝦蟇のことが頭から飛んじゃってますよね。出口で「蝦蟇もお忘れなく!」とか案内があればよかったのに…。ほんと、残念です。
「とくべい様」はなおさら残念な思いをされたことと、お名前から推察する次第であります。

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月11日 (金) 21時29分

こんばんは♪ひじきです。

見に行かれましたかぁ。
おまけに亀ちゃんご両親にもお会いできたとのこと、いいですねぇ。
段四郎さん、体調いかがかと思っていたのですが、お元気そうで何より。

でも、面白かったですよねぇ。
すごく充実した展覧会でした。
東京だけではなく、ぜひ地方でも開催して欲しいですよねぇ。
楽屋を見せるコーナーもあるので、亀ちゃんの歌舞伎公演のない月にでも、やってくれるといいですねぇ。
あの映像も販売して欲しいなぁ。
終わった時に拍手しちゃいましたもん。
そうそう、ここにも蝦蟇を忘れた人がいますよぉ。
映画が始まる前は、蝦蟇蝦蟇と思ってたんですけどねぇ・・・
あの映画を見せられちゃあ忘れちゃいますよ。
出口のところに蝦蟇をお忘れなくとか書いてあるといいんだけど・・・。

投稿: ひじき | 2012年5月11日 (金) 22時56分

ひじき様
おはようございます。コメントありがとうございます。
私が亀博を大いに楽しむことができたのは、ひじき様がいらしてとてもよかったというコメントをお寄せくださったおかげです。あらためてありがとうございました。
あ~、でもひじき様も蝦蟇を見逃されましたかぁsad はじめは私だけかと思っていたのですが、これだけいらっしゃるとは、やはり映画の出口で何かアピールがあってもよかったのにと惜しい気持ちになります。
映画が終わった時、私も拍手しました。会場全体、自然に拍手が湧いたという感じでした。途中、お芝居の場面でも何度も拍手しそうになりましたが、ぐっとこらえ、心の中で手を叩いていました。それに感動のあまり何度も泣きそうになりましたわ。
映画は「四の切」とセットでDVDにして販売、楽屋再現コーナーは6月7月の演舞場で展示、とかいうわけにいきませんかしらね。

段四郎さん、お練りにもいらっしゃったようですので大丈夫ですよね、きっと。

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月12日 (土) 08時58分

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